表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憧れの『英雄』に殺されかけたので。命を救ってくれた人殺しに拾われて、僕は革命軍として復讐を誓います  作者: 日影 聖真


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/23

第20話:不気味な刃

 逃げるべきだったのかもしれない。

 初潜入かつ初任務のクラウンにとって、ターゲットの息子たるシナモンとの接触は、あまりにもリスクが高すぎた。


 しかし、クラウンの中に撤退の選択肢はなかった。

 それは若さ故の驕り――自分なら何とかできるという根拠のない自信であると同時に、ヘインドルという老練の男に対する好奇心と違和感が、撤退という選択肢を完全に失念させていた。


 第一、この状況はリスクであると同時にチャンスでもあった。

 ターゲットの息子であるシナモンの近くに入り込めば、暗殺のチャンスは跳ね上がる。


 クラウンは静かに息を吐き出し、自分がやるべき事を再確認する。

(まずは、シナモンに実力を見せつけ指南役として認めてもらうこと。でなければ、潜入も元も子もない)


 スイレンの作戦通りに動くには、これしかなかった。

 本来の作戦とは大分異なるが、潜入する方法が他に思いつかないクラウンは、本気で刀を握りしめる。


「では、模擬戦。始めてください」


 ヘインドルの号令が鳴り、各々武器を構え、真剣勝負の火蓋が切られた。

 しかし、クラウンは舐めていた。


『本気で勝ちにいく』とは決めていたものの、たかが商家のお坊ちゃまと、山で修行を積んだ自分とではあまりに実力がかけ離れていると。


 武器を集中的に攻撃すれば、傷付けずに圧勝できる。クラウンのそんな軽薄な考えから生まれた、本来の構えから崩した形に、シナモンは容赦ない一撃を食らわせる。


「っ!?」


 一瞬の出来事だった。咄嗟に首を守らなければ、間違いなく首が落ちていた。

 それほどの速度と威力が、剣戟を通して伝わってくる。


 クラウンは思わず「ヤバい!」と体勢を整えようとするが、続けざまに連撃を打ち込むシナモンの前に一方的になっていた。


 見誤った……。クラウンは自分の未熟さを呪ったが、未だに理解できていなかった。

 ありえない。


 内心、この一言が一番の衝撃として現在進行形で駆け巡っていた。

 クラウンとてそれなりの剣術家である。だからこそフォルラと多少なりとも渡り合い、ヘインドルのお眼鏡にかなった。


 一定の剣術を修めた者は、普段の身のこなしにも現れるものだ。フォルラは言わずもがな。老戦士であるヘインドルであっても、立ち振る舞いを見れば一発でわかる。


 しかし、シナモンにはそれがなかった。

 武を修めた者特有の俊敏性も、姿勢の安定性もないこの男が、なぜ強い? クラウンの衝撃は、剣術を真摯にこなした者ゆえの油断から来るものであった。


 シナプスが走った。

 未来視が発動する時に起きるあの衝動が、クラウンに駆け巡る。


 それは、シナモンの連撃をさばけず斬り殺される自分の姿であった。

 クラウンは上段から斬りつける刃をギリギリで躱し、逆にカウンターで斬り伏せにかかった。


「あっぶな!」


 死を体験したクラウンの心拍数が上がるのに対し、シナモンは余裕を感じる声色であっさりと躱した。


 どちらが稽古をつけているのか、はたから見ればわからなかっただろう。

 それほどまでにシナモンは高みにいた。


 相手が貴族の息子、雇い主。そんな事を忘れてしまうほど、本気でカウンターを打ちにいくほどに、本当に危なかったのだ。


「残念。絶対勝ったと思ったのに」


 へらへらと無駄話に興ずるシナモンとは対照的に、クラウンの息遣いは本気になっていた。

 クラウンは深呼吸をし、やるべき事を修正し整理する。


 (さすがに殺すわけにはいかない。だから寸止め、あるいは峰打ちが望ましい。でも、そんなことで勝てるの?……勝てるわけがない)

 

 






お読み頂き、ありがとうございます。


▼漫画版はこちら(LINEマンガ インディーズ)


https://manga.line.me/indies/product/detail?id=19465


※漫画版はストーリーに独自のアレンジが加わっているので、小説版との違いもあわせて楽しんでいただければ幸いです!


この作品を『おもしろかった』『続きが気になる』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ