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「代償列車」
「短い話ばかりですが、油断すると泣いたり笑ったりします。」
1分で読める話も、3分で考え込む話も。
気軽に読めて、ちょっとだけ深い。
そんなショートショートを詰め込んでいます。
矢田は深夜、見知らぬ駅のホームで目を覚ました。
終電は過ぎている。駅員もいない。だが、ホームの向こうから一両編成の電車が滑り込んできた。
扉が開く。乗るしかない。
車内には先客が一人。老人が穏やかに微笑んだ。
「久しぶりだね、矢田くん」
「誰ですか?」
「忘れたかい。君が小学生の時、線路に落ちた君を助けた駅員さ。あの時、君の代わりに轢かれてね」
矢田は凍りついた。そんな記憶はない。
「記憶は書き換わるんだよ。君が生きるために」老人は立ち上がった。「さあ、次は君の番だ」
電車が停まった。ホームに少年が立っている。ふらふらと線路に落ちた。
矢田は飛び降り、少年を押し上げた。背後で警笛が鳴る。
轢かれる瞬間、少年の顔が見えた。
それは、幼い頃の自分だった。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
次回もまた、ちょっとした物語をお届けします。
よろしければ感想などもお待ちしています。




