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生命を紡ぐもの~ユニークスキル【?】で神獣を創り上げるまで~  作者: 大輔


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第65話 カゼマルの力

翌日の朝、ノールを連れて空き地に向かった。


カゼマルを指輪から呼び出すと、翼を広げて一度大きく羽ばたいた。浮いた。地面から五十センチほど、ふわりと体が上がって、そのまま空き地の上空でゆったりと旋回した。


「飛べるのか」


当たり前だろ、とでも言うようにカゼマルがもう一周した。


ノールが空を見上げながら手帳に書いている。


「翼が生えたんですね。鳥型の……飛行能力がある」


「ヒビも飛べるけど、カゼマルは高度が上がりそうだ」


カゼマルが旋回しながら高度を上げた。学院の建物の屋根くらいまで上がって、そこで一度止まる。俺が指を立てると、すっと降りてきた。リンクで意図を拾っている。


「風は出せるか」


カゼマルが翼を一度大きく打った。


地面の砂が舞った。俺の前髪が一気に流れた。ノールが手帳を押さえながら「おわっ」と声を上げた。


「……かなり強い」


一撃でこれだ。ヒビが炎の大きさを調整できるように、カゼマルも強さを変えられるはずだ。


「もっと弱く、細く」


カゼマルが翼を少しだけ動かした。今度は俺の手のひらに向けた細い流れが来た。指先がひんやりする程度の、柔らかい風だ。


「調整できる」


ノールが書き記す。


次に方向の制御を試した。俺がイメージを送ると、カゼマルが翼の角度を細かく変えた。真横、斜め上、地面すれすれ。どの方向にも風を送れる。


「ヒビやミズチより自由度が高いかもしれない。体ごと動けるから、方向の制約が少ない」


ヒビは炎と体の向きがある程度連動していた。ミズチは角の向きで制御していた。でもカゼマルは翼と体全体を使うから、立体的に風を動かせる。


「空中から地面に向けて打つのも」


「できると思う。高いところから下に向けて打てば、広範囲に広がる」


カゼマルを上空に上げて、下向きに風を出すようイメージを送った。


カゼマルが翼を大きく振り下ろした。


地面の砂が円形に吹き飛んだ。俺とノールが同時に後退した。


「広い」


「直径十メートル近くありますね」


ノールが手帳を見せた。さっき測っていたらしい。几帳面だ。


「これは囲まれたときに一気に振り払うとか、相手の足場を崩すとか、使い方が多いな」


「速度を乗せれば、風そのものが攻撃になりますよね。薄く収束させれば刃みたいに」


俺はカゼマルにそのイメージを送ってみた。風を薄く細く絞る、刃のような形に。


カゼマルがしばらく動かなかった。難しいのかもしれない。進化したばかりだし、無理に急かすことはない。


ところが三十秒ほどして、カゼマルが翼の端を一閃させた。


地面の草が、すっと薄く刈り取られた。幅二センチほどの細い線に沿って、草が綺麗に切れていた。


「できた」


ノールが目を丸くしていた。俺も驚いた。


カゼマルが降りてきて、俺の肩にとまった。かなり重くなったが、爪がしっかり肩を掴んでいる。安定していた。


「よくやった」


キィ、と得意げな返事が来た。


ノールが手帳を整理しながら言う。


「カゼマルの特性は機動力と広域制圧ですね。ヒビが制御精度、ドロンが防御と地形変形、ミズチが持続と形成精度。それぞれ全然違う」


「カゼマルは空中から動けるのが一番大きい。地上の相手に対して立体的に動ける」


「上空からの索敵もできそうですね。高いところに上げれば視界が広い」


それは考えていなかった。高くいるときのリンクの感触は確かに開けた感じがする。視界が共有されているわけではないが、カゼマルが上にいるとき、リンクから伝わってくるものが地上にいるときより広がっている気がする。詳しく試す価値がある。


「次はパチだな」


「パチは時間がかかりそうですね。一週間ほど」


「気長に待つ」


カゼマルが肩の上で翼をたたんだ。


春の空は高く、青かった。


空き地からの帰り道、ノールが少し考えてから口を開いた。


「ジン、一つ聞いてもいいですか」


「何だ」


「ヒビたちが全員進化したとき、リンクの感触はどう変わりますか。今もそれぞれ違うと思いますが、五体全員が第二形態になったら」


考えたことはなかった。


「……わからない。今でも五体分のリンクは常に流れてるけど、意識しないと気づかないくらい自然になってる」


「慣れているんですね」


「最初は多くて混乱したけど、今は体の一部みたいな感じだ」


ノールが静かにうなずいた。


「それはたぶん、スキルが成熟してるんだと思います。ヒビたちとのリンクが安定してきてる」


「お前が言うと信憑性がある」


「記録してきましたから」


ノールが笑った。珍しく、少し屈託のない笑い方だった。


カゼマルが肩の上でキィ、と鳴いた。話に割り込んできたのか、ただ機嫌がいいのか、どちらともつかない。


「パチが終わったら全員揃うんだな」


「五体全員、第二形態。記録のしがいがあります」


ノールが手帳を鞄にしまった。


学院の建物が見えてくる。授業まで少し時間がある。


俺は右手の指輪を軽く握った。中にいるヒビ、ミズチ、ドロン、パチのリンクが、それぞれ違う感触で流れている。肩の上にはカゼマル。


まだ全員揃っていないけど、確かにここにいる。


「行くか」


キィ、と返事があった。



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