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憧れの『英雄』に殺されかけた僕は、革命軍に拾われたので、生まれ持った『未来視』で偽りの聖域を壊し尽くす  作者: 日影 聖真


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第37話:誕生させられた命

 どれほど歩いただろうか。

 光すらロクに届かないここでは、太陽の位置すら把握できない。


 無限に続いているかのような暗闇と、謎の生体反応が即席メンバーをより不安にさせた。


「今回作戦立案は誰がしたでヤンスか?」


 息が詰まりそうな空間に、ふとノッチが気の抜けた声で疑問を投げかけた。


「どうしたんですか?急に」


 シノンが即座に反応した。


「なかなかよく練られている作戦だと思いヤンして」


「作戦の立案は私とシノンくんとレックス先輩でやりましたけど、ほとんどシノンくんがやってくれました。まぁ、先輩はほとんど寝てましたけどね」


「疲れていたんですよ」


「シノンくんは先輩に甘いのよ!だからあの人どんどん調子に乗って人に仕事任せるわ!サボるわで!こっちがどんどん大変になるんだから!」


「あははは。」


「そうでヤンスか。なかなか苦労されているのでヤンスね。」


 語気を強めるカミラに、半笑いでフォローを入れるシノン。


 そんな穏やかな空気が漂いはじめ通路が緩やかに下り始めた頃、空気が変わった。湿気の中に、ドブでも煮詰めたような悪臭と腐った何が入り混じった強烈な悪臭がクラウン達の鼻を刺激した。


 暗闇の奥から、低い唸り声が響いた。


 灯りに照らされたそれを見て、クラウンは思わず息を呑んだ。


 犬のような体躯だったが、犬ではない何か。四肢の関節が逆向きに曲がっており、背中には縫合の跡が無数に走っている。皮膚の一部は別の生き物のものに差し替えられたように色が違い、眼球は本来あるべき場所に収まっていなかった。


 生き物というより、誕生させられた何かだった。


「……な、なんですかあれ!」


 シノンが思わずそう溢すと、謎の生命体はクラウン達の方へとゆっくり迫る。顔についた奇形な生き物の死肉がポトリと落ち、先ほどまで捕食していた原形不明な生物がピクッピクッと痙攣しているのが見えた。


「……。」


 ノッチは顔をしかめた。同じ研究者として何か思うところでもあったのだろうか?


「構えてください!」


 シノンがそう告げると、即座に戦闘態勢に入る。クラウンが隣を見ると、先ほどまでビクビクしていたカミラが静かに鞭を構え、表情は消えていた。


 犬型の生物もクラウン達に続き戦闘態勢をとったが、奥から来た同じ個体がブルブルと体を震わせた。すると――次の瞬間に一斉に何かが駆ける音が響き三十匹ばかりの同じ個体がその場に集まった。


「………。」


「囲まれる前に片付けます。各自対応してください」


 声が届くより先に、カミラの体が動いていた。獣が跳躍した瞬間、カミラは鞭を鋭く振るった。乾いた音が通路に響き、獣の首筋に鞭が巻きついた。そのまま引き絞ると、獣は一声も上げずに倒れた。


 クラウンも剣を抜き、獣と対峙した。動きは速いが、関節が逆向きに曲がっているせいか踏み込みに僅かな歪みがある。その瞬間を捉えて、クラウンは踏み込んだ。


 ――短い戦闘だった。


「強いですね、カミラさん!僕ビックリしてしまいました!」


 シノンが嬉しそうに話すと、カミラは鞭についた血を払いながら答えた。


「何、私が弱いと思った?」


「い、いえ!資料では強いと知ってはいたのですが、何せこんなに細くて綺麗な人だったので少し心配だったので」


「やっぱりでヤンス……。」


 シノンとカミラがワチャワチャしている横で、ノッチは一人しゃがみ込み奇形生命体を観察していた。


「どうしたんですかノッチさん」


 クラウンが話しかけると、継ぎ接ぎの部分を触りながら答えた。


「おそらくこれはキメラでヤンス。」


「キメラってなんですか?」


 シノンが興味を示し、横からヒョイッと顔を出す。


「キメラとは、様々なモンスターを素体に新しい生命体を作る人工生物でヤンス」


「だからエーテルの流れがおかしかったんですか」


「どういうことでヤンスか?」


「生き物にはそれぞれいろんなエーテルの色があるのですが、この生物は色んな色があって少し不自然だったので」


「つまりそれは、エーテルの流れがわかるということでヤンスか?」


「そうですけど?」


 顔を傾けるシノンに、ノッチは僅かな沈黙のあと真剣な面持ちで続けた。シノンに緊張が走る。自分は何かまずいことを言ったのだろうか?そんな不安にかられ、ノッチの返答を待つ。


「……。それは――男の娘は違うエーテルの流れや性質をしているでヤンスか!」


 思わずズコッと力が抜ける。何を言い出すかと思えば、また?それですか。と少し呆れ気味に返答する。


「いや、多分一緒だと思いますけど……」


「いやわからないでヤンス!調べたほうが早いでヤンスね!確かここの地下に人体実験場があったでヤンス!そこで調べるでヤンスよ!今すぐ行くで――」


「はいちょっとタンマです、先輩!」


 鼻息を荒げるノッチとシノンの前に割って入ると、カミラは両手を突きだしてノッチを静止させる。


「そういうのはあとです。それより今はやる事があるでしょ?私もちょっと気になるけど……」


「何か言ったでヤンスか?」


「言ってません!はい、とっとと進みますよ!調べものはあとでじっくりやればいいんですから」


「そうでヤンスね……。あとでやるでヤンス」


「あのっ、できればなしの方向で」

お読み頂き、ありがとうございます。



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