第2話:出発と、死を告げる爆音
---
出発
数時間後、土地神を祀る社から下山したクラウンとルミは、まるで英雄の出立の如く、村人たちに盛大に見送られた。
正確にいえば、主役はクラウンではなくルミの方だ。とはいえ、高齢化が進む村にとって、村人は皆家族同然。村から誰かが出るというだけで、それはそれは一大事であった。
だが、今回の旅立ちは少し勝手が違う。
何しろ、村を出る理由が「皇都で騎士を目指す」というのだから。
ルミは村人たちから干し芋やお守りを次々と手渡されると、いよいよ大きな夢を抱いて旅路に就いた。
「そういえばさ、クラウンは騎士の中だと誰が好きなの?」
村長が用意してくれた馬車の中で一息つくと、ルミは静かに問いかける。
「そうだね、騎士だったらみんな好きだけど………。やっぱりフォルラさんかな!」
ルミの問いに、クラウンはほんの一瞬、言葉に詰まった。
脳裏に、古い記憶に存在する、クラウンが騎士に憧れるきっかけになった人物――最も尊敬する、あの影がよぎったからだ。
その背中はあまりに遠く、あまりに神聖で、もう憧れの対象として口にするには、少し重すぎた。
だが、それはかつての憧れだ。クラウンは小さく首を横に振って、その影を振り払う。そして、目の前にある眩しい光の方へと意識を向けた。
「フォルラさんって、辺境出身の?」
「そう!綺麗でカッコよくて辺境出身の英雄!しかも、ナンバーズ!カッコいいよねー!」
地方出身者にとって、皇国軍人という肩書きは一種のステータスだ。ナンバーズに君臨する者たちは、英雄的な存在と言っても差し支えない。
「じゃあ、クラウンの憧れなんだ。」
「そうだね。」
優しく問いかけるルミに、クラウンは満面の笑みで答えた。
その時、「ドーン!」と、故郷の村の方から爆音が響いた。
クラウンの頭蓋骨を、灼熱の杭が貫いた。激痛とともに、無残な光景が流れ込んできたのだ。
つい先ほど僕たちを笑顔で見送ってくれた村人たちが、血飛沫の中で、次々と、意味もなく惨殺されている映像。クラウンは顔面を蒼白にして叫んだ。
「なんだ、今のは……」
「クラウン、大丈夫?」
青ざめた様子のクラウンを、ルミは心配そうに見つめる。
しかし、脳裏に浮かんだ悲惨な光景に、クラウンはいてもたってもいられなくなり、ただ衝動に突き動かされて故郷の村へと走り出した。
「え、クラウン。どうしたの?」
ルミは困惑しながらも、クラウンの後を追った。




