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怪晴  作者: ナマケルモノ
1/1

EP0記憶の中

蝉の鳴く聲が遠くに聞こえる。

夢だ...これは夢だ。夢だとわかるこれを、なんていうんだったか。



薄暗くも、どこか懐かしい、夏の終わりのような空気。

古びた木造の部屋、畳の香り、障子の外に揺れる夕陽の赤。

ギシギシなる足音。父に手を引かれる。

古いが手入れをされた畳部屋。木でできた牢屋。

小さなちゃぶ台を挟んで、ひとりの子どもが座っている。

和服に身を包み、長い髪、笑ったような顔。けれど、どこか透明で、触れられない存在。

「だれ?貴方?」


「あそぼ。」


「私はここから出られないの。」


「……もう、いっちゃうの?」


子どもは問いかける。けれど、その声は空気を震わせる音ではなく、頭の中に直接響いてくる。


「きみがいなくなったら、また……ひとりになるのかな」


子どもの目が、すこしだけ揺れる。悲しみとも、寂しさとも、言えない何か。


「きみは、ぼくを……さいごちゃんと見れてた?」


……どうして、その問いが胸に突き刺さるのだろう。


君はなにも言えない。ただ、この場所が終わってしまう予感だけが、確かにある。


ふと、子どもが微笑む。


「じゃあ、さいごに――」


その瞬間、君の頭上から、奇妙な声が響く。


「……カァァ……」


鳥のような、風のような、何かの鳴き声。

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