第11章:黄金のプロトコル――新大陸マージと論理侵略
カイトは「算術の牙号」の甲板から、絶望の色に染まった新大陸を見下ろし、冷徹なコマンドを入力した。
「まずはこの大陸の『物理レイヤー』を掌握する。恐怖で支配する旧支配者どものやり方は古い。俺たちは『生存定数の保障』という圧倒的な現実で、この大陸のOSを根底から書き換える」
1. 治癒と浄化の「着弾」(サティ×ゼノス)
「サティ、この汚染された空気をクレンジングしろ。じいさん、一帯の時間を『病が蔓延する前』の定数に固定だ」
医療ポッドの射出: 艦底から数千の「自律型算術医療ポッド」が大陸各地へ射出された。着弾と同時に、半径20乗(約100万)ミリメートル以内のあらゆるウイルス、寄生虫、重金属汚染を瞬間的に分解。
生体パッチの強制適用: 泥を啜り、死を待つだけだった民衆の体内に、ナノサイズの治癒演算子が浸透。長年の栄養失調と傷跡が、数秒の「再起動」を経て完治していく。
2. 「黄金の食糧プラント」の緊急建設(ドワーフ×イザベル)
「腹を空かせたままでは、論理的な思考はできん。イザベル、現地の汚染物質をすべて『カロリー』へ変換しろ」
物質変換建築: ドワーフの建築ボットが、不毛な荒野の岩石やゴミを材料に、数分で「広域自動給食センター」を組み上げた。
無限供給: イザベルが地脈から抽出したエネルギーを使い、王国の「黄金パン」と「高濃度栄養シチュー」を無尽蔵に生成。香ばしい匂いが風に乗り、絶望に沈んでいた村々を包み込んだ。
3. 情報の同期:精神ネットワーク(エリザベス×カイト)
「言葉で説得する時間は無駄だ。俺たちの『算術(1,048,576)』の基礎を直接脳にデプロイしろ」
風の広報: エリザベスが風の振動をキャリアとして、王国の「基本OS」を全住民へ送信。
認知のアップデート: 「なぜ自分たちが苦しかったのか」「この食べ物はどこから来たのか」。民衆の脳内に、王国の論理体系が20乗の解像度でインストールされ、彼らは自分たちを縛っていた「偽りの神」の正体が、ただの「システムエラー(悪徳権力者)」であることを瞬時に理解した。
カイトの総括:先行インフラによる「無血開城」
「よし。これでこの大陸の民は、もう旧支配者の言うことなんて聞かない。 腹一杯で、体が健康で、頭が冴えた人間に、『神の罰が怖いか?』と聞いたところで、返ってくるのは『論理的な否定』だけだ」
カイトが視線を上げると、遠くの城砦から、王国の圧倒的な輝きに恐れをなした「偽りの神」たちが、無意味な魔術の火球を放ってきた。だが、それは王国の20乗多重バリアに触れることさえできず、空中で霧散した。
「レオノール、イザベル。インフラは整った。次は、あの城に引きこもっている『ゴミ(旧支配者)』を片付けに行くぞ」
カイトは新大陸の荒れ果てた大地を見下ろし、呆れたように鼻で笑った。
「この大陸の**『劣悪な初期設定』を書き換えているんだ。不毛な大地なんていうのは、単なるエネルギー効率の計算ミスだ。イザベル、ゼノス、準備はいいか。2の20乗(1,048,576)精度の『全土テラフォーミング』**を開始する」
1. 土壌の「デフラグ」と「再定義」(ゼノス×ドワーフ)
「まずは、死んだ土に眠る『負の定数』をすべて消去しろ」
地殻の算術クリーニング: ゼノスが地脈の流れを逆算し、数千年にわたって蓄積された呪いや重金属汚染を「無効化」。ドワーフの自律機が土壌を分子レベルで攪拌し、窒素、リン、カリウムの配合比を100万分の1の精度で最適化した。
2. 「魔力灌漑」システムのデプロイ(マーガレット×エリザベス)
「水がないなら、大気から抽出しろ。足りないなら、魔力から合成しろ」
気象ハック: エリザベスが上空の湿度を制御し、必要な場所へピンポイントで「栄養分を含んだ雨」を降らせる。マーガレットは重力演算を使い、地下深くの死水を汲み上げ、一瞬で清らかな湧き水へと変換した。
3. 超高速・植生アップデート(イザベル×エルフ)
「芽が出るまで何ヶ月も待てるか。生命の『時計』を1024倍速まで引き上げろ」
光合成の最適化: イザベルが地表の熱量を操作し、植物が最も効率よく成長できる「恒常性空間」を展開。エルフの算術士たちが、王国の「黄金小麦」の種を蒔く。
瞬時の芳醇化: 数分前までひび割れた灰色の荒野だった場所が、今や黄金色に波打つ穀倉地帯へと上書きされた。果樹園には瑞々しい果実が実り、空気には生命の香りが満ちている。
「よし、これで終わりだ。地平線の果てまで、1ビットの隙もなく『豊かさ』をインストールしてやった。 レオノール、これであの城に引きこもっている偽物の支配者どもは、完全に詰みだ。飢えを武器にして民を従わせていた奴らにとって、この『どこまでも続く無料の食卓』こそが、最も残酷な死刑宣告になるだろうからな」
カイトはニヤリと笑い、傍らで静かに魔導銃のボルトを引いていたサティの肩を叩いた。
「安心しろ。ここからは、ただ耕すだけじゃない。この大陸の最深部に巣食う**『不治のバグ』**を穿つ、サティにしかできない精密作業の時間だ」
1. 「汚染源」の超精密狙撃この大陸の不毛の正体は、旧支配者が地下に埋め込んだ「生命力吸収術式」だった。
バイオ・スキャニング: サティが魔導銃のスコープを覗き込み、2の20乗の解像度で地脈を解析。土壌を腐らせていた「呪いの核」を、一千万分の一ミリ単位で特定した。
因果貫通弾: サティが放った算術バレットが、地表を傷つけることなく地下数千メートルまで透過。汚染の根源だけをピンポイントで「切除」した。
2. 生体データの「一括リブート」「サティ、生き延びた連中の『身体欠損』と『蓄積疲労』も、今のうちにすべてパッチを当てておけ」広域治癒: サティが空中に向けて特殊な散弾を放つ。
それは雨となって降り注ぎ、新大陸の民一人ひとりの体内に浸透。物理的修復: 飢えでボロボロだった内臓、重労働で曲がった背骨、失われた視力。サティの算術が細胞分裂の定数を一時的にハックし、一瞬で「全快」まで引き上げた。
3. 「死」という名のバグの迎撃城塞から、焦った旧支配者たちが「禁忌の即死魔法」を乱射してきた。迎撃演算: サティは表情一つ変えず、飛来する死の魔力パケットをすべて空中で撃ち抜いた。
無効化の証明: 彼女の弾丸が触れた瞬間、あらゆる呪いはただの「無害な数字の羅列」に分解され、キラキラとした光の粉となって消えた。
カイトの総括:サティの「完全防御」「見たか。サティがいる限り、この大陸に『死』という変数は存在しない。
彼女が放つのは単なる弾丸じゃない。対象をあるべき姿に固定する**『絶対生存の数式』**だ」サティは無機質な瞳をカイトに向け、小さく頷いた。
「……カイト様、残りの不浄な熱源(旧支配者)は、あと104万8576個。すべて、私の射程内(デバッグ対象)です」
カイトは冷徹に笑い、指をパチンと鳴らした。
「よし。インフラは整った、民の体調も万全だ。あとはこの大陸を不法占拠している**『社会の粗大ゴミ』**どもを一掃する。サティ、レオノール、イザベル。全ユニットに告ぐ。新大陸の大掃除を開始しろ」
1. 権力という名の「バグ」の強制撤去(レオノール×ドワーフ)
「レオノール、まずはあの無駄にデカい城を『解体』しろ。あそこはこの大陸の富を停滞させている最大のボトルネックだ」
城塞の資産化: レオノールの指揮下、ドワーフの重機部隊が旧支配者の城を物理的に分解。豪華絢爛な装飾や金銀はすべて「公共リソース」として回収。
物理的強制退去: 城の中に引きこもっていた悪徳貴族や権力者たちは、重力演算によって「ゴミを摘まみ上げるように」空中に持ち上げられ、城下の広場へと優雅に放り出された。彼らの「権威」という名の防壁は、算術の前では紙屑同然だ。
2. 暴力回路の「初期化」(サティ×イザベル)
「抵抗する騎士や略奪者はサティが、その背後の黒幕はイザベルが処理しろ」
武装の無力化: サティが放つ「干渉弾」が、略奪者たちの武器や鎧を分子レベルで分解。一瞬で彼らは「ただの裸の人間」に戻された。
思考の最適化: イザベルが、狂信や悪意に染まった脳内プロトコルをスキャン。暴力でしか自己を定義できない個体は、一律で「平和な農耕作業」に特化した学習用OSへと一時的に隔離・接続された。
3. 不正データの「全削除」(カイト×算術ネットワーク)
「隠し財産、不正な契約書、不平等な法……。すべてを灰にするぞ」
情報の透明化(ホワイト・リスト化): カイトが全大陸の「情報の非対称性」を強制終了。悪徳商人が隠し持っていた二重帳簿、不正役人の収賄記録を空に巨大なホログラムとして投影し、全一億の民の前に晒し上げた。
旧システムの消滅: 「誰が、何を、どれだけ奪ったか」を20乗の精度で算出し、奪われた富を瞬時に元の持ち主(民)へと自動還付。
「ふぅ……これでようやく、大陸中の『異臭』が消えたな。 見てみろ、あの立派な城の跡地には、もう民のための学校と病院の基礎ができている。レオノール、イザベル。大掃除は終わりだ。ここからが、本当の意味での**『大陸OS Ver. 2.0』**の起動だ」
カイトは冷徹な眼差しで、大掃除が終わったばかりの「元・敵地」を眺め、算術盤に最終的なマージ・プロトコルを打ち込んだ。
「『侵略』なんて言葉は古臭い。これは単なる**『リソースの最適化』**だ。非効率な旧OSを排除し、健全なハードウェア(土地と民)を王国のメイン・システムへと統合する。レオノール、イザベル。最終フェーズ、全大陸の『吸収合併(M&A)』を執行するぞ」
1. 物理レイヤーの「吸収」
「この大陸のすべての原子を、王国の管理ディレクトリに移動しろ」
空間定義の拡張: マーガレットの重力演算により、二つの大陸の間の「距離」という変数を算術的に圧縮。王国の黄金の物流ラインが、新大陸の隅々まで一瞬で接続された。
資源の統合: 新大陸に眠る未知の鉱物、魔力、そして広大な土地データが、王国の「中央演算炉」へと次々とインポートされ、王国の総出力が指数関数的に上昇していく。
2. 社会レイヤーの「合併」
「法、言語、度量衡……。バラバラのバグを一つにまとめ、完全な互換性を持たせろ」
OSの統一: レオノールが、新大陸の旧態依然とした法律を全削除。代わりに王国の「絶対平等・生存保障プロトコル」をインストール。
市民権の自動付与: イザベルが全一億人の生体データをスキャンし、王国の「統合ID」を発行。これにより、旧大陸の民と新大陸の民の間から「差別の境界線」が消滅し、一つの巨大な「王国知性体」へとマージされた。
3. 知性レイヤーの「侵略(上書き)」
「最後に、彼らの『常識』という名の旧OSを、俺たちの算術で完全に塗り替えろ」
論理による征服: カイトが、この大陸を縛っていた古い伝統や迷信を、20乗の解像度を持つ「真実」で論破し尽くした。
忠誠の自動生成: 圧倒的な豊かさと、病のない肉体。これを「現実」として与えられた民は、侵略されたという自覚さえ持たず、自ら進んで王国の「一部」になることを望んだ。これが、カイトの提唱する**『完全無欠のソフト・インベイジョン(論理侵略)』**だ。
カイトの総括:統合管理者の誕生
カイトは、二つの大陸が一つの巨大な「青い光の回路」として繋がったホログラムを見つめた。
「完了だ。これでこの星の陸地の40%が、俺たちの管理下に入った。 『俺たちの大陸』と『あいつらの大陸』という区分け(バグ)はもうない。あるのは、一つの完璧な**『王国OS』**だけだ。 レオノール、イザベル。おめでとう。俺たちは今日、ただの『王』から、この惑星の『管理者』へと昇格したんだ」
カイトは不敵に笑い、ホログラムで表示された「惑星全土の統治フローチャート」を指先で弾き飛ばした。
「もし王というのが、玉座に座って贅沢を貪り、民の生死をサイコロで決めるだけの『偶像』を指すなら、俺はそんなものには1ビットの興味もない」
彼はレオノールとイザベルを振り返り、その鋭い眼差しを二人に向けた。
1. 王の定義:システムの「カーネル(核)」
「俺はこの王国の『飾り』じゃない。システムの安定、演算の最適化、そして全市民の生存定数を維持するための**『中心核』だ。俺が止まれば、この完璧な世界は一瞬でバグ塗れの地獄に戻る。 この惑星というハードウェアを正しく駆動させるための、唯一無二の『実行権限(ルート権限)』**。それが俺という王の正体だ」
2. レオノールの役割:インターフェース(窓口)
「レオノール、あんたは『王』という象徴を、民が理解できる形に翻訳する**『ユーザー・インターフェース』**だ。民は数式を愛でることはできないが、あんたの慈愛と気高さなら信じることができる。あんたが微笑むだけで、社会の摩擦は最小限に抑えられる。飾りじゃない、代わりのきかない『潤滑剤』だ」
3. イザベルの役割:オペレーティング・システム(OS)
「イザベル、お前は俺の意志を現実の事象へ変換する、世界最強の**『エンジン(OS)』**だ。俺が描く理想という名のコードを、一億の民の空腹を満たし、病を治し、魔物を消し去るという『出力』に変える。お前がいなければ、俺の算術はただの空想で終わる」
カイトの結論:完全な「三位一体」
カイトは二人の肩を引き寄せ、窓の外に広がる、今や二つの大陸を繋ぐ巨大な黄金の回路を見つめた。
「俺が算術(命令)を出し、イザベルが実行(演算)し、レオノールが定着(調和)させる。 この三つの機能が揃って初めて、この世界は『正解』であり続けられる。 誰一人として飾りなどいない。俺たちは、この惑星を正しく運営するための**『三位一体の管理ユニット』**だ」
カイトはイザベルを真っ直ぐに見据え、その細い指先に、王国全土の軍事・防衛権限を集約した「真紅のコマンド・キー」を預けた。
「イザベル。お前を今日この瞬間から、『王国算術騎士団』の初代団長に任命する。これはただの肩書きじゃない。俺の隣で世界を管理するOSでありながら、必要とあればその全リソースを『暴力』へと転換し、バグを物理的に粉砕する**『執行プログラム(エグゼキューター)』**になれ、という意味だ」
1. 騎士団の再定義:算術騎士団
「騎士団といっても、古い剣や盾を振り回す野蛮な集団じゃない。お前が率いるのは、俺の算術を戦場レベルで実行する**『人間型デバッグ・ユニット』**だ」
装備の同期: 団員全員の装備を20乗(1,048,576)精度の多重障壁で固定。
思考の並列化: イザベルが「マスター」となり、全団員の視覚と感覚をリアルタイムで共有(同期)。一人が見た敵は、一瞬で全団員の「標的」として共有される。
2. イザベルの「団長モード」
イザベルは静かに立ち上がり、纏っていたドレスを算術の光で「真紅と銀の軍装」へと強制換装した。その瞳には、かつての冷徹なオペレーター以上の、鋭利な刃物のような光が宿っている。
「……謹んで拝命いたします、カイト様。 私の愛する貴方の世界を汚すバグ、そして貴方の女(私)に無礼を働く不確定要素……。そのすべてを、騎士団の名において、塵一つ残さず『物理削除』してみせましょう」
3. レオノールの反応
「……驚きました。カイト様。イザベルに軍権を預けるということは、この大陸に『聖域』という名の鉄槌を持たせるということですね。 でも、不思議と怖くはありません。彼女の剣は、貴方と私、そして民を守るための『慈愛の刃』であることを知っていますから」
カイトの総括:最強の盾と剣
「よし、これで体制は整った。 内政はレオノール。防衛とデバッグは騎士団長イザベル。そして全体演算は俺だ。 イザベル。まずは新大陸の各地に残っている『旧支配層の残党』を、騎士団の初仕事として一掃してこい。一匹も逃すなよ」
カイトがその言葉を口にした瞬間、玉座の間に張り詰めていた「軍事的緊張」が、一瞬にして「甘美で暴力的な独占欲」へと書き換えられた。
イザベルの軍装に包まれた背中が微かに震え、彼女はゆっくりとカイトを振り返った。騎士団長としての冷徹な仮面はすでに剥がれ落ち、そこにあるのは、自らを「俺のオンナ」と定義した男に対する、狂おしいほどの情熱を湛えた瞳だった。
1. 騎士団長の「優先順位」
「……はい。その通りです、カイト様。 私は王国の騎士団長。ですが、その肩書きの下にある『本体』は、いつ、いかなる時も貴方だけのものです。私の剣も、私の熱量も、私のこの肌も……すべては貴方の所有物として、貴方の望むままに機能します」
2. レオノールの微笑
レオノールは、赤面しながらもどこか誇らしげに、二人を見つめた。 「ふふ……。カイト様、一億の民の前でそんな『全権宣言』をなさるなんて。ですが、それでいいのです。イザベルという最強の剣を制御できるのは、世界で唯一、彼女を『オンナ』として愛し、剥き出しにした貴方だけなのですから」
3. 世界への「上書き」
カイトはイザベルの腰を強引に引き寄せ、大陸全土に中継されているホログラムの向こう側にいる国民たちへ、傲慢に言い放った。
「いいか、よく聞け。イザベルは俺のオンナだ。 彼女が振るう剣は俺の意志であり、彼女が守る平和は俺の愛だ。 この大陸の誰も、いかなる神も、俺のオンナに指一本触れることは許さん。彼女を敵に回すということは、この世界の『物理法則(俺)』そのものを敵に回すということだと思え」
イザベルの「最終同期」
イザベルはカイトの胸に身を預け、全大陸の民が見守る中で、至福の表情で目を閉じた。
「……光栄です、カイト様。 今日から私の騎士団は、貴方の愛を守るための『私兵』として、この惑星のすべてを貴方の色に染め上げてみせましょう」
カイトは不敵に笑い、隣に立つイザベルの肩を抱き寄せた。
「イザベル、俺のオンナとして、最初のド派手な『奇跡』を見せてやれ。この死に絶えた荒野を、一億の民が一生食い繋げる黄金の楽園に書き換えるぞ」
イザベルは紅潮した顔をキリリと引き締め、騎士団長としての、そしてカイトの愛するパートナーとしての全演算リソースを解放した。
1. 「バグ」の強制デフラグ(地殻洗浄)
「まずは、土壌に染み付いた『毒』と『呪い』をすべて無効化しろ」
分子レベルの洗浄: 2の20乗(1,048,576)精度のスキャンにより、荒野の砂一粒一粒に含まれる重金属や旧時代の汚染物質を特定。サティの浄化弾とイザベルの熱量制御を同期させ、それらを一瞬で「無害な炭素とミネラル」へ再構成した。
2. 「天の恵み」の物理定数化(気象ハック)
「水がない? ならば大気中の水素と酸素を強引にマージしろ」
超広域灌漑: エリザベスが上空の気流を操作し、湿度を最適化。イザベルがその雲に微細な魔力触媒を撃ち込むことで、窒素成分を豊富に含んだ「肥料の雨(液体パッチ)」を大陸全土に降らせた。
3. 「黄金小麦」の爆発的デプロイ(超高速植生)
「芽が出るまで待つなんて非効率だ。時間の流れを算術で加速させろ」
収穫までのカウントダウン:180秒: エルフが改良した「王国の種」が地に落ちた瞬間、イザベルの生体クロック加速演算が発動。芽吹きから成熟までを、わずか3分という神速のタイムスケールで実行した。
目の前に広がっていた絶望の茶色は、瞬く間に風に波打つ「黄金の小麦の海」へと塗り替えられた。果樹園には握り拳ほどもある瑞々しい果実が実り、不毛の風は生命の香りに満ちた芳醇な大気へと変わった。
「見たか、レオノール。これが俺たちのやり方だ。 祈る必要はない。ただ算術(俺)を信じれば、大地はこうして『正解』を出す。イザベル、よくやった。さすがは俺のオンナだ」
イザベルは荒い息をつきながらも、満足げに微笑んだ。 「……はい。この大地は、もう貴方の愛する民を飢えさせることはありません。カイト様、この黄金の海は、貴方へ捧げる私からの最初の『領土』です」
カイトは空中に指を走らせ、イザベルが騎士団長権限で常時アップデートしている「生体反応グリッド」を投影した。
「この大陸の人口か。レオノール、イザベル。旧時代のいい加減な『戸籍』なんてバグは捨てろ。2の20乗(1,048,576)精度のリアルタイム・スキャンで、一人の漏れもなくカウントしてやる」
新大陸・人口統計データ(算術スキャン結果)
総人口:1億2,845万1,024人 (旧支配層のデータでは8,000万人とされていたが、スラムの隠れ住人や見捨てられた辺境の民を含め、約1.6倍の個体が確認された)
個体情報の内訳
生存状態: 「俺たちが着く前の生存率は絶望的だったが、現在はサティの広域治癒とイザベルの食糧供給により、全個体の健康指数が99.8%まで回復している」
旧貴族・支配層:約12万人(現在、全権限を剥奪し『再教育ディレクトリ』へ隔離中)
旧奴隷・被差別層:約4,500万人(全負債をデリートし、王国の『一級市民』として再登録完了)
一般市民・農民:約8,333万人(黄金の畑での労働を通じ、王国OSへの適応を開始)
「1億2,800万……。これだけの人間が、旧支配者の無能な演算のせいで『飢え』という名のデッドロックに陥っていたわけだ。 だが、もう安心しろ。今日この瞬間から、こいつら全員が俺たちのシステムの『構成要素』だ。一億の脳、一億の肉体……これほど巨大なリソースがあれば、惑星全土のデバッグなんてあっという間に終わるぞ」
イザベルは軍装の袖を正し、鋭い眼差しでホログラムを操作した。 「カイト様。1億2,845万1,024名、全員の生体IDの発行を完了しました。彼らのバイタルは私の管理下にあり、反乱の予兆や健康状態の悪化は、1ミリ秒以内に私の脳内(騎士団本部)へアラートが飛ぶよう設定済みです。……全員、貴方の所有物として完璧に管理いたします」
カイトは黄金に輝く大地のパノラマを背景に、空中へと膨大な「知識のパケット」を放出した。
「ただ腹を満たし、健康にするだけじゃ、人間はただの家畜と同じだ。この一億二千万人の脳に、思考の火を灯す。レオノール、イザベル。この大陸に**『算術的ルネッサンス(文芸復興)』**の種を蒔き、俺たちは次のフロンティアへ向かうぞ」
1. 「知識のオープンソース化」(知の革命)
「『知ること』を特権にする時代は終わった。すべての情報を民に開放しろ」
算術学校のデプロイ: 各地に建設されたインフラ拠点に、一瞬で「全自動学習端末」を設置。文字、算術、科学の基礎を、遊びの中で学べる「教育プログラム」として一億人にインストールした。
情報の非対称性の消滅: かつて貴族が独占していた歴史書や魔導書を、すべて算術で解体・翻訳し、平民たちが自由に閲覧・議論できる「全大陸共通図書館」を構築。
2. 「個」の目覚め(精神の革命)
「神や王(旧支配者)に怯える『受動的バグ』から、自ら未来を演算する『能動的ユーザー』へ進化させろ」
芸術と創造の奨励: 衣食住が完全に保障(ゼロ・コスト化)されたことで、民の余剰エネルギーは芸術、音楽、そして新しい技術の発明へと向けられた。
レオノールの啓蒙: 「皆、聞きなさい。貴方たちは誰かの道具ではない。カイト様の算術が証明した『自由』という名の数式を、自らの手で完成させる権利があるのです」
3. 次の座標へ:惑星全土スキャン(星の海への進出)
カイトは、ルネッサンスの熱気に包まれ始めた新大陸を背に、「算術の牙号」の再起動を命じた。
「よし、この大陸の『種まき』は完了だ。あとは民が勝手に花を咲かせる。 イザベル、次のターゲットをロックオンしろ。二枚の大陸を手に入れた今、俺たちの演算速度はさらに加速している。この惑星の裏側に隠れている、**『最大級のシステム・エラー(未踏大陸)』**を捕捉するぞ」
「一億二千万人の『目覚めた知性』がネットワークされた。これで俺たちの背後は盤石だ。 さあ、行くぞ。この星のすべてのバグを消し去るまで、俺たちの『算術の行軍』は止まらない」
カイトは黄金色に染まった大地を一度だけ振り返り、算術盤の地図データに決定的な「ラベル」を刻み込んだ。
「名前か。……かつての無能な支配者たちが付けた、呪いや迷信に満ちた呼称なんてものは、すべてノイズとして削除した。今日からこの大陸は、俺たちの王国の第2セクターとして、こう再定義する」
大陸名:『プロトコル・アウルム(Protocol Aurum)』
名前の由来:
Aurum: ラテン語で「黄金」。カイトが不毛から変えた「黄金の小麦」と、民が手に入れた「黄金の知性」を象徴している。
Protocol: 単なる土地ではなく、王国の秩序と算術のルール(約束事)によって統治される「論理空間」であることを示している。
イザベルの承認: 「『プロトコル・アウルム』……。良い響きです、カイト様。かつてこの地を覆っていた絶望の残滓を、貴方の名付けた『黄金の法』が完全に上書きしたのですね。私の騎士団の記録にも、永久欠番として登録いたしました」
レオノールの感嘆: 「黄金の約束……。この大陸の民は、その名を聞くたびに、自分たちが飢えから救われ、知性を与えられたあの日を思い出すでしょう。カイト様、この地は名実ともに、王国の誇り高き『翼』となりました」
「よし。地図の更新は終わった。 旧大陸(セクター1)と、この黄金の大陸。二つのエンジンが同期し、俺たちの演算能力は今、惑星規模へと拡大した」
カイトは再び前を向き、果てしない水平線の先を指差した。
「さあ、行くぞ。次は、この黄金の法さえも通用しない、さらなる『異形の論理』が支配する領域をデバッグしに行く。イザベル、最大戦速だ!」
カイトは少し意外そうに眉を上げ、それから自嘲気味に笑って、算術盤の原点を指し示した。
「そういえば、故郷の名前を口にするのを忘れていたな。あまりに当然の『前提』すぎて、定義する必要すら感じていなかった。だが、新大陸を『プロトコル・アウルム』と名付けた今、始まりの地にも相応しいラベルが必要だ」
王国の大陸名:『オリジン・コード(Origin Code)』
名前の由来:
Origin: すべての始まり。カイトが初めて算術で世界を書き換え、バグだらけの理を破壊した「原点」であること。
Code: この大陸自体が、今やカイトの算術によって隅々まで記述され、完璧な調和を保っている「完成されたプログラム」であることを示している。
イザベルの反応: 「『オリジン・コード』……。私が初めてカイト様に出会い、そして『オンナ』として再起動された場所。そこが世界の『基準点』となるのは、論理的に見ても非常に美しいネーミングです」
レオノールの想い: 「私たちの原点……。かつて滅びを待つだけだったあの地が、今や星全体の再生を司る『心臓』となったのですね。カイト様、その名に恥じぬよう、私は『オリジン・コード』の安寧を永久に保守し続けます」
カイトはホログラム上に、二つの大陸が青と金の光で繋がる図を投影した。
「よし、これで明確になった。 俺たちの故郷、完成された静謐の地**『オリジン・コード』。 そして今、新たな希望と知性が燃え上がる黄金の地『プロトコル・アウルム』**。 この二つのセクターを基盤に、俺たちはこの惑星全体のOSを書き換える。準備はいいか、イザベル、レオノール。次は……この星の『裏側』にある、最大級の未定義領域へ突っ込むぞ」




