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よみがえれっ!お兄ちゃんっ!?  作者: 天塩虎
よみがえれっ!! お兄ちゃん
3/17

二話

人間にあまり大きなショックを与えてはいけない。壊れてしまう。

物理的にも精神的にも、大きなショックは与えてはいけない。

 あ、あれ、朝……?


「おはよう、すみれ」


「お、おにい……ちゃん?」


 私は、気付いたら私の部屋にいた。ベッドの脇にある時計に横眼を向けると……えっ……あれ……3時? 明るさからすると、えっと、午後の3時だよね、24時間表記で表すと15時の3時だよね。


「ち、遅刻……な、なんでもっと早く起こしてくれなかったの?」


「いや、早くも何もないだろ」


「そ、そんなこと言ってっ!」


 私は、布団を跳ね上げ、ベッドから飛び出る。


「あ……おまっ……」


「え……あっ……」


 そして、宙に浮いている間に気付く。私は裸である。おーのー……って、そんなものじゃない。


「ひゃうんっ!」


 着地と同時に床を蹴り、未だ滞空している布団を掴みそれを身に纏いつつベッドの上にlanding&lay……我ながら、神がかった動きだった、今のは……。それにしても、どれくらい見られたのかな……


「ああ、えっと、見てないって言っておけばいいか?」


「って事は……み~ら~れ~た~!! うわぁああああ!! もうお嫁にいけない……しくしく……」


「あー、まぁ、それは同意する。色々な意味で……その、なんだ、わりぃ……」


 ぺこりぺこりとお兄ちゃんが謝って来る。


「は、裸見ておいて、『わりぃ』で済ませないでよっ! こっちは恥ずかしいんだからっ!」


「えっと……あー、なるほどな、お前、今日が何日か覚えているか?」


「何日って、4月7日に決まってるでしょ」


「あー、やっぱり、記憶飛んでるな……あのさ、テレビでもつけて日にち確認してみたらどうだ?」


「わっとっと……」


 お兄ちゃんが、学習机の上に置いてあったテレビのリモコンをこっちに投げ渡してきた。ちゃんと受け止めたいものの、今は裸に布団という状態なので、リモコンが私のお腹の上にぽすんと落ちてから……


「お兄ちゃん、腕出すからちょっとあっち向いてて」

「はいはい」


 お兄ちゃんに横を向いてもらってから、右手でリモコンを布団の中に引きずり込んだ。

 さわり心地で、大体のリモコンのボタンの位置を把握してから、電源ボタンをぽちり……

 あ、これ再放送していたんだ……


 テレビに映し出されたのは、推理物のドラマ。たしか、この回は、密室殺人の回だった気がする。と、見てる場合じゃない。


 もぞもぞ……もぞもぞ……と言った感じで、またリモコンをさわさわして、大体のボタンの位置から、データ放送のボタンを探す。

 ……あった、これだ。

 ぽちり、それを押すと、天気予報がテレビに映る。えーと、今日8日の天気は晴れ。はれかー、最近ずっと晴れだなー。嬉しい嬉しい。晴れだと、気分も晴れる。だから、晴れの日は素晴らしい。って、目的を忘れてた。たしか、日にちの確認だっけ……えっと、8日ねー……あー、そういえば、入学式があって、つい先日まで小学生だった、可愛い後輩たちが……って、あれ……あ……


「今日……8日だ……」


「ああ、そうだ、もうそっち見てもいいか?」


「裸見たいの?」


「いや、そうじゃない。というか、見せたいのか?」


「いや、そういうわけじゃないけど……」


「じゃあ、そんなこと言うな」


「はーい……って」


 あれ、お兄ちゃんが……杖を持っていない。……あれ、何か忘れている気がする。


「ねぇ、お兄ちゃん」


「ん、なんだ?」


「私……昨日何していた?」


 たしか、お昼ごろに帰ってきて……夕方に商店街のお肉屋さんで、売り物にならないようなところを格安で買って……その間は……? それに、夜は何をしていたっけ? あれ、そう言えばお風呂入ってない気がする。その割に、身体は臭わない。昨日、なにかあって、制服に匂いが付いた……ような……


「あ、そうだ、せ、制服……」


 いつも制服が掛けられている壁を見るが、そこにはハンガーだけが掛かっている。って、なんで? あれ?


「お、お兄ちゃん」


「なんだ? 昨日何してたかだろ、ちょっと、まて、どう説明するか考えている」


「違う、それも、そうなんだけど、そうじゃなくて……私の制服知らない?」


「それも説明しないとなのか……えっと、それも、待て……一緒に説明するから……」


 と、お兄ちゃんは何かを考え始めたようだ。


 私も、考えることは……思い出す事は、いっぱいあると思う。えっと、何をしていたんだろう、昨日……


 お兄ちゃんは、私の部屋を歩き回って、何かを考えているようだ……ん? あれ、お兄ちゃんって、杖なしでそんな風に楽々と歩けてたっけ?


「お、お兄ちゃん……」


「ああ、分かった、そうだな、誤魔化しても仕方ないか……」


 お兄ちゃんはどこか吹っ切れた顔で、私の耳元に顔を寄せてきた。って、なにこれ、思った以上に恥ずかしい。裸なこともプラスされてかなり恥ずかしい。

 声と息が耳にダイレクトで……って、耳打ちってこんなに恥ずかしい行為だっけ……?


 それよりも、な、内容…………うんうん、それで……そうなって……なるほど……って、え?


「お兄ちゃん、そ、それって、本当?」


「ああ、色々あるが、全部本当の事だ。あまり大声では言えた事じゃないから、耳打ちって形にはなったが、ちゃんと真実をストレートに全部伝えたぞ」


 口を動かしてるけど、えっと、こ、言葉が出て来ない……えっと、なんて言えばいいか分からない。お兄ちゃんが死んだとか、生き返ったとか。生き返らせたのが私だとか。ただ、とりあえず……


「本当にもうお嫁に行けなーいっ!!」




この時の私は、まだ、何も知らない。この後のことだって。その前のことだって。だから、子どものままだったんだ。

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