事件
コト
目の前に硬貨の入ったトレイが置かれ、中の硬貨を受け取る。
一度上銀貨の入ったトレイを見てしまったのでなにか味気ない気がする、それでも宿で生活する分には不自由しないんだが。
「そう言えばこの前の剣は使ってないんですか?持ってないようですけど」
俺の腰辺りを見ながら聞いてくる。
正直忘れていた、近接攻撃ならナイフの方が慣れているし今からAKの試し撃ちをするつもりだったのだ。
刀、剣などの武器をネタとして使ってたプレイヤーは居たがナイフより有効攻撃範囲が長いだけだし銃の前には剣のリーチなんてナイフと大差ない。 もちろん俺はそんなネタプレイはしてない。
しかし今盾と剣がありここは魔法と剣の世界だ、それに一からDPを使って剣を作るのなら悩むところだが作る必要がない。 そしてなにより剣と盾を装備してたほうがカッコイイのでこれからは剣を装備することにしておく。
盾を左腕に装着して剣を腰にさしてダンジョンへ入っていく、警備の兵士に
「やっと武器をそろえたか、いつも手ぶらで入っていくから心配してたんだよ」と言われた。
本当だとAKも手に入ったので3層か4層辺りにでも行こうかと思っていたのだが、AKの試射のついでに剣と盾での戦いも試しておきたいので昨日の続き、二層からチャレンジだ。
しばらく歩くとまたゴブリンが出てきた、今回のゴブリンは斧を持っているが剣だろうと斧だろうと正直どうでもいい。
盾を前面に構えて剣を抜きじりじりと近づいて行く。
一定の距離まで近づくとしびれを切らしたのかゴブリンが斧で切り付けてくる。
俺に向かって降りかかってくる斧に向かって盾を構えながら自動防御を発動させると綺麗に盾で斧を受け止める、受け止めた時点で自動防御は終わるのでそのまま盾で斧を押し返すとゴブリンの体制が崩れる。
「今だ!」
シュ!
右手の剣を右肩から左腹に通すように切り付けそのまま地面に剣が刺さってしまう。
うお!思いのほか切れ味いいな
身体が二つに分かれてしまったゴブリンがピュッピュッと血を出しながら上半身を後ろに落とし下半身は膝をつき崩れた。
ゴブリンの死体を回収しながら盾を見る、初めは木製の盾だったので不安だったがこれでも宝箱から出た武器だ全く傷がついていない、それに盾があるだけで避ける必要がなく自動防御を使うだけで防御もほぼ確実に防御できる、ゲームでは銃相手だったので全く使ってなかったがこりゃいい。
そしてこの剣だ、かなり切れ味がいいしやはり近接戦闘でなら剣のリーチが有効だ。
しかし、立派な剣に木の盾を持って灰色のシャツに黒のズボンってとてつもなくアンバランスでダサい・・・
まぁ外見などは後回しだ、そんなものにうつつを抜かして死んだら目も当てられん。 まぁ俺のセンスが皆無なだけなんだけど
また少し歩くとトカゲに遭遇したが脳天にナイフを刺して終わらせる。
正直トカゲは当たり前だがずっと床に這いつくばってるし攻撃も噛もうとしかしてこないのでつまらない、あんなもの素手でも殺せる。 やべぇ言い過ぎたかな
その後ゴブリン数体をスライスチーズの様に調理した後3層への入り口を見つけて今日のダンジョン攻略を終了した。 何か忘れている・・・まぁ忘れてるのならしょうもないことなんだろうからいいか
むふふ、今日のダンジョン攻略の成果は上々だ。 ついつい剣の切れ味に酔いしれて倒しまくってしまったぜ。
この死体の山を見たら職員さん驚くだろうし明日の素材代のお金も楽しみだ
にやにやしながらギルドの扉を開くと空気の読めないと評判の俺でも分かるくらいの重苦しい空気が漂っていた。
どうしたのかといつもの職員さんに尋ねる。
「あ、イクスさんおかえりなさい。 ちょっとややこしいことになりまして・・・」
説明によるとこのザガローナから出て少し離れた所で商人がゴブリンの群れに襲われているそうなのだ、ここまで聞くとただ冒険者を派遣するか国の兵士に行ってもらえばいいだけなのだが、その商人とやらが問題でどうやら奴隷商人らしい。 奴隷商人はその名の通り奴隷を売る商人なのだがその奴隷があまりいいものではないらしい、奴隷を扱うと言う法律や制度があるらしく人権を尊重し大切に扱う事、そしてそれを破ったり奴隷が周りに助けを求めた場合は助けてその奴隷の主人は罰を受けると言う制度があるらしいのだがそれはあくまでも表向きの形だけらしい。
奴隷にはある特殊な魔法が掛けられた首輪をしているらしくその首輪の効果で主人の命令は厳守、死ねと言われれば死なないといけないほどに絶対的なものらしい、元々は冒険者や権力者が奴隷や奴隷に扮したものに命を狙われないようにするものだったがそれ以外の奴隷に広まり奴隷を道具として扱う風習が根付いてしまったらしい。
そのような奴隷商人が襲われているとなれば助けようとする冒険者はいないし冒険者ギルドも依頼を出せないのだが、奴隷はなんの罪もない人達なので助けようと名乗る冒険者も居たらしい。
しかし襲っているのはゴブリンの大群、予想だと繁殖するための苗床を手に入れる為に森の奥から奴隷商人の荷物を狙ったのかもしれないと言う、それにこのような群れを成すことはゴブリンには珍しくゴブリンの集落があるのだとすると今回の奴隷商人襲撃の指揮をしているのは通常のゴブリンではなく上位に位置するゴブリン、メイジゴブリンやゴブリンコマンダーなどの知能が高く他のゴブリンをまとめれる存在が居る可能性が高いらしい。
ただでさえ数がそろえば厄介なゴブリンが上位ゴブリンも引き連れているとなるとそこいらの冒険者では歯が立たなく王国への救援要請をだして軍の出動を待つか上位冒険者とやらを呼ぶしかない様でどっちにしろ時間が掛かるらしい。
「・・・と言う訳でして・・・」
「なるほどなぁ」
ゴブリンが沢山・・・・なんだそれお金の山ってことじゃないか?
ちまちまダンジョンで倒すよりかは固まってくれた方がいい。
「なぁその襲われている所ってどこ?」
「え?えっと確か街から見てダンジョンの反対側をしばらく行った所だとか」
「まだその位置に居ると思うか?」
「その奴隷商人は海外の戦争の生き残りなどを商人にしてるので奴隷達がたたか・・・・まさか行くつもりじゃないですよね?イクスさんはついこの間冒険者になったばかりですよ!?」
口元に人差し指を当てながらうーんと思い出しながらしゃべっていたが自分がなにを聞かれているのか気づき慌てて身を乗り出し来る。
「興味本位だから行くわけないだろ、ちょっとモンスターの死体を忘れてきたから取ってくる」
「ならいいですけど・・・」
職員さんの反応からして行くと言えば止められそうなので行かないと言ったが、行くに決まってるだろ!一発千金!そしてDPを荒稼ぎだぜ!
そして忘れてきた死体とは・・・・お前らの死体だああああゴブリンどもー!わははは!