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「記憶販売店」
「短い話ばかりですが、油断すると泣いたり笑ったりします。」
1分で読める話も、3分で考え込む話も。
気軽に読めて、ちょっとだけ深い。
そんなショートショートを詰め込んでいます。
矢田は繁華街の奥で「記憶販売」という看板を見つけた。
店主は言った。「当店では不要な記憶を買い取り、必要な記憶を販売しております」
矢田は即座に売却を決めた。失恋の痛み、恥ずかしい過去、後悔の数々。店主は丁寧に買い取り、代金を支払った。
「では、何か購入されますか?」
矢田は棚を眺めた。「初恋の甘い思い出」「成功体験」「幸福な家族の記憶」…魅力的な商品が並ぶ。
「これをください」矢田は「完璧な人生の記憶」を選んだ。
翌朝、目覚めた矢田は満ち足りた気分だった。素晴らしい人生を歩んできた実感がある。
だが、ふと鏡を見て凍りついた。鏡の中の自分は、明らかに二十歳は老けていた。
「記憶は時間と共に」店主の声が蘇る。「五十年分の記憶には、五十年分の対価が必要なんですよ」
矢田は震える手で、カレンダーをめくった。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
次回もまた、ちょっとした物語をお届けします。
よろしければ感想などもお待ちしています。




