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生命を紡ぐもの~ユニークスキル【?】で神獣を創り上げるまで~  作者: 大輔


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第47話 対抗戦、出場

対抗戦の出場登録締め切りは、三年生になって最初の月の終わりだった。


俺は迷わず名前を書いた。


去年はフィーナ先輩の試合を観客として見ていた。

先輩が圧倒的な強さで全試合を制するのを、スタンドから眺めていた。

自分ならどう戦うか、ずっと考えながら見ていた。


今年は自分が出る番だ。


「ジン、本当に出るのか?」


登録用紙を出した帰り道、レオが言った。


「ああ」


「属性魔法なしで?」


「身体強化だけで行く」


レオはしばらく黙ってから言った。


「……勝てると思うか?」


「やってみないとわからない。でも負ける気はしない」


「すごい自信だな」


「自信じゃない。積み上げてきたものがあるから、そう思ってる」


レオは少し黙ってから「そっか」と言った。

それ以上何も聞かなかった。


夕方、ノールに廊下で捕まった。


「対抗戦、出るのですか?」


「ああ」


「身体強化だけで、か」


「それ以外に使えるものがない」


ノールは少し考えてから言った。


「面白い。純粋な身体能力と技術だけで他の出場者とどう差がつくか、データが取れます」


「俺の試合をデータにするな」


「取りますよ」


断言された。こいつは本当にぶれない。


「……好きにしろ」


「ありがとう。頑張ってください」


素直に言うから、少し笑いそうになった。


部屋に戻ると、ミズチが机の端でとぐろを巻いていた。

定位置だ。こいつはいつもここにいる。静かで、穏やかで、何があっても動じない。


「ただいま」


ミズチはゆっくりと頭をもたげて、こちらを見た。

静かな目だ。感情の起伏が少ない分、リンク越しの感覚も穏やかで安定している。


ドロンは窓際の床で丸まって眠っていた。

呼びかけると少しもぞもぞ動いたが、起きなかった。このくらいのんびりしているのがこいつの日常だ。


カゼマルは本棚の上をぴよぴよ鳴きながら歩き回っていた。

こいつは本当によく動く。落ち着きというものがない。しかも声が大きい。


「静かにしてくれ」


ぴよ、と一声鳴いて、少しだけ大人しくなった。でも三秒後にはまたぴよぴよ言い始めた。


パチは本棚の影から小さな顔だけ出して俺を見ていた。

呼んでも来ない。でも目は離さない。このくらいの距離感が好きらしい。すばしっこいくせに、近づこうとはしない。


内ポケットからヒビを出すと、部屋の空気が少し変わった気がした。

ヒビが来ると、他の四匹がみんなこちらを向く。


「対抗戦に出ることにした」


誰かに言いたかったわけでもないが、口から出た。


ミズチが頭をもたげる。

ドロンが少しだけ動く。

カゼマルがぴよ、と鳴く。

パチの耳がぴくりと動く。

ヒビは肩の上で翅を広げた。


「応援してくれるか」


返事はそれぞれ違ったが、悪い感じはしなかった。


翌日、授業の合間にセレインと廊下で顔を合わせた。


「対抗戦、出るんですね」


「ノールから聞いたか」


「登録用紙を見ました」


「見たのか」


「掲示板に貼ってあったので」


そういうものか。


「セレインは出ないのか」


「私は出ません。あまり人前で戦うのは得意じゃないので」


「そうか。観に来るか」


少し間があった。


「……来ると思います」


いつもの言い方だった。

でも今回はなんとなく、確実に来るんだろうなと思った。


「応援してくれるか」


「しています、心の中で」


「今からか」


「今からです」


なんとも言えない間があった。

俺はそれ以上何も言えなくて、廊下の先を向いた。


対抗戦前日の夜、俺はいつもより少し早く部屋に戻った。


明日のことを考えるというより、今の状態を確認したかった。


魔力を体に流す。均等に、手足の先まで。

問題ない。いつも通りの感覚だ。


魔力弾の感覚も確かめる。

蓄積して、解放する。速度が乗る感触。


こちらも安定している。


ただ、明日は使わない。

対抗戦では身体強化だけで行くと決めていた。

魔力弾はまだ開発中だ。実戦で使うには早い。


それに——身体強化だけでどこまでやれるか、試したかった。


属性魔法が使えないことは、ずっと引け目に感じていた時期もあった。

でも今は違う。それが自分の戦い方だと思っている。


魔力を体に流し続けながら、目を閉じた。


カゼマルがぴよぴよ鳴きながら膝の上に乗ってきた。

小さくて温かい。元気すぎるのが玉に瑕だが、こういうときのこいつは素直に可愛い。


「うるさいやつだな、お前は」


ぴよ、と鳴いた。

反省している様子はまったくなかった。


ドロンが床からのそのそ這い出てきて、足の甲に乗った。

重くはないが、存在感がある。眠っていたくせに、なぜかこういうタイミングで出てくる。


ミズチは机の端から静かにこちらを見ている。いつもの目だ。

パチは本棚の影から白い耳だけ出している。こちらも相変わらずだ。

ヒビは膝の上で翅を畳んで落ち着いていた。進化してから少し落ち着きが増した気がする。


五匹が全員、それぞれの場所にいた。


「明日、見ててくれ」


誰も返事をしなかった。

カゼマルだけぴよ、と一声鳴いた。


応援なのか、ただ鳴いただけなのかはわからない。

でも、それぞれが確かにそこにいた。


それだけで十分だった。

明日は自分のすべてを出すだけだ。


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