表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生命を紡ぐもの~ユニークスキル【?】で神獣を創り上げるまで~  作者: 大輔


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/74

第63話 ミズチの力

検証をしたのは週末の空き地だった。


セレインとの練習とは別に、俺が一人で使える時間を確保している。学院の外縁、ほとんど人が来ない区画の隅だ。


ミズチを袖の上に乗せて、まず向き合った。


進化してから初めてじっくり外から見る。鱗の紋様は昨夜より落ち着いて見えた。光っていない状態では、青みがかった白の地に藍色の模様が走っているのが美しい。透明な角は、角度によっては光を屈折させて小さな虹色を作る。


「やれるか」


問いかけると、ミズチが頭を持ち上げた。


やる、という意思がリンクから伝わってくる。波紋のような感触ではなく、落ち着いた水底の圧力みたいな感じだ。静かだが、確かなものがある。


「じゃあ、まず水を出してみてくれ」


ミズチが角を地面のほうに向けた。


次の瞬間、地面に細い水の流れが現れた。土の上にさらさらと流れる、透明な水だ。量はそれほどでもない。でも確かに、ゼロから水が生まれた。


「止めていい」


流れがすっと消えた。


「今度は量を増やしてみてくれ」


ミズチが少し静止した。それから、さっきより勢いのある流れが現れた。地面に小さな水たまりができるくらいの量だ。手のひらに受けると、冷たくて重さがあった。本物の水と変わらない。


「これは……かなりいけるな」


次に、流れる方向を変えられるか試した。俺が指で弧を描くようなイメージを送ると、ミズチが角の向きを少し変えた。水の流れが緩やかに弧を描いて、俺の手の周りを回るように動いた。


ヒビの炎と同じだ。俺のイメージを拾って動く。


「壁を作れるか?」


これは難しいかと思ったが、ミズチはすぐに反応した。地面に流れ出した水が、ゆっくりと立ち上がった。薄い水の膜のようなものが、俺とミズチの前に広がっていく。完全な壁とは言えないが、視線を遮るくらいの高さにはなった。


「すごいな」


素直な言葉が出た。


ヒビは炎の大きさと動きの自由度が高かった。ドロンは土の量と硬さが突出していた。ミズチは、水の形を変える精度が高そうだ。流れ、壁、弧を描く動き。同じ水の中で様々な形に変えられる。


俺は少し考えてから、もう一つ試した。


「攻撃に使えるか? 集めて飛ばす、とか」


ミズチがまた静止した。


しばらくして、空中に小さな水の塊が浮かんだ。ヒビの炎とは違って、丸くまとまっている。それが俺のイメージを受けて、地面に向かって勢いよく飛んだ。地面に当たってはじけて、土が少し抉れた。


「……圧縮して飛ばしたか」


水そのものより、速度と集中が物を言う。感触としては俺の魔力弾に近いものがある。ただ、魔力弾は硬化した魔力の塊だが、ミズチのは水の塊だ。当たったあとに広がる。


「広がる水で相手の動きを鈍らせたり、視界を遮ったりできる」


こういう発想はドロンのときにもあった。ドロンの土の壁が封じ込め向きなら、ミズチの水は制限と崩し向きかもしれない。


ノールが手帳を開いて記録している。


「水の量に上限はありそうですか?」


「まだわからない。でも今日の感じだと、持続して出し続けられる量はヒビの炎より多そうだ」


「持続力と形成精度が高い、と」


「多分な」


ノールが何か書き足した。ミズチが袖の上でゆったりと体を動かした。疲れていないようだ。


「一つだけ、気になることがある」


「なんですか?」


「水の温度を変えられるかどうか」


ノールが顔を上げた。


「熱くしたり、冷やしたりということですか」


「ああ。炎と水が合わさったら蒸気になるし、冷やした水を飛ばせれば別の使い方ができる」


「それは……面白い仮説ですね。ミズチに試してもらえますか」


俺はミズチに意識を向けた。水の温度を変えるイメージを送る。


ミズチが少しの間、静止した。


それから、俺の手のひらに向かって水の流れを向けた。最初は普通の冷たさだった。それが、じわじわと冷たくなっていく。川の深いところで水を掬ったような、骨に近いところが痺れる冷たさになった。


「冷やせる」


「逆はどうですか」


イメージを変えた。温かくなる、という方向に。


今度は少し時間がかかった。でも水の温度が上がってきた。ぬるい、から、お湯に近い温度まで。


「できる。ただ冷やすほうが速い。水だから、冷えるほうが自然なのかもしれない」


「属性の特性として冷却寄りということですね」


ノールが熱心に書いている。


俺はもう一度ミズチを見た。ミズチはこちらを見ていた。深い青の瞳が、静かに俺を映している。


「よくやってくれた」


ミズチが角をわずかに傾けた。


得意げとは少し違う。ただ、静かに、応えている。そんな感じがした。


「ヒビとの連携はどうなりますかね」


ノールが手帳から目を上げて言った。


「炎と水が同じ場所で使えたら、蒸気が出る。視界を遮ることができるかもしれません」


「やってみるか」


俺はヒビを指輪から呼び出した。ヒビが羽ばたいて、空き地の中ほどで停止した。炎模様の羽が、光の中でゆらめいている。


ミズチを向かせて、二つの意識に同時に語りかけた。水を出す。炎に当てる。


ミズチが水の流れを出した。細い筋だ。ヒビが羽の先に小さな炎を集めて、水に向かって放った。


接触した瞬間、シュッという音とともに白い煙が上がった。


量は少ないが、確かに蒸気になった。


「できる」


「記録しました。量を増やせば、かなり広範囲を煙で覆えますね」


「ただ、二体同時に動かすのは集中が要る。俺の意識が分散する」


「それが課題ですね」


ノールが手帳を閉じた。


俺はヒビとミズチを交互に見た。二体が空き地の中で、それぞれ独立した存在として動いている。それを同時に動かすのは、今は難しい。でも片方のときより複雑な動きができる。


「少しずつ練習する」


「無理に急がなくていいと思います。一体ずつで十分な強さがある」


ノールの言い方は穏やかだが、的を射ている。


ヒビがゆっくりと俺の肩に戻ってきた。ミズチは袖の上で体を丸めた。並んでいる形になって、二体のリンクが交互に俺の中に流れ込んでくる。温かさと静かさが混ざり合って、不思議と落ち着く感覚がある。


春の風が空き地を吹き抜けた。指輪の中でカゼマルが反応してぴよ、と鳴いた。


「お前もじきだな」


カゼマルはそれに答えるように、もう一度ぴよ、と鳴いた。


次はカゼマルの番だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ