表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
結婚式当日に捨てられた男爵令嬢は王子に甘く溺愛される  作者: 星名柚花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/20

20:偽りの告白

   ◆   ◆   ◆


 三日間、私はキアラ嬢とデートを重ねました。

 一日目は王宮の池に小舟を浮かべて語り合いました。

 二日目は王宮美術館を見学した後でお茶を飲み、三日目は共に楽器を演奏しました。


 とても楽しい三日間でしたが、キアラ嬢に特別な感情があるわけではありません。

 私の心はフィオレット嬢に向いていますし、キアラ嬢の想い人が私ではないことも承知しています。

 それでも、私はキアラ嬢に甘い言葉を囁き、思わせぶりな台詞を何度も言いました。

 全ては、キアラ嬢とカイト殿に奮起を促すためです。

 カイト殿がキアラ嬢に告白するのが最良ですが、キアラ嬢がカイト殿に告白しても良いのです。

 最終的に二人が結ばれてくれれば、途中経過はどうであろうと構いませんからね。


 私の奮闘の裏で、シオンとロクサーヌ嬢はキアラ嬢やカイト殿に発破をかけてくれていました。が。


「……殿下、申し訳ございません。カイト殿が奥手すぎて、どうにもなりません」

「わたくしも精一杯、背中を押したのですが……」

 キアラ嬢とのデートが終わった三日目の夜。

 シオンとロクサーヌ嬢は私の部屋のソファに座り、揃って項垂れました。


「わかりました。二人とも、これまでの協力に感謝します。やはり私が全力で後押ししなければ、どうにもならないようですね」

「後押しって、どうするおつもりですか?」

 シオンは不思議そうな顔をしています。


「任せてください。私は立派な当て馬となってきます!」

 私は力強く宣言し、拳を握り締めました。目指すはダニエルです。


「……は?」

「当て馬?」

 唖然としている二人に計画を話し、私は夜の庭園にキアラ嬢を呼び出しました。

 都合の良いことに、今日の天気は快晴。

 空には満天の星、地には花々。

 そんな素晴らしい景色の中、私は停止中の噴水の傍でキアラ嬢と向かい合いました。


 キアラ嬢は気づいていませんが、噴水の裏には腰に剣を佩いたカイト殿が身を潜めています。


 私が「これからキアラ嬢に告白するため、邪魔が入らないように見張っていてほしい」と頼んだのです。


 さて、カイト殿は『幼い頃より恋焦がれていたキアラ嬢が王子に奪われる』という状況に耐えられるでしょうか。

 できれば耐えないでほしいです。

 叶うなら、いますぐにでも「ちょっと待った!」と飛んできてほしいのですが……少し待ってみても、彼が女神像の裏から出てくる気配はありませんね。残念です。


「……あの、ユーリス殿下。こんな夜更けにお呼びになるなんて……。何か……大切なお話なのでしょうか……?」

 いつもの明るい笑顔はどこへやら、キアラ嬢は不安げな顔で私を見つめます。


「キアラ嬢」

 私が名前を呼ぶと、キアラ嬢は怯えたように肩を震わせました。


「私は貴女に深い親愛感情を抱いています。この三日間、貴女と過ごした時間は、私にとって特別でした。池に船を浮かべ、お茶会で笑い合い、共に奏でた音楽を通して語り合った。その一瞬一瞬が、宝物のように胸に残っています」

 胸に手を当てて微笑む私を呆然と見つめながら、キアラ嬢は何度も瞬きをしました。

 現実が信じられないのか、信じたくないのか。


「……殿下。それは……私も、同じですわ……」

 キアラ嬢は必死で作り笑いを浮かべていますが、声が震えていますよ?


「嬉しいです」

 私は微笑みを浮かべたまま、ゆっくりとキアラ嬢に近づきます。

 キアラ嬢のドレスがわずかに動きました。

 恐らくは、下がろうとして踏みとどまったのでしょう。

 ですが、私はあくまで気づかないふりを貫きます。


「率直に言います」

 私はそこでいったん言葉を切り、呼吸音が聞こえるほどの至近距離からキアラ嬢を見つめました。

 そのとき、ざあっ――と音を立てて風が吹き、花びらが空に舞い上がりました。

 なんと良いタイミングで吹く風なのでしょう。

 演出としては満点。褒美を上げたいくらいです。


「私は貴女のことが好きです。貴女が私と未来を共にしてくださるのであれば、それ以上の喜びはありません」

「……!!」

 キアラ嬢の目が大きく見開かれました。

 その瞳の奥に宿ったのは喜びではなく、驚きと焦り。


 ……ここまで言ってもカイト殿は駆けつけてくれませんか。

 いまこそ待ったをかける絶好のチャンスだというのに。

 どうやらカイト殿を動かすには、さらなる追撃が必要なようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ