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生命を紡ぐもの~ユニークスキル【?】で神獣を創り上げるまで~  作者: 大輔


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第22話「実技試験」

第22話「実技試験」


入学から一週間が経つと、最初の実技試験が行われた。


内容は単純だ。


一人ずつ前に出て、自分の属性魔法を実際に使って見せる。

評価するのは担任のシオンと、補助で入ってきた年配の男性教師の二人。

採点基準は魔力量、制御精度、応用力の三項目だと事前に説明があった。


実技スペースは教室に併設されていて、広さで言えば中くらいの体育館ほどある。

床と壁は魔力を吸収する素材で作られていて、多少暴れた術式でも周囲への影響が出ないようになっているらしい。


「みんなSクラスだから、ある程度のレベルは保証されてる」


シオンは腕を組みながら教室全体を見渡した。


「でも今日ここで見たいのは、今のあなたたちの実力。飾らなくていい。見栄を張らなくていい。今できることをそのまま見せなさい。それだけよ」


静かな言葉だったが、よく通った。


名前の順に前へ出る。


火の柱を天井近くまで展開する者、水の膜を七枚重ねてから崩さずに保持し続ける者、風を刃の形に整えて的に当てる者。


みんな一定以上の技術を持っていて、Sクラスの水準が伊達じゃないことはよくわかった。


複数の属性を使いこなす者もいた。

二属性、三属性と操れることが、この世界では強さの証だ。


俺にはそれがない。

わかっていたことだが、こうして並べて見ると改めて実感する。


でも、怖じ気づく気にはなれなかった。

俺には俺のやり方がある。


レオは炎を大きく広げてから、それを一気に球体に圧縮して見せた。

荒削りだが出力は高い。


「勢いはある。精度を磨きなさい」


シオンが短く評すると、レオは「わかりましたっ」と元気よく答えて席に戻った。


ライルは雷を放った。

放電の軌道が綺麗に一直線に収束していって、的に焦げ跡が残る。

制御の精度の高さが一目でわかった。

見ていた数人がざわめき、シオンは珍しく少し目を細めた。


「いいわね」


ノールは水を薄い膜状に展開して、それを六枚、丁寧に重ねた。


「繊細な制御ね。魔力感知を活かしている」


シオンに言われると、ノールは少し照れたように眼鏡を押し上げた。


そして、俺の番が来た。


「アルマーレ・ジン」


名前を呼ばれて、前に出る。


「属性は?」


「ありません」


ざわ、と空気が揺れた。

周囲の視線が一気に集まってくるのがわかった。


「ユニークスキルがあると記録にあるけど、今日はそれを使う?」


「いえ。今日は身体強化だけでやらせてください」


シオンは少し考えた顔をしたが、「わかった」とだけ言った。


俺は息を吸って、目を閉じた。


意識を内側に向ける。

体の中心から、魔力をゆっくり引き出す。

焦らず、雑らず、均一に全身へと通す。

骨の一本一本、筋肉の隅々、指先に至るまで。


これは母さんに基礎を習い、父さんの動きを見て盗み、何年もかけて練り上げてきたやり方だ。


属性がない分、余計な変換が起きない。

全ての魔力が、そのまま身体強化だけに向かう。


目を開いた。


外から見ると、何も起きていないように見えるはずだ。

炎も出ない。水も出ない。光の欠片もない。

ただ俺が立っているだけに見える。


俺は実技スペースの端まで、ゆっくりと歩いた。


そして走った。


壁の直前で跳ぶ。

右足で壁を一歩踏み、左足で二歩目を踏み、天井近くで体を半回転させた。


着地の瞬間、魔力を足裏に集中させて衝撃を殺す。


音は、ほとんどしなかった。


着地してから三秒、静止した。


教室がしんと静まりかえった。


「……魔力の純度が高い」


シオンが口を開いた。


「属性がない分、余計な変換ロスが出ない。全ての魔力を身体強化だけに回して、それをここまで均一に制御できるのは……正直、Sクラスの中でも上位の精度ね」


ざわめきが起きた。今度は明らかに大きかった。


「ただし属性魔法の純粋な火力という点では比較にならない。その分はユニークスキルで補う想定ね?」


「そのつもりです」


「わかった。評価はするわ。席に戻って」


俺が席に戻ると、レオがすかさず小声で言ってきた。


「壁走ったじゃないか! 普通に壁走ったぞ、お前!」


「静かにしろ」


「いや無理だろ、あんなもの見せておいて!」


ライルは俺が席に着くのを待って、低い声でぽつりと言った。


「……動きに無駄がない。魔力の密度も桁が違った」


それだけ言って、また前を向いた。

褒め言葉というより観察結果を述べているような口ぶりだったが、それがライルらしかった。


ノールは眼鏡の位置を直しながら、また少し首を傾けていた。

何かを感じ取っているような、考えているような顔だ。


(あいつの感知、また何か引っかかってるな)


俺はそっと視線を前に戻した。


ユニークスキルを見せる場面は、まだ今じゃない。

ヒビたちの存在も、スキルの正体も、今はまだ胸の奥にしまっておく。


内ポケットの奥で、ヒビが静かに丸まっているのを感じた。


それだけで、十分だった。

翌朝、廊下でクラスメイトの一人に声をかけられた。


名前は確か、カイルだったか。

火属性で、二番目か三番目に魔力量が多いと自己紹介で言っていた男子だ。


「昨日の実技、見てたけど……属性なしであそこまでできるのか」


「まあ、練習してきたから」


「父親が元冒険者だって聞いた。それで鍛えてもらったのか?」


「そんなところだ」


カイルはしばらく俺を見てから、「なるほどな」とだけ言って廊下を歩いていった。


敵意があるわけじゃない。

ただ、値踏みするような目だった。


Sクラスはそういう場所だ。

全員が互いを測り合っている。


それでいい、と俺は思った。

測られるのは慣れている。

大事なのは、その先でどう動くかだ。


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