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生命を紡ぐもの~ユニークスキル【?】で神獣を創り上げるまで~  作者: 大輔


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第53話 硬くなる①

身体硬化に取り組もうと決めたのは、ドロンの検証が一段落した翌日だった。


練習場に来るなり、俺は魔力を手のひらに集中させた。


魔力弾を撃つときの感覚——魔力を一点に押し込んで、硬くする。あの要領で、今度は体の表面に魔力を張る。発想としては単純だ。


「……いくか」


息を吐いて、魔力を皮膚の表面に這わせる。


手のひらから始めた。ゆっくりと、内側から押し出すように。魔力弾の硬化は、点に凝縮する感覚だった。これは面に広げる感覚だ。似ているようで、微妙に違う。


じわりと、手のひらが重くなる感じがした。


「……出た」


確かに硬化している。手の甲を反対の指で叩くと、いつもより硬い感触がある。魔力が皮膚に定着している証拠だ。


予想通り、発動自体はすんなりいった。


問題はここからだ、と分かっていた。


手のひらに集中させた硬化を、腕全体に広げようとした瞬間——ムラが生まれた。肘のあたりだけ薄くなる。意識を向けると手首が弱くなる。全体を均等に保てない。


「……やっぱりか」


魔力弾なら一点を維持するだけでいい。身体硬化は全身という広い面積を、均等に、動きながら保ち続けなければならない。全然難易度が違う。


それでも腕だけに絞って、繰り返し試した。


広げる、ムラができる、意識を修正する——その繰り返し。三十分ほどやっていると、だんだんコツのようなものが見えてきた。一点一点を意識するより、全体をひとつの流れとして捉えるほうがムラが出にくい。


「川みたいな感じか」


堰き止めるんじゃなく、流し続ける。


その感覚を掴んだところで、足音が聞こえた。


「よお、今日も来てたのか」


レオだった。


肩に布袋を担いで、片手を上げながら入ってくる。


「練習か?」


「ああ」


「俺も付き合うぜ。最近サボり気味だったから体がなまってる」


レオが袋を地面に置いて、ぐるぐると腕を回し始めた。準備運動がやたら大げさだ。肩を回すたびにぱきぱき音が鳴っている。


「なまりすぎだろ」


「うるさい。お前みたいに毎日やってる人間ばかりじゃないんだよ」


レオが笑いながら言う。悪びれた様子は一切ない。


しばらく二人でそれぞれの練習をした。


レオは属性魔法の練習をしているようで、風の刃を木の幹に向かって撃っていた。悪くない精度だ。こいつは器用なほうで、基礎はしっかりしている。


俺は引き続き身体硬化を試した。


今度は腕から肩まで広げる。川の流れをイメージして、魔力を体に沿わせる。肩まではそれなりに保てた。ただ、少し動かすとやはり崩れる。


「なあ、ジン。今、何か新しいことやってるのか?」


レオが不意に聞いてきた。


「そう見えるか?」


「なんか、いつもと動き方が違う。ぎこちないっていうか」


「新しい技の練習だ」


「どんなの?」


「内側から強くなる感じの」


「ふーん、よく分かんないけどすごそう」


レオはそれだけ言って、また自分の練習に戻った。


深く聞いてこないのは分かっていたが、それでも気づかれるくらいには動きが変わっているらしい。意識がそっちに向いているせいだろう。


練習場を出る頃には、腕から肩まで均等に維持できる時間が少し延びていた。


まだ動きながらは無理だ。でも、感覚の掴み方は分かってきた。


帰り道、ポケットの中でドロンがゆっくりと動いた。


励ましてるのか、それとも眠いだけなのか——どちらでもいい気がした。


翌日も、また翌日も、俺は同じ練習を繰り返した。


腕から肩。肩から胴体。少しずつ範囲を広げながら、均等に保つ時間を延ばしていく。三日目には上半身をある程度まとめて硬化できるようになってきた。


ただ、脚が難しかった。


上半身と脚を同時に硬化すると、意識が分散して両方が薄くなる。結局、胴体より上に集中したほうが安定する。


「……上と下を分けて考えるより、全部を一枚の膜みたいに扱う感覚のほうがいいかもな」


練習場の端に座って、試行錯誤を続けていたとき、後ろから声がした。


「また一人か」


ライルだった。


珍しい。こいつが練習場に来るのは滅多にない。


「お前こそ何しに来た」


「気分転換だ。邪魔したなら出ていく」


「邪魔じゃない」


ライルは無言で俺の隣に腰を下ろした。しばらく黙って、空を見ていた。


「……何を練習してた」


「身体硬化」


「発動は?」


「すんなりいった。維持が問題だ」


ライルが少し目を細めた。


「全身均等に保つのが難しい」


「そうだな。体を動かしながらだと余計に崩れる」


「分かるか?」


「俺も似たようなことを一時期やった。別の話だが」


ライルはそれ以上は言わなかった。


でも、「崩れやすい部位から順に固める方が早い」とだけ短く言い添えた。


なるほど、と思った。全体を一気に均等にしようとするより、弱いところを先に補強して底上げしていく。その発想は持っていなかった。


「ありがとう」


「別に」


ライルは立ち上がって、また来た道を戻っていった。用件だけ言って帰る——こいつらしいやり取りだ。


でも、俺には十分だった。


その日の練習後半、崩れやすい膝と足首を意識的に固めることから始めてみた。下半身の弱点を潰してから上半身に繋げると、全体のバランスが明らかに安定した。


「……これだ」


感覚が噛み合った瞬間だった。


まだ実戦で使えるレベルではない。でも、方向性が定まった。あとは繰り返して体に刻み込むだけだ。


一歩ずつ、確実に積み上げていく。それだけだった。


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