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生命を紡ぐもの~ユニークスキル【?】で神獣を創り上げるまで~  作者: 大輔


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第52話 ドロンの力

進化から三日後、俺はドロンを練習場に連れてきた。


土亀になってから、ドロンの体はひと回り大きくなった。内ポケットに入らないかと思ったが、甲羅を縮めるような仕草をして、するりと収まった。どうやら多少なら体の大きさを調整できるらしい。


「お前、できることが増えてるな」


ドロンがゆっくりと首を動かした。


練習場の草の上に下ろすと、ドロンはゆっくりと歩き始めた。その足の一歩一歩が、わずかに地面を揺らしている気がする。気のせいかと思ったが、足元の砂がうっすら動いていた。


「……試してみるか」


俺はドロンに向き合って、一歩下がった。


「土を動かせるか?」


ドロンが静止した。


しばらくの間があって——地面がざらりと動いた。


俺の足元の土が、小さく盛り上がる。円形に、ゆっくりと。まるで地面に呼吸が宿ったみたいに。高さは膝ほどにもなって、それからゆっくりと沈んだ。


「すごいな」


感嘆が素直に出た。


ヒビの炎と違うのは、静けさだ。派手さがない。でも確実に、大きな力が動いている。


次に、盾として使えるかを試した。


俺が魔力弾を一発、地面に向けて撃つ。ドロンが前に出て、甲羅を向ける——瞬間、甲羅が光を帯びた。魔力弾が甲羅に当たって、弾けた。音はしたが、ドロンはびくともしなかった。


「……防御、相当硬いな」


甲羅の紋様が落ち着いた光を放っている。


リンクを通じて流れてくるのは、揺るがない安定感だ。ヒビは炎のように熱く、鮮烈な存在感だった。ドロンは正反対で——岩みたいな重さと落ち着きが伝わってくる。


「俺が前に出て、お前が後ろで守る——というより、お前が壁になって俺が動くほうが向いてそうだな」


ドロンがゆっくりと瞬きをした。


「それとも、土で相手の動きを封じることもできるか?」


少し間を置いてから、ドロンが動いた。


地面の一部が盛り上がって、特定の場所だけを囲うように壁ができあがった。人一人が入るくらいの大きさの土の囲い。脱出しようと思えば飛び越えられる高さだが、とっさに作られたら一瞬動きが止まるはずだ。


「封じ込め、か。使えるな」


俺は土の囲いを手で叩いてみた。硬い。魔力が込められているのが分かる。


「あとは——」


俺は少し考えてから、試しにもう一度言った。


「足場を作れるか? 斜めとか、段差とか」


ドロンがまた少し考えるような間を置いてから、地面をゆっくりと隆起させた。緩やかな坂になっている。続いて段差。さらに平らな台。


不格好だが、確かに足場になる形だった。


「……お前、発想が豊かだな」


ドロンは甲羅を少し揺らした。照れているのかどうかは分からないが、そう見えた。


一通りの検証が終わって、俺はドロンを手のひらに乗せた。


「ヒビが攻撃に向いてるとしたら、お前は守りと制圧か」


ドロンがゆっくりと瞬きをする。


「五匹揃ったとき、どんな戦い方になるんだろうな」


それはまだ先の話だ。でも考えるのは今からできる。


ヒビ、ドロン、ミズチ、カゼマル、パチ——それぞれの力が揃ったとき、どんな組み合わせが生まれるか。


俺は少しワクワクしていた。


五匹の力の可能性を考えながら、ドロンをそっとポケットに戻した。のんびりとした重みが、手のひらに残った。頼もしい、と思った。


次は自分の番だ。


ヒビたちが成長しているなら、俺も止まっていられない。身体硬化——次の修行が、もう目の前に来ていた。


その日の夜、俺は部屋でノールを待った。


用があるときは大抵、図書室か廊下で声をかけるが、今日は珍しくノールから「夜に話せますか」と言ってきた。


時間通りにドアをノックして入ってきたノールは、部屋を見渡してからドロンに目を向けた。


机の上でのんびりしているドロンを、ノールはじっと見た。


「……やはり、大きくなりましたね」


「土亀になった。甲羅に紋様が入ってる」


「見てもいいですか」


俺が頷くと、ノールはゆっくりとドロンに近づいた。素手では触らず、目だけで観察している。こいつはいつもそうだ。生き物に対して無闇に手を伸ばさない。


「甲羅の紋様が発光していますね。魔力を帯びている証拠だと思います」


「そう思う。実際に土を動かすのも見た」


「どのくらいの規模ですか?」


「人を囲える程度の土の壁を瞬時に。あとは緩やかな地形の変形もできた」


ノールが少し目を細めた。


「……戦術的に、かなり有用ですね」


「ああ。ヒビと組み合わせると面白いことになりそうだ」


ノールが手帳を取り出して、何かを書き始めた。こいつはヒビたちに関することを丁寧に記録している。俺が思いつきで気づいたことを、ノールが体系化してくれる。そういう役割分担が自然にできていた。


「身体硬化、そろそろ始めるつもりですか?」


ノールが書きながら聞いた。


「来週から」


「魔力弾の硬化の感覚が生きると思いますよ。ただ、体全体に均等に分散させるのは別の技術が必要です」


「分かってる。まず発動させることから始める」


「焦らずに、ですね」


「そのつもりだ」


ノールが小さく頷いた。


心配しているというより、確認している感じだ。俺が無茶をしないかどうかを、さりげなくチェックしている。こいつなりの気遣いだと分かってから、うっとうしくは感じなくなった。


「ドロンの検証、まとめたら教えてください。記録に追加します」


「分かった」


ノールが帰った後、部屋は静かになった。


ドロンが机の上でゆっくりと丸まっている。ミズチが端でとぐろを巻いている。カゼマルは隅でうとうとしている。パチは本棚の影で動かない。


五匹がそれぞれの場所にいる、いつもの夜だ。


俺は天井を見上げた。


ヒビたちの成長を確かめながら、自分も技を積み上げていく。焦ることはないが、止まることもない——それが今の俺のペースだった。

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