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生命を紡ぐもの~ユニークスキル【?】で神獣を創り上げるまで~  作者: 大輔


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第19話「アルカディアの門」

王都に着いたのは、出発から三日目の午後だった。


馬車の窓から外を眺めていた俺は、思わず息を飲んだ。


「……でかい」


思わず口から出た言葉はそれだけだった。


港町ガルナも決して小さな町ではない。賑やかな港があって、貿易商が行き交って、それなりに活気もある。でも王都はその比じゃなかった。


城壁だけで、ガルナの家が何十軒も積み上げられるんじゃないかというくらいの高さがある。白みがかった石造りの壁は、午後の陽光を受けてうっすら輝いていた。門の両脇には兵士が立ち、行き交う馬車や人の波がとぎれない。


「ジン、口が開いてるぞ」


父さんが隣から静かに言った。


俺は慌てて口を閉じた。


「……壮観だな、とは思ってた。でもここまでとは」


「そういうものだ。初めて見る者はみんなそういう顔をする」


父さんは表情を変えないまま、ただ窓の外に目をやった。元SSランク冒険者というのはこういうときに動じないものらしい。


母さんは反対側の窓から外を眺めながら、ふふっと小さく笑っていた。


「私が初めて来たときも、同じ顔をしたわよ。ね、アルセン」


「覚えていない」


「覚えてるくせに」


二人のやりとりを横目に、俺はもう一度窓の外に目を向けた。


胸元のポケット、そのすぐ内側。薄い布の裏に縫いつけた小さな内ポケットの中に、五つの温もりが感じられる。ヒビ、ミズチ、ドロン、カゼマル、パチ。全員、俺と一緒に王都まで来た。


移動中は大人しくしていてくれと言い聞かせた。カゼマルだけは何度かぴよぴよと声を漏らしかけたが、なんとか抑えてもらった。


学院に入ったら、どこに隠れてもらうかはまだ考えている途中だ。寮の部屋に戻れるときは自由にしてもいい。ただ外では気をつけないといけない。ヒビたちの正体がばれれば、ユニークスキルの話にも繋がる。


それは、まだ誰にも話したくなかった。


馬車が門をくぐると、また別の景色が広がった。


石畳の大通り、両側に並ぶ商店。魔道具を扱う店、薬草屋、鍛冶屋。人の数が段違いで、歩いているだけで目が忙しい。


俺は胸の中でそっとつぶやいた。


(ここで四年間、過ごすのか)


長いような、短いような。


でも決めたことだ。ここで学べるものは全部学ぶ。ヒビたちをもっと成長させる方法も、魔力の使い方も。属性魔法が使えない分、他の部分で補う。父さんに教わった古武術と、母さんから受け継いだ魔法の基礎。それだけあれば、引けは取らない。


アルカディア魔法学院の尖塔が、王都の空に突き刺さるように見えた。


白と黒の石を組み合わせた外壁、中央の巨大な鐘楼、四方に広がる棟の連なり。遠目でもその規模は圧倒的で、俺は思わずもう一度、窓に顔を近づけた。


「あれが、学院か」


「そうだ」と父さんが答えた。「お前が四年間を過ごす場所だ」


その声は、いつもより少しだけ、柔らかかった気がした。


入学手続きは翌日の朝に行われた。


大勢の新入生と保護者が大広間に集まり、学院長らしき老人が長い挨拶をした。内容は半分くらいしか頭に入らなかった。それよりも俺は、周囲の気配を探るのに集中していた。


Sクラスへの振り分けは魔力計測と筆記の結果によると書類に書いてあった。結果は午後に張り出されるらしい。


(セレインは……いるはずだ)


手紙のやりとりはあったが、顔を合わせるのは六歳のスキル授与式以来だ。あのときの、静かな目が思い浮かぶ。あの子は今、どこにいるんだろう。


大広間のどこかに、エルディア家の令嬢がいるはずだった。


俺はさりげなく視線を巡らせた。


でも人が多すぎて、見つけられなかった。


(まあ、どうせ明日には会う)


クラス発表があれば、同じSクラスなら顔を合わせることになる。焦ることはない。


俺は前を向き直した。


内ポケットの中で、カゼマルがそっと動いた。まるで「大丈夫だよ」と言っているみたいに。


俺は指先で、そっとその温もりに触れた。


(ああ。大丈夫だ)


アルカディアの門をくぐった。


ここから、始まる。


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