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怪物満堂

2008年 蔵部町

「お、オヤジ・・・」小原一家の構成員達は固まった。自分達のボスである星山組長が組み伏せられているのだ。「星山、貴様の首、取ってやる!」と上にのしかかりながら星山の首筋にドスを当てているのは白髪の老人だ。その形相は恐ろしく、武闘派の小原一家の構成員でさえもしり込みしてしまう様子だ。

 「まさか・・・あんた・・・満堂か?」と星山はうめきながら老人に問う。すると老人は気持ち悪い笑みを浮かべてそれにこたえる。「ふん、そのまさかさ!」


 満堂は特殊な経歴を持っているため、裏社会では有名だ。

 右翼思想を掲げる家族のもとで育った彼は幼少期から戦争を想定した訓練を受け、そのまま両親が幹部を務める右翼の過激派団体「護国連隊」に加入。

 満堂加入直後、外国人排斥を掲げた護国連隊は韓国街の支配に動くコリアンマフィア「四蛇乱会」に抗争を仕掛ける。しかし四蛇乱会は武闘派として知られている組織であり、護国連隊の規模と装備では歯が立たなかった。組織を率いていた満堂の両親は死亡し、他の幹部も死亡するか病院送りとなった。その結果、数少ない生き残りの中で最も強い満堂が無力化された幹部達の代わりに壊滅寸前の組織を率いた。その原動力は両親を殺された怒りだ。だが組織は壊滅寸前。このままいけば護国連隊は四蛇乱会に敗北を喫する筈であった。

 だがそこに救世主が現れる。韓国街の利権を狙う新興勢力の善輪会三次団体大北組だ。大北組は護国連隊のケツ持ちとなり、それは満堂達に希望を与えた。満堂は大北組から支給された米軍横流しの武器を用いて敵の本拠地に単身乗り込み、四蛇乱会の上層幹部の過半数を殺害した。指揮命令系統を失った四蛇乱会は自然消滅し、大北組は韓国街を手に入れた。

 そのことにより大北組が善輪会二次団体に昇格。組長の大北は韓国街での抗争の功労者を満堂とし、満堂を大北組に迎え入れた・・・というわけだ。


 戦時中の軍人と同等レベルの武力と智力を有した満堂と地下格闘技選手上がりの星山では満堂のほうが圧倒的に強い。「くそ・・・」星山は死を覚悟する。

 そのとき、いきなりエンジン音がして満堂が吹き飛ばされる。「星山さんに触れるんじゃねえ!くそジジイが!」と叫ぶのは米田組傘下の暴走族烈火隊のボスである中村だ。彼は二人の構成員と共に満堂をバイクで跳ね飛ばしたのだ。

 「けっ、ガキどもが。」満堂ははね飛ばされてもなお、起き上がった。「星山さんよお、卑怯な手使わねで堂々とやりやしょうや。」そう言って満堂はドスを取り出す。

 星山はそれを見て拳を固めた。死ぬかもしれねないが、最期まで抵抗してやろう。「助かったぜ中村!おいてめえら全員中の奴らを無力化して来い!俺はこの化け物を・・・始末する。」


同時刻 黄弁町

 「そうですか・・・韮澤本部長、報告有難う御座います。」そう言って善輪会理事長兼二次団体金山組組長の穂村は受話器を置いた。そして溜息をつく。「どうしやした、オヤジ?」と控えていた金山組若頭補佐の松下が問う。「私は出来れば避けたいと思っていましたが・・・始まりましたよ。鬼斬鉄拳会の件に続く身内同士の殺し合いが。原山太闘会系米田組傘下小原一家と大北組傘下鯨蘭会が抗争を開始しました。鯨蘭会が小原一家のシマ内に許可なくぼったくり店を出しました。しかもその店の建物はつい先日まで引退した小原総長が経営する店が入っていた筈です。不審に思った小原一家が鯨蘭会を訪問し・・・激しい抗争が今繰り広げられています。」「オヤジ、抗争になったってことは鯨蘭会は確信犯ですよね。ってことは・・・」「ええ・・・悲しいことですが、小原前総長はもう・・・」そう言って穂村は悲しげな表情を浮かべる。もとはと言えば金山組傘下にあった小原一家。自身よりも年上であるにも関わらず自身のことを「親」として受け入れ、金山組のためなら命を惜しまなかった小原の死。穂村にとっては悲しい出来事であった。


10分後

 「くそ!足が・・・」星山は治ったばかりの足に無理やり力を入れようとするが、立てない。それを見て満堂が大笑いする。「フハハハハ、どうやら足に力が入らんようだな。治りかけの足に私の蹴りがきいたかな。さあて・・・」そう言いながら満堂はドスを振りかざす。「ここで死んでもらおうか、星山さん。」

 なにも出来ない星山に対し、満堂がドスを構える。星山はそれには動じずに顔を正面に向けて満堂を睨む。「山城の兄貴、そっちへいきます。」「ほう・・・覚悟が決まった極道らしい顔じゃねえか。いい死に際だぜ。」にやりと笑ってドスを振り下ろす満堂。

 が、何故か満堂の身体が吹き飛ぶ。「ふん、俺はな自分のためじゃなく組織のために戦ってんだよ!死ぬとしてもジジイ、あんたを道連れにしてやるよ。」「くそ・・・いきなりチャカなんか使いやがって!だがなあ・・・俺は・・・死んじゃあいねえぜ。」そう言うと弾丸の威力で吹き飛ばされた満堂は立ち上がる。「くそ!防弾チョッキかよ!」「そうさ。さあ、遊びはおしめえだぜ若造。」そう言いながら満堂は腰からもう一本ドスを抜くと星山めがけて走り寄る。そして一瞬で星山の目前にせまる。

 「うっ!」間一髪でドスを避けた星山は転がりながら自身もドスを抜いた。「おいおい、まだ抵抗する気か?」そう言いながら満堂は星山の側頭部を蹴り飛ばす。「うっ!」星山は全身を貫く激痛にもだえ、転がった。そして完全に立つことが出来なくなる。「ふん、名高かった星山泰全もあっけない最期だな。」そう言って再びドスを構えながら近づいてくる満堂。そして遂に星山の首筋めがけてドスを振り上げ・・・その動きを止める。「無駄な抵抗をしやがって・・・」

 満堂の片足にはドスが突き刺さる。それは満堂の穿いている足袋、足を貫通し、地面に突き刺さっていた。「くそ!」満堂が足の激痛に耐えながらも足を引き抜いている隙に星山は震える片手でピストルの照準を満堂の顔に合わせ、引き金を引いた。

 脳漿が飛び散り、満堂は倒れた。

 それから組員は駆けつけるまでの間、星山はその場に倒れていた。



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