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憧れの『英雄』に殺されかけた僕は、革命軍に拾われたので、生まれ持った『未来視』で偽りの聖域を壊し尽くす  作者: 日影 聖真


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第34話:新たな任務


 ――皇都


 革命軍皇都拠点。

 ここは少し肌寒かった。

 実際に温度が低かったのもあるのだろうが、何とも言えない女同士の空気が一段とこの場を凍りつかせていた。


「なんでミロット達がいるのさ」


 スイレンは不貞腐れたように告げた。その声には、普段の鋭さが欠けていた。


「なんでかな」


 ミロットは簡易ベッドで寝かされたクラウンへ視線を向け、静かに返す。


「……。」


 スイレンとミロット、その両者の間にさらに気まずい空気が漂い始めると、ノッチはゴーグルに手を当て語りだした。


「それはでヤンスね。ミロット殿がスイレン殿を心配していたからでヤンス。作戦はどうなってるだの、手がかかるだのと、いちいちうるさかったでヤンス。何だかんだ言って、やはりミロット殿も女性。こちらが何も言っていないのに延々と喋っていて正直うるさかったでヤン――グヘェッ!?」


 流暢に喋るノッチの頭部に手刀が入り、潰されたカエルのように倒れ込む。


「ちょーっとノッチ、黙ろうか?」


「は、はいでヤンス」


 額に怒りマークを浮かべながらも笑顔を崩さないミロットとは対照的に、スイレンは小さく笑った。


 心配して見ていてくれたんだ、とでも理解したかのように。


 断片的な記憶がつぎはぎになって流れ込んできた。


 血と汗と涙。それらの敗北の象徴を胸に逃走を駆け巡る。抱えたスイレンは息が絶え絶えとなり、クラウン自身は全身から悲鳴を上げる。


 そんなクラウンの背後には、彼が助けられなかった幼馴染のルミと村人たちが倒れ、憧れたフォルラが冷徹な視線を向ける。


 死ぬ!そう思った直後――


「うっ!?」


 クラウンは勢いよく跳ね起きた。


「ここは?」


「革命軍の拠点だよ」


「何でミロットさん達まで?」


「私たちの任務は、2人のフォローだからね」


「フォロー?」


「そうだよ。大体、西方担当の革命軍が仕留められない貴族を、君たち二人で仕留められるわけないでしょ?」


「……捨て石にされたってことですか?」


「だったら私たちはここにいないよ。今回の任務はあくまで本部からの命令に従ったという体裁と、ヴェーラなりのエールじゃないかな?」


「……。」


「ヴェーラ殿は回りくどいところがあるでヤンスから、もしかしたらそうだったかもしれないでヤンスね。ちなみに、娼館にいた奴隷たちは解放したでヤンス」


「そう、ですか」


「それで?なんでまだこんなところにいるのさ。ノッチまで連れて。」


「これからクラウンとノッチには別の任務に就いてもらうからだよ」


「ノッチと?」


 スイレンの表情は少し訝しんだように歪んだ。


「そうでヤンス!実はこの頃、不自然な待ち伏せや先回りされることが多いでヤンス。そこで調査をすることになったのでヤンス」


「私がクラウンの村に行った時もそうだったけど、わざわざナンバーズまで派遣してくるなんて、明らかに皇国側が土地神がいることを確信している証拠だよ。」


「あのぅ、なぜそれが不自然なんですか?皇国が土地神様がいることを知ることは普通なんじゃ?だってその土地のシンボルみたいなものじゃないですか?」


「国民にとってはね。でも、皇国からすればそんなものに興味はないんだよ。居るかもわからない土地神に投資するより、わかりやすい搾取対象から1円でも多く搾り取るほうがよっぽど簡単だからね。そんな彼らが、兵もロクに派遣せずいきなりナンバーズを送って来た。これは明らかに異常事態だと思ってね。ボスに報告したら、どうやら本部もその件については連絡を取り合っていたみたいで、今回本部と合同で調査することになったってわけ」


 クラウンは知る由もなかったが、土地神とは本来、人の目に触れる存在ではない。星のエネルギーが噴き出る穴を守り、各地へ届けることが彼らの使命であり、その居場所を晒すことは穴の位置を公言するに等しい。だからこそ彼らは、星に害を及ぼすものを排除する時以外は、静かにこの星を見守り続けるのだ。


「その人達はいつ来るんですか?」


「そろそろ来ると思うけど」


 ドアが開いた。

 先頭に立つ男は、肩から無造作に羽織ったマントを翻しながら部屋に入ると、品定めするように室内を見渡した。


 無骨なベルトと踵の厚いブーツ、それでいて全体から滲み出る粗野な色気が、この男がただの革命軍員でないことを物語っていた。


 男は納得したように不敵に笑ったあと、すぐさまその視線はクラウンへ向けられた。靴の先から頭部まで一通り眺め回すと、あざ笑うかのような笑みを浮かべた。


 その後ろに続く二人のうち、一人は女性と見紛うほど整った顔立ちの青年。


 もう一人は――仕立ての良い深色のジャケットに、細身のパンツ。余計な装飾を一切省いた、静かな威圧感のある装いを纏った女性。


 先頭の男が口を開いた。


「よぉ、待たせたな。哀れで惨めな分家さんよ。」

お読み頂き、ありがとうございます。


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