第一章:「美の楽園のはずだった」4. エグゼの記憶とバロック・コードの手がかり
秩序なき違法区域《バベルの路地》。リリアナが美を狂気的に追求する者たちから得た答えとは
リリア・ヴァレンティヌス(17) – 失われた”美”を探す少女。記録能力を持つ義眼を持つ。
エグゼ(年齢不詳) – 電脳建築士AI。皮肉屋だが記憶を失っている。
全17話
ゼノンのアトリエの奥には、“失われたデータ”の記録庫があった。
エグゼはそこに近づき、ゆっくりとデータに触れた。
——次の瞬間、彼の瞳が光を帯びた。
「……思い出した」
リリアは息を呑んだ。
「バロック・コード。それは——」
「ただのデータではない」
エグゼは静かに続けた。
「それは、この世界がまだ“美”を知っていた頃の、人々の記憶そのものだ」
リリアは目を見開いた。
「記憶……?」
「そうだ。バロック・コードは、単なる芸術データではない。この世界が、かつて美をどう感じていたか。その記録そのものだ」
「じゃあ、それを見つければ——」
「——世界は、美を取り戻せるかもしれない」
ゼノンが、満足げに笑った。
「ならば行くがいい。だが、覚えておけ」
ゼノンはリリアの髪を指で梳きながら、囁くように言った。
「“本物の美”を知るには、お前自身が変わらなければならない」
リリアは、ゼノンの瞳を真正面から見据えた。
「……私は、私のままで“美”を見つける」
その言葉が、正しいのかどうかは分からない。
だが、彼女の旅は次の段階へと進む。
バロック・コードの手がかりを求め、彼女は次の地——《仮面の都》へ向かう。
ついに《バロック・コード》の正体が明かされる。それはただのデータではなく、"美の記憶"そのもの。次の舞台、《仮面の都》へ——。