第6章:資源革命――山脈分解と黄金のインフラ整備
カイトは、広場で歓喜する民衆とは対照的に、王宮の隅で青ざめ、あるいは憤怒に震えている「旧OS」の残党――貴族たちを冷ややかに見下ろした。
「ああ、あの特権という名の『非効率なマージン』で飯を食っていた連中か。算術で世界が最適化されたせいで、自分の存在価値が計算不能になったことに気づいて、システムエラーを起こしているようだな」
これまで土地を管理し、法を司り、民から徴収することで成り立っていた貴族階級は、カイトの算術によってその基盤を完全に破壊された。
利権の消滅: 「『俺の土地の麦を食わせてやる』? 笑わせるな。サティやマーガレットが荒野を黄金の畑に変えた今、土地の所有権なんてただの『座標データ』に過ぎない。食料が無限に生成される世界で、食料を人質にする権力なんて成立しないんだよ」
法と裁きの自動化: 「『俺が法だ』? 悪いが、算術官僚(元聖職者)がすべての取引と行動をリアルタイムでログに取っている。賄賂も不正も、数式の不整合として即座にアラートが出る。貴族が恣意的に法を曲げる余地なんて、1ビットも残ってない」
軍事力の無力化: 「私兵を蓄えて反乱? 1024並列のバレットを使いこなす王国騎士団の前で、数だけの兵隊が何の意味を持つ? 演算速度の差は、絶望的な壁だ」
レオノールの前に引きずり出された大貴族たちは、震えながら「伝統」と「血筋」を訴えた。しかし、カイトは彼らの言葉を遮り、空中に「彼らの資産と能力の相関図」を投影した。
「いいか。あんたたちが今まで国に提供してきたリソースは『0』、逆に消費してきたコストは『最大値』だ。算術的に言えば、あんたたちは**『ただのメモリの無駄遣い』**なんだよ」
「レオノール、こいつらを生かしておきたいなら、一つだけ方法がある。こいつらの『プライド』という名のバグを初期化し、**『高度専門官僚』**として再教育しろ。 広大な領地を管理する経験があるなら、それを算術的な『広域変数管理』に転用させるんだ。できないなら、ただの『一般市民(変数1)』として、汗水垂らして計算ドリルでも解かせておけ」
「……わかりました。血筋による統治を廃止し、能力(演算値)による**『算術貴族制』**へ移行します。家柄ではなく、どれだけ国の最適化に寄与できるか。その数値のみで階級を再定義しましょう」
昨日まで王国の支配者層だった者たちは、今や「算術」という名の試験をパスしなければ、自分の居場所すら確保できない厳しい現実に直面しました。
カイトは「奴隷」という言葉を聞いた瞬間、吐き捨てるように鼻で笑った。
「奴隷? そんなものは真っ先に『デリート』だ。いいか、レオノール。人を獣のように縛り付けて働かせるなんてのは、最も非効率で、演算コストのかかる**『旧時代のバグ』**だ」
カイトは、王都の地下や商人の影に潜んでいた奴隷たちをすべて広場に集め、彼らを縛る鎖をゼノスの分解バレットで一瞬にして塵に変えた。
エネルギー効率の是正: 「人間を無理やり働かせるには、監視の目が必要だし、反抗を抑えるための暴力もいる。それは無駄なリソースの消費だ。1024並列のバレットを使えば、奴隷1000人が一生かけてやる作業を、騎士一人が瞬きする間に終わらせられる。奴隷を維持するコストの方が、算術を使うコストより遥かに高いんだよ」
演算資源(脳)の解放: 「奴隷として死んだ目で泥を掘らせておくのは、高性能なプロセッサーを文鎮にしているのと同じだ。こいつら全員の脳を『算術』でアップデートすれば、国全体の演算能力はさらに跳ね上がる」
カイトは、戸惑う元奴隷たちに向かって、冷たく、しかし確かな「道」を示した。
「今日からお前たちは、誰の所有物でもない。だが、ただ遊んで暮らせると思うな。お前たちの新しい主人は『算術』だ。 泥を掘る代わりに、数式を覚えろ。身体を売る代わりに、変数を制御しろ。 俺がお前たちの脳にインストールするのは、**『自立演算サブシステム』**だ。自分の価値を自分で計算し、この国を最適化する歯車になれ」
「レオノール。解放した連中には、まずサティが作った『栄養強化食』を配り、健康状態を初期化しろ。その上で、イザベルたちに『算術の基礎ドリル』を徹底的に叩き込ませるんだ。 彼らが計算を覚えれば、それはそのままこの国の**『分散型プロセッサ』**になる。奴隷を抱えていた商人は、その損失を嘆く暇があるなら、自分たちが算術についていけなくなる恐怖を数えろ」
昨日まで鎖に繋がれていた者たちが、今は泥を落とし、イザベルやサティから「2の累乗」を教わっています。彼らの瞳に宿ったのは、希望という名の「理解」でした。
「……信じられない。私が、自分の力で、この水を精製できるなんて……」 元奴隷の少女が、震える手で小さな「浄化バレット」を成功させたとき、王国の最底辺にあった「絶望」は完全に消滅しました。
カイトは王都から離れた険しい岩山、これまで「使い捨ての命」が掘り進めてきた大鉱山へと向かった。そこには、光も届かぬ暗穴で岩を削り、泥にまみれて死を待つだけの鉱山奴隷たちがいた。
「じいさん、サティ。ここの『物理定数』を書き換える。こんな不衛生な手掘り作業は、計算効率が悪すぎて見ていられん」
カイトの合図で、ゼノスが1024並列の**「分解バレット」**を放った。 奴隷たちの手足を縛る鉄枷、そして鉱山を塞ぐ重い鉄門だけを狙い撃ちにし、原子レベルで霧散させる。 「鎖が必要なのは、力の使い道を知らない無能な支配者だけだ。算術を知る者に、物理的な拘束は無意味だ」
サティとエリザベスが、汚濁した空気が溜まる坑道へ向けてバレットを構える。
換気と浄化: エリザベスが1024の**「真空吸引バレット」**で坑道の毒ガスを抜き去り、新鮮な酸素を送り込む。
衛生の最適化: サティが1024の**「滅菌バレット」**を放ち、奴隷たちの体を蝕んでいた病原菌を一掃。傷ついた皮膚を「再生定数」で上書きし、即座に完治させた。
カイトは、呆然と立ち尽くす元奴隷たちに背を向け、マーガレットに命じた。 「マーガレット、こいつらが一生かけて掘るはずだった鉱脈を、一瞬で『抽出』しろ」 マーガレットは地面に手を触れ、2の10乗(1024)の**「共振重力バレット」**を岩盤に打ち込んだ。
精密抽出: 岩石の密度を算術で解析し、有用な鉱石だけを地表へ浮き上がらせ、不純物(土砂)を地下へ押し戻す。 「……完了です。これでもう、人が穴に入る必要はありません。土に命令すれば、石は勝手に出てきます」
カイトは、自由の身になりながらも、あまりの光景に動けずにいる数千人の元奴隷たちを見据えた。
「おい、いつまで震えてる。お前たちの『労働』という名の非効率な作業は、今この瞬間、算術によって駆逐された。 今日からお前たちは、岩を叩く腕力ではなく、『どの鉱脈をどう定義するか』という演算能力で価値を証明しろ」
カイトは彼らに、算術の基本コードを刻んだ簡素な石板を投げ与えた。
「これは慈悲じゃない。お前たちの脳を、この国の『資源管理ユニット』として再利用するための投資だ。立て。時速4kmの泥すすりから、算術による文明の加速へ、フェーズを移行するぞ」
「レオノール。鉱山奴隷は全員、**『資源演算官』**として再定義した。採掘量はこれまでの1024倍に跳ね上がるが、それをどう流通させるか、あんたの官僚たちの計算が追いつくかな?」
カイトは解放された奴隷たちが遠巻きに見守る中、巨大な岩山……鉱山そのものを見上げ、無造作に指を鳴らした。
「穴を掘って石を運ぶなんてのは、時速4kmの時代の骨董品だ。山ごと**『デフラグ(再配置)』**して、必要なリソース(資源)だけを抽出する」
「ゼノス、マーガレット。座標設定は済んだな? 山全体を一つの『変数』として定義しろ。不純物と有用鉱石の境界線を算術で引き直すんだ」
地殻の構造分解: ゼノスが杖なしの両手を山へ向け、2の10乗(1024並列)の**「分子結合分解バレット」**を広域展開した。 ズズズ……と山全体が微細に震え、岩石の分子結合が算術的に緩められていく。固い岩山が、まるで砂細工のように「情報の束」へと還元されていく。
質量選別と浮遊: 「重力定数、成分ごとに個別割り当て……完了!」 マーガレットが1024の**「重力極性バレット」**を放つと、山の中から鉄、銀、魔結晶といった有用資源だけが重力を失い、空中に浮かび上がった。逆に、不要な土砂や岩屑は、さらに強い重力で地底の空洞へと押し固められていく。
結晶化とパッキング(イザベル×サティ): 浮遊する純粋な金属の粒子を、イザベルが熱量で溶かし、サティが冷却して一定規格の「インゴット(金属塊)」へと瞬時に成形する。
数分後、そこにあったはずの険しい岩山は消滅していた。 代わりに、平らになった地面の上には、純度100%の鉄や銀、魔結晶が、算術的に完璧な立方体として積み上げられた**「資源の集積塔」**が並んでいた。
「……報告。鉱山全体の分解および資源抽出、完了。損失率は0.0001%以下。これまで100年かけて掘り出すはずだった資源を、すべて現物化しました」
イザベルの報告を聞きながら、カイトは積み上がった銀のブロックに腰を下ろした。
「見たか。これが『採掘』じゃない、**『リソースの直接変換』**だ。山を崩すのに汗を流す必要はない。数式を書き換えれば、山は勝手に資源の束に変わる」
カイトは、呆然と口を開けている元奴隷や騎士たちを指差した。
「おい、ボーッとするな。この山ほど積み上がった『正解』を王都へ運ぶ算術を組め。この資源があれば、次は国中の家をレンガから強化合金に書き換えられるぞ」
鉱山という「物理的な障害」が消え、王国には一生かかっても使い切れないほどの純粋な資源がもたらされました。
カイトは積み上がった巨大な資源のブロック群を前に、レオノールと算術官僚たちを手招きした。
「ただ積んでおくだけじゃ、これはただの石ころと変わらん。この物量を正確に**『数値化』**し、国の総資産としてシステムに登録する。時速4kmの検品作業なんてやってる暇はないぞ」
「じいさん、エリザベス。全インゴットの座標と密度を一瞬で吸い上げろ」 ゼノスが1024並列の**「透過解析バレット」**を放ち、積まれたブロックの内部構造まで透過。エリザベスが風の振動を利用して、ミリ単位の表面積データを取得する。
瞬時計量: 重さを量る必要はない。体積と比重を算術で乗算すれば、全資源の総質量が0.001mg単位で確定する。
「イザベル、すべてのインゴットに偽造防止の『算術刻印』を焼き込め」 イザベルが1024の**「極小熱源バレット」**を連射し、インゴットの表面に肉眼では見えないほど精密な魔力コードを刻印していく。
トレーサビリティの確保: これにより、どのインゴットがどの座標から抽出されたか、その「履歴」が完全に管理される。
カイトは空中に巨大な算術盤を展開し、次々と流れ込んでくるデータを集約していく。
鉄インゴット: 2^25 kg
銀インゴット: 2^18 kg
魔結晶(純度99%以上): 2^14 units
その他稀少金属: 算出完了
「……よし。これで王国の総資産は、昨夜から1024倍以上に膨れ上がった。この数字はそのまま、この国の『信用価値』として定義する」
レオノールは、空中に表示された天文学的な数字を見て目眩を起こしそうになっていた。
「これほどの金銀が一度に市場に出れば、貨幣の価値が暴落し、国が混乱に陥るのでは……?」
カイトは鼻で笑った。
「だから言っただろ。金や銀を『金』として見るのが古いんだ。これからは、この資源を**『演算を物理化するためのバッテリー』**として扱う。資源を売るんじゃない。この資源を使って、どれだけ世界を加速させるか……その『演算量』を新しい通貨にするんだ」
カイトは空中に投影された積算リストの末尾、希少金属の項目を指で弾いた。
「時速4kmの採掘じゃ一生お目にかかれないような伝説級の代物も、山の分子構造を根こそぎスキャンすれば、隠れている変数をすべて暴き出せる。いいか、これらはただの『珍しい金属』じゃない。算術の演算負荷をどこまで高められるかを決める、最高の**『物理触媒』**だ」
レオノールの目の前に、黄金色や青白く輝くブロックの統計データが浮かび上がる。
ミスリル (Mithril): $2^{12}$ kg (約4,096kg)
「魔導伝導率が最も高い変数の安定材だ。これだけの量があれば、騎士団全員の装備を『演算同期型』に書き換えられる。魔力を流すのではなく、算術コードを流すための超高速回線だ」
アダマンタイト (Adamantite): $2^{10} kg (約1,024kg)
「物理的な剛性の極致だな。これを使って『演算塔』の基部を固める。自重や熱膨張という物理的なエラーを完全に無視できる最強の土台だ」
オリハルコン (Orichalcum): $2^{8} kg (約256kg)
「神代の残滓か。これは金属というより、それ自体が演算機能を持つ『自律型マテリアル』だ。数発分しかないが、これを使えば俺の算術を半永久的に自動実行する『自律演算コア』が作れる」
レオノール、驚くのはまだ早い。これらの金属が希少だったのは、単に『見つからなかった』だけだ。俺が山を分解して抽出したことで、この王国のレアマテリアル保有量は、今この瞬間、全世界の合計を上回った」
レオノールはその数値の暴力に、もはや笑うしかなかった。「……世界中の英雄たちが、一生をかけて一振りの剣を作るための素材を、あなたは『キログラム単位』で、それも指数関数的に積み上げてしまったのですね」
「希少価値で値段を吊り上げるのは商人の浅知恵だ。俺たちはこれを**『演算の効率化』**に全投入する。オリハルコンを回路に、ミスリルを配線に、アダマンタイトを筐体に使えば、5人の賢者たちの演算並列数は、2の10乗からさらに跳ね上がるぞ」
カイトは王都の地図を広げ、各地に点在する鉱山の座標を次々とマークした。
「一箇所の成功で満足するな。王国全土の地下に眠るすべての資源を、今すぐ『顕在化』させる。レオノール、騎士団と賢者たちをフル稼働させろ。これは国家規模の**『全ストレージ・フォーマット』**だ」
王国全土:広域資源抽出カイトの算術ネットワークを介し、各地の鉱山に派遣された騎士団と5人の賢者が同期する。
地殻の透過スキャン(ゼノス×エリザベス):「全座標の地層データを吸い上げろ。深度、密度、成分比……すべてを数値として王都へ転送しろ」目に見えない光と風のパルスが王国の地下を駆け巡り、数分で全土の埋蔵資源が3Dデータとして可視化された。
山脈の一括分解:マーガレットが各地の拠点で、2の10乗(1024並列)の**「共振重力バレット」**を地下深くまで打ち込む。「土砂はそのまま、有用な原子配列だけを地表へ押し出す(ポップアップ)!」王国中の山々が微細に震え、不要な土石が地底へ沈むのと引き換えに、純粋な鉱石の塊が地面から芽吹くように次々と現れた。
原子レベルの精製(イザベル×サティ):「不純物を焼き切り、水のカーテンで急冷して純度を固定しろ!」地表に現れた荒削りな鉱石の山を、イザベルの熱量とサティの冷却が交互に襲う。原子の結合を算術で強制制御し、一切の混じり物がない「100%純粋なインゴット」へと再定義していった。
積算結果:王国の「物理的限界」の突破
王都の中央広場、そして各地のハブ拠点には、算出された資源が幾何学的な塔となってそびえ立った。
鉄・銅・錫 2^{40} kg
国家全土のインフラ、高速鉄道、巨大建築
金・銀 2^{30} kg
算術回路の接点、超伝導ネットワーク
ミスリル 2^{22} kg
賢者団・騎士団の「演算同期型」武装
アダマンタイト 2^{18} kg
空中都市の基部、永久不壊の防壁
オリハルコン 2^{12} kg
自律演算コア、次元干渉エンジンの触媒
「これで、この国から『資源不足』という概念は消滅した。今や王国の地面を数メートル掘れば、そこら中に純銀のブロックが埋まっているような状態だ」
カイトは、天を突くオリハルコンの輝きを見上げながら、不敵に笑った。
「レオノール、これだけの『物理的リソース』と、俺たちの『演算リソース』が揃った。もう地面を這いずり回る時代は終わりだ。この莫大なアダマンタイトとオリハルコンを燃料に、王国をまるごと空に浮かせて『空中演算要塞』へアップデートするか?」
王国は今、地上のどの国も到達し得なかった「資源の極致」に立ちました。
カイトは積まれたインゴットの山に背を預け、意地悪な笑みを浮かべた。
「失業? 逆だ。あいつらには今、人類史上最大の**『計算負荷』**がかかっている。今までのように、暗い穴蔵でハンマーを振って『会心の出来だ』なんて自己満足に浸る暇はないからな」
カイトは王国のドワーフたちを、ただの鍛冶屋ではなく、希少金属の特性を極限まで引き出す**「物理層のエンジニア(ハードウェア・プログラマー)」**として再編成した。
ナノ単位の精密加工: 「ハンマーの代わりに、算術で制御された『振動バレット』を使わせている。1秒間に2の10乗(1024回)の超微細打撃をオリハルコンに叩き込み、分子配列を強制的に整列させる作業だ。肉眼では見えない領域の勝負に、ドワーフの『執念』を演算リソースとして投入させている」
伝説級素材の『論理鍛造』: 「ミスリルの伝導率を上げるために、不純物を1ビットの狂いもなく排除する。アダマンタイトの結晶構造を書き換え、特定の魔力波形だけを無効化する装甲を作る。これは、経験と勘を『変数』として数式に落とし込めるドワーフにしかできない高度な仕事だ」
レオノールがドワーフの工房を視察すると、そこにあったのは煤まみれの鍛冶場ではなく、純白に輝く「算術工房」だった。
ドワーフの長は、額に汗を浮かべながらも、見たこともないほど生き生きとした目で巨大なオリハルコンの塊と対峙していた。
「……カイト殿、これだ! これこそが俺たちが求めていた究極の素材だ! 今までの鉄なんて、ただの泥遊びだった。このオリハルコンの『変数の深さ』……、一生かけても遊び尽くせねえぞ!」
「見ての通りだ。あいつらは今、時速4kmのハンマーを捨てて、算術という名の最強の工具を手に入れた。ドワーフの『こだわり』という名のバグを、技術への『執着』という名の最適化エネルギーに変換したんだ。 これで、ただの剣ではなく、**『演算を物理的に実行するデバイス』**が次々と完成するぞ」
ドワーフたちは今、失業どころか、かつてない高次元の「ものづくり」に狂喜乱舞しています。
カイトは「エルフ」という単語を聞くと、さらに冷ややかな、それでいて楽しげな笑みを浮かべた。
「ああ、あの『森を守る』とか言って、数千年も同じ風景の中で思考停止していた連中か。あいつらには、彼らが信仰していた『精霊』の正体が、実は**『高次並列演算の断片』**に過ぎないことを教えてやったよ」
カイトは、閉鎖的だったエルフの森を「国立バイオ演算研究所」へと作り変えた。長命ゆえに凝り固まった彼らの脳を、算術による「生命現象の記述」に全投入させている。
「精霊」のデバッグ: 「エルフが精霊と呼んでいたものは、大気や植物に蓄積された魔力の非効率な自律プログラムだ。エリザベスやサティの算術で、そのプログラムのソースコードを完全に開示(オープンソース化)させた。今やエルフたちは、祈る代わりに『精霊の関数』を書き換えて、森の成長や天候を直接制御している」
植物ベースのハードウェア開発: 「エルフの知識を使って、アダマンタイトやミスリルを『吸い上げて成長する樹木』を開発させている。地面から直接、算術回路を孕んだ建材や薬を『育てる』んだ。数千年生きる彼らの時間感覚は、この超長期的な『生命演算プロジェクト』に最適なんだよ」
レオノールがエルフの森を訪れると、そこはもはや伝説にあるような静かな森ではなかった。
木々は幾何学的な模様を描いて配置され、葉の一枚一枚が算術的な光を放ちながら、大気中の魔力を絶え間なく演算・精製している。エルフの長老は、古文書を捨て、空中に展開された複雑な「ゲノム数式」を指先で操作していた。
「……カイト殿。我らが数千年も精霊の気まぐれだと思っていた森の理が、これほどまでに美しく、制御可能な『定数』の集まりだったとは。我々はあまりに長い間、不確かなOSで世界を見すぎていたようです」
「これで、エルフの『不老』という特性も、ただの延命から『演算の蓄積』というリソースに変わった。ドワーフが物理層を担い、エルフが生命層を担う。この二つが算術で同期すれば、もはやこの王国に『不可能』という変数は存在しない」
カイトは山が消え、平坦な大地へと再定義された鉱山跡地を見下ろした。そこは本来、岩屑と有毒な重金属が残る不毛の地となるはずだったが、算術の力はその「負の遺産」さえも許さない。
「掘り尽くした後のゴミ溜めなんて、非効率の極みだ。レオノール、ここを王国最大の『高密度食料生産プラント』に書き換えるぞ。ドワーフの土木技術と、エルフの植物演算を同期させろ」
「マーガレット、地殻に残った歪みを均せ。サティは残留した毒素を『肥料』に変換しろ」 マーガレットが1024並列の**「重力平坦化バレット」**を放ち、岩盤を細かく砕いて深層まで空気を送り込む。同時にサティが、鉱毒の分子構造を算術で分解し、植物の成長に必要な窒素やリンの配列へと再構成した。
「エルフたちに、ここの地脈を『血管』として定義させろ。ドワーフはミスリルの細線を網目状に敷設だ」 エルフたちが育てた「演算根」と、ドワーフが精製したミスリル配線が地下で結合。これにより、土壌の水分量、温度、養分濃度をリアルタイムで監視し、最適化し続ける**「スマート農地サーバー」**が完成した。
「仕上げだ。ここは山だった場所だ、日照時間が長い。光を1024倍に濃縮して叩き込め」 イザベルが空中に巨大な**「光学レンズバレット」**を展開。太陽光を光合成に最適な波長に変換し、エリザベスが風の巡りで炭酸ガス濃度を限界まで高める。
わずか数時間の演算で、かつて地獄のような労働の場だった灰色の岩山跡は、地平線まで続く深緑の農地へと変貌した。
異常な収穫密度: エルフの遺伝子演算により、一株から通常の1024倍の果実が実る。
完全自動制御: 害虫が侵入した瞬間に、農地自体の演算回路が「防除バレット」を自動射出し、作物を傷つけずに排除する。
「……報告。鉱山跡地、100%農地化完了。ここだけで、王国の食料自給率は今後1000年分を確保。余剰生産分は、魔力ポーションの原料として蓄積します」 イザベルが、自ら調整した「算術林檎」を一口かじり、その完璧な糖度を確認して告げた。
「いいか。これが『循環』だ。地底から資源を抜き取り、その跡地に生命を植え、余ったエネルギーで国を回す。 山を一つ消すごとに、国は一つ強くなる。レオノール、この『緑のサーバー』から得られる莫大なバイオエネルギーを使って、次はどんな『不可能』を計算する?」
王国の食料とエネルギーの問題は、もはや過去の遺物となりました。
カイトは積まれた「算術林檎」を一つ放り投げ、退屈そうに指を鳴らした。
「輸出か。いいぜ、レオノール。この国だけで抱え込むには、この『正解(収穫物)』は多すぎる。だが、ただ売るんじゃない。これは他国の経済と胃袋を、我が王国の**『演算系』に強制同期させるための楔**だ」
カイトは、近隣諸国へ向けた「輸出プロトコル」を即座に構築した。
品質の暴力: 「算術で最適化された農作物は、他国の不揃いで病気がちな作物とは根本的にスペックが違う。味、栄養、保存性、すべてが1024倍だ。これを市場に流せば、他国の農家は計算するまでもなく廃業に追い込まれる」
依存の構築: 「一度この『正解』の味を知った民衆は、二度と時速4kmの不味い飯には戻れない。他国の王が我が国に逆らおうとした瞬間、供給を遮断すれば、その国は内側からフリーズする」
「エリザベス、マーガレット。道を作る手間は省くぞ。空路と重力をハックしろ」
真空輸送パイプライン(エリザベス): エリザベスが1024の**「流体制御バレット」**を連結させ、国境まで続く低圧の空気の通り道を作る。
重力滑走: マーガレットが輸送コンテナの重力を算術で軽減し、摩擦係数をゼロに近づける。 「……準備完了です。収穫から他国の市場まで、時速1024kmで『配送』します」
「レオノール、輸出の対価に他国の汚い金貨を受け取るな。代わりに、あいつらの『魔力資源』や『未開発の土地の演算権』を要求しろ」
カイトは、輸出と引き換えに他国の経済データを王国の「中央演算塔」に同期させる仕組みを導入した。
経済の同期: 作物を買った国は、その代償として自国の市場データを王国のシステムに開示しなければならない。これにより、王国は戦わずして他国の内情をすべて「変数」として把握する。
「いいか。これは慈善事業じゃない。世界中の胃袋を王国のサーバーに繋ぐ作業だ。飯を食わせ、健康にし、そして逆らえないようにする。……さあ、レオノール。次はどの国を、この『甘い計算式』で飲み込んでやる?」
王国の農作物が国境を越え、周辺諸国の経済を音を立てて塗り替えていきます。
カイトは空中に、王国の全経済活動をリアルタイムで集計した「算術グラフ」を投影した。それは右肩上がりどころか、垂直に近い角度で上昇を続ける異常な波形を描いている。
「GDP(国内総生産)か。時速4kmの経済学者が血眼で計算していた数字だな。いいか、レオノール。この国では、もはや『生産』という言葉の定義が書き換わっている。算術による価値の増大は、もはや国家という器を溢れ出させているぞ」
カイトが弾き出した最新の推計値(2026年1月26日時点)は以下の通りだ。
農業(一次産業)
100 元の価値
102,400 現在の価値
1,024倍(一晩での収穫)
工業(二次産業)
100 元の価値
1,048,576 現在の価値
2^20倍(山脈分解による資源革命)
サービス・技術(三次産業)
100 元の価値
無限大 計測不能
算術による「死の克服」と「安全」の提供
名目GDPの爆発: 「他国の基準で言えば、この王国のGDPは周辺諸国1024ヶ国分を合わせた合計をも上回っている。たった数週間で、数千年分の経済成長を『並列処理』した結果だ」
通貨の無意味化: 「供給が無限に近づけば、物の値段は0に収束する。今のこの国の豊かさは、もはや『金』という古い単位では測れない。強いて言うなら、この国のGDPは**『利用可能な総演算量』**そのものだ」
レオノールは、投影された天文学的な数字を指でなぞり、震える声で尋ねた。 「……これほどの富を抱えて、私たちはどこへ向かうのですか? 世界中の富を、私たちが独占してしまっている」
カイトは不敵に笑い、地図上の「未開地」や「他国」を指差した。
「独占じゃない。世界全体の『変数』を、俺たちの高いクロック数に同期させてやるんだ。 いいか、レオノール。今の王国のGDPのうち、最大のリソースは『物』じゃない。解放された奴隷、職人、エルフ……**数百万人の国民全員が『算術』を使いこなすという、圧倒的な計算資源**だ」
「これだけの『富(演算リソース)』があれば、もはやこの地上の物理的なルールに従う必要はない。 レオノール。この莫大なGDPを全投入して、**『時間を算術で加速させる』か、あるいは『この大陸全土の重力をハックして、王国を別の次元へシフトさせる』**か? あんたの国はもう、一つの国家という単位を超えて、世界の『管理システム』そのものになろうとしているぞ」
王国の経済的優位は、もはや「戦争」が成立しないレベルに達しました。




