第10話 魔法
数十分歩いただろうか、俺は初めての魔物討伐に心躍らせながら拠点の洞窟まで戻ってきていた。
すでに外は暗くなりはじめていた。だがなにか違和感があるな。
「行きはあの距離を歩いてそれなりに疲れていたはず。
だが帰りの今は行きとは違いほとんど疲れがない。
これはlevelが上がった影響だろうか。
HP、いや、おそらく体力が上がった事が影響しているな。
これはうれしい誤算だ。
こんな森にいるのだ、体力はあるだけあったほうがいい」
これならもっと狩っておけばよかったかと思いもするが、油断は禁物だ。
もしかしたらラビッツが集団で現れる可能性もある。
それに、ラビッツよりも強い魔物があの周辺にいないとも限らない。
ここは異世界、慎重になりすぎるくらいではないと生き残れない。
「よし、とりあえず外も暗くなってきたことだ、今日の夜はこの洞窟で明かそう。
それからっと……よし! おいていったパプゴにも食べられた形跡はない。
つまりこの洞窟には魔物は寄り付いていないというわけだ。
これで安心して寝ることができる」
そうして安心した途端、お腹からグ~と音が。
「ふむ、さすがにあそこでパプゴをつまみ食いした程度じゃ腹は膨れないな。
とりあえず、今ある食料はパプゴはここにおいてあったのとさっきとってきたのを合わせて合計6つ。後はこのラビッツか」
問題はこのラビッツだ。俺は平和な世界に暮らしていたしかも引きこもり。
サバイバルの経験なんて当然ない、料理したことすらないのだ。つまりは……。
「うーん、このラビッツ、どうやって食べればいいんだ……」
まず前提としてさばけたとしても生じゃ食えない。
俺の世界じゃ一部の肉とかは生でも食べられていたのもあったが、
こいつはやめておいた方が絶対いいだろう。
へたしたらそのまま死ぬなんてこともありえる……。
かといって、俺に火の起こし方なんてわかるわけもない。
ライターでもあれば楽なのだが、まぁあるわけはない。
「うーん、こういう時にゲームとかの魔法とか使えたら楽なんだけどな。
なんていったっけ、こう……ファイアボール! つって~」
その瞬間、俺の手のひらの先に野球ボール並の大きさの火の玉が浮かんだ。
「うおおおお、なんだこれ! 近い近い!
手が! 手が火傷しちまう……あれ?」
熱く……ない……?
なんだこれは、まったく熱くないぞ。
俺の魔法だから俺自身は影響を受けないってことなのか、わからない。
わからないがとりあえず。
「これどうしよう……しまうこととかできないのかね」
とりあえずいつまでも出し続けても邪魔なだけだ。
洞窟の壁に向かいまっすぐ飛んでいく姿をイメージして。
「ファイアボール!」
手のひらから飛び出したファイアボールはまっすぐ洞窟の壁に飛んでいき、見事命中。
するとファイアボールは破裂したかのように爆散。
少し焦げてしまった洞窟の壁だけが残った。
「おお、結構威力高いじゃないか。これなら戦いにも使えそうだ。
でだ、こいつでどうやってラビッツ焼こうか……。
どう考えてもラビッツが黒こげになる未来しかみえない。
威力を調整できればいいのだがな。
おっと、そのまえにステータスを見ておこう。
ファイアボールはおそらくは魔法。
MPがどれだけ減っている気になるからな」
佐藤悠馬level4
HP70/70
MP45/50
力14
体力14
素早さ8
幸運38
{スキル}
経験値20倍
スキル経験値20倍
鑑定level10
気配遮断level7
短剣術level1
火魔法level1
{称号}
異世界転移者 引きこもり
駆け出し魔法使い
「おお、スキルに火魔法がふえて称号も増えている。火魔法level1か。
おそらくだがlevelが上がるにつれて、扱える魔法が増えていったり、扱いがうまくなるんだろう。
しかし一回使ってMP5消費か。
これは今のMPだとlevel上げはきついかもしれないな。
10回つかったらすぐにMPが0になってしまう。
気配遮断のためになるべくMPは節約しておきたからな。
称号の駆け出し魔法使い、これはまぁ魔法をつかったから増えたのだろう」
しかしこれはラッキーだった。まさか偶然魔法が使えるようになるとはな。
これはもしかしたらほかの種類の魔法も使えたりするかもしれないな。
色々実験しないとな。
とりあえず今日はもう遅い、MPも減っていることだし。
「よし、寝るとしますかね」