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ケツ持ち候補

2006年 獄界町

 「なるほどなあ・・・藤堂は殺されたか。」と米田組長はあごを撫でて考える。「へい。」と答えるのは米田組若頭星山泰全だ。「奴は経済力はあるが裏社会においては一介の売人にすぎんのだろ?」「へい。笹山さんからの情報だと父親の七光りで桜零街の裏社会に食い込んでいるとか。」「自称暴走族長らしいが?」「まあ・・・確かにチンピラどもとバイクに乗ることがあるようですがね、野郎の基盤は全部金ですぜ。チンピラも金で雇ってるにすぎねえ。」「じゃあ魔瑠狗須のケツ持ちとしては弱いな。」「へえ、そうっすね。そして恐らく藤堂はケツ持ちの連中が放った殺し屋に殺されてる。ただ藤堂はヤクを八天黄会から買ったようですがね。」「八天黄会か・・・奴らなら権力もあるが・・・魔瑠狗須のケツ持ちだったとしても関係がバレたらサツに叩き潰されるぜ。」「まあそれもそうですが・・・どうしやしょう?」「う~ん・・・」米田は数分考え込む。

 そして結論を出す。「仕方ねえ・・・反応を見るしかねえ。」「反応?」「ああ・・・八天黄会とそれから天城会とそれぞれ会談する。お前にもついてきてもらうから腹くくっとけよ。」


4日後 東京 中華街

 「よし、待ってろ。」星山は運転手の有馬に命じると車を降りて目の前の中華料理屋に入る。

 星山も彼の付き添いの舎弟胡桃も緊張している。

 八天黄会は巨大な中国マフィアで、米田組属する善輪会とは過去に抗争をしたこともある。現在は抗争こそ起こしていないものの両組織はにらみ合う状態であり決して良好な関係とは言えない。

 「おお・・・来たか。」中では八天黄会の幹部陣と向かい合って座る米田組長と組長付きの組員長瀬と土井がいた。

 「俺らも時間がねえんですがねえ。」と口を開くのは八天黄会のトップ2「龍位」の一人である丁だ。今回は彼と下部組織「水天」ボス周、「炎天」ボス猛とその護衛が出席している。

 「時間がない中申し訳ない。だが・・・あんたがたにとってどうでもいいことでも俺らにとっては大事なことなんでねえ。」と星山は少し丁を睨みつける。「ああ、分かった分かった。とりあえず要件を聞こう。」と丁は面倒くさそうな反応をする。

 「じゃあ早速・・・」と米田が身を乗り出して凄みのある声で言う。「半グレ組織魔瑠狗須の連中が最近獄界町を荒らしてる。」「ほう?それがどうした?魔瑠狗須の連中に聞いてくれ。」「だが・・・奴らは藤堂という男からヤクを買ってシマ内に流してる。」と星山はテーブルを叩きながら言う。だが対する周は冷静だ。「藤堂?」「知ってるだろ?あんたらの顧客の売人だ。何者かに殺されたがな。」と胡桃。

 「ああ・・・あいつか。確かに奴にはヤクを売ってるぜ。残念ながら俺らは客がヤクを誰に流すかまでは決めれねえんでな。奴が殺されたから怒りが他のところに向かうのは理解できますがね、俺らに言われても困りますなあ。」

 「単刀直入に聞こう。」と数分無言で睨みあったあと星山が口を開く。「あんたらが魔瑠狗須のケツ持ちをし、さらには口封じのために藤堂を殺したってことはねえか?」「いいや、そんなことせんよ。」と猛。「藤堂は確かに気にくわない奴だったが我々の大切な取引相手でもあるからな。奴を殺したら我々のヤクの供給先を一つ潰すことになる。」「ああ、猛の言うとおりだ。奴が殺されたせいで我々は今余ったブツを売る先に困ってるんだ。あんたら善輪会のほうで買ってくれねえか?」とイライラさせるにやけ顔を浮かべながら丁が言った。「お断りだな。」と冷たく言い放つと米田が立ち上がって出て行く。


 「兄貴、俺は奴らはヤクを供給した責任を除いて今回の件には関与してねえと思いますぜ。」と車に乗り込んだ途端胡桃が口を開いた。

 「俺もそう思うぜ胡桃。奴らの言う通り藤堂を殺すことは奴らにとって利益にならねえ。確かにうちのシマ内にヤクを流してるのは魔瑠狗須だが藤堂が奴らにヤクを売っていた。つまり八天黄会は藤堂がいなけりゃ魔瑠狗須にヤクを売れない。」「なるほど・・・とすると別の組織がけつ持ってヤクを魔瑠狗須に売っている?」「可能性もあるな。だが笹山さんの持っている情報では魔瑠狗須の取引相手は藤堂だ。」「じゃあ魔瑠狗須は何を・・・」「ヤクは手段にすぎねえかもしれねえな。」と突然思いついた考えを星山は言ってみた。「ヤクは俺らのシマを汚すための手段で、奴らの真の目的はその先にあるかもしれねえ。」「というと?」「奴らの目的は恐らく・・・俺らのシマを乗っ取ることだな。」と暗い顔で星山は推理を述べる。


 翌日 銘游町 

 昨日に引き続き今日も会合が予定されている。

 八天黄会の連中との会談に出席したメンバーで今は銘游町を支配する天城会と対峙している。

 天城会は八天黄会の同盟者であり、ヤクも買っている極道組織だ。そしてそのヤク売買をシノギの一つにしていることで極道界隈では悪名が高い。

 「あんたらの聞きてえことは分かりますぜ。」と言ってヤンキーのような見た目の天城会木田会長が新聞を放り投げるように机の上に置く。そこには藤堂殺害についての記事が載っていた。

 「ご理解いただき感謝しますぜ。話が早い。あんたらの仕業ですかな?」「随分遠慮ねえな米田さん。だけど俺らじゃねえっすよ。」と天城会統括本部長の大塚。「そうっすか。俺らはねえ・・藤堂の取引相手魔瑠狗須にシマを荒らされていてねえ。奴らのケツ持ちが藤堂を口封じのために消したと考えているんですがねえ・・・」と星山が圧をかける。「そうっすかい?でそのケツ持ちが俺らだと?」と木田。「まあ・・・そう疑ってはいる。」と米田。「俺らを舐めすぎだぜぇ。俺らはよそのシマにヤクを流すようなことには関与しねえよ。そちらさんとは喧嘩したこともあったが今はいい関係じゃねえですか?」と言う大塚は真顔だ。

 「なるほど。あんたらの主張は分かった。」と言って立つ米田を見て星山は思う。(多分親父は天城会の連中は白とみなしたな。)そして星山も同じ感覚であった。


三日後

 「ふう・・・ガキを殴っても気持ちよくねえな。」星山はパトロールから戻ると手に付いたチンピラの血を拭く。

 今日も魔瑠狗須の傘下の高校生不良グループを見つけてボコしたところだ。不良グループは総動員されているようだ。奴らは皆魔瑠狗須から渡されたヤクを売っていた。魔瑠狗須は藤堂から買った分の全部のヤクは売りつくすらしい。

 「くそがよお・・・」とソファに座った星山は胡桃が付けたテレビを見ている。

 テレビではニュースをやっていた。「では次のニュースです・・・あ、待って下さい!速報が入りました。」とニュースキャスターが渡された資料に目を通し、一瞬目を見開く。

 「なんだ?」と星山はつぶやいて何気ない様子で画面を見ていたが驚愕することになる。「20分前のことです!東京行政官の林田氏が銃撃を受けました。犯人は林田氏が行政府前で車から降りるタイミングで立体駐車場から銃撃したようです。警察の発表によりますと犯人は捕まっていません。また林田氏は銃弾を頭に受けて先ほど死亡が確認され・・・」

 「兄貴、これって・・・」と胡桃。「ああ、俺らが林田を操っていることを掴んで敵対勢力が殺しやがったに違いねえ。」と星山は言って顔を引き締めた。本格的に魔瑠狗須を粛清したほうがよさそうだ。

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