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けじめ

2008年 獄界町

 バンに乗り込んだ小原一家若頭皆山は運転手「土郷通りへ迎え」と命じる。その後ろに複数台のバンとバイクが続く。

 土郷通りは東京と神奈川の間に位置する細い通りだ。隣に中華街があることもあり、中国人向けの店やアパートが並ぶ。

 だが中華街が出来る前の面影も残っている。個人経営・家族経営・小企業の工場の名残が見られる。大半は廃工場で、ほんのわずかしか稼働しているものはない。

 皆山達がターゲットにしている塗装工場も表向きは稼働している。だがその所有者は現在は半グレ集団閻魔爛弩の幹部相馬の所有物となっている。彼は塗装ではなく武器の保管庫兼自身と側近の拠点として工場を利用していた。皆山率いる襲撃部隊は倉庫を襲撃し、相馬の身柄を確保することが目的だ。


40分後 土郷通り

 相馬は手下から報告を受けていた。「善竜会に頼まれていた追加の弾丸、確認しました。」「よし!明日徳川町の久我組を通じて善竜会に武器を流すぞ!」「承知しやした。」「ああ、それと・・・」「へい。」「運び屋の業者を手配しておけ。」「いつもの連中で良いですか?」「ああ。奴らは金さえ払えば絶対裏切らねえからな。あいつらに運ばせろ。久我組の連中には俺からナシ通してある。」

 そのとき、入り口のほうで怒号と銃声が響き渡る。「くそ!ボス、ヤクザ連中だ!」だが相馬は冷静に笑う。「そうか・・・随分早くお出ましだな。まあいい・・・善竜会の奴らに恩を売れるからな。」そう言うと相馬は机の引き出しからハンドガンを2丁取り出した。


 「おりゃあ!」皆山は鉄バットを振り上げ、半グレを2名気絶させた。そのとき、「皆山さんあぶねえ!」という声がした。それと同時、ナイフを突き出して皆川にせまっていた半グレの頭部が吹き飛ぶ。「お、おう!蝶野さん、すまねえな。」そう皆川が声をかけたのは米田組からの応援要員である蝶野だ。

 工場内で大乱闘が行われていた。怒号と銃声が飛び交い、血が飛び散り、床にはいくつかの死体がある。

 その様子を見ながらゆっくりと歩み寄ってくるのは相馬だ。相馬は銃の扱いがうまく、すぐに小原一家構成員二人の脳天を撃ち抜いた。

 皆山がそれを発見した。「相馬だ!奴を捉えろ!殺すんじゃねえぞ!」その号令に従い、組員達は相馬に押し寄せる。しかしすぐに血しぶきが上がる。相馬は大笑いしていた。「てめえら、殺す気でかかってこねえから始末が楽勝なんだよ!」血にまみれた狂気的な笑顔が相馬の異常な性格を表していた。

 「くそ!このままじゃ・・・」そう言った皆山の足に弾丸が刺さる。「くそ!」「大丈夫っすか!」慌てて部下が駆け寄ってくる。「大丈夫だ。だが・・・」そう言った途端、部下の頭部が吹き飛んだ。「あんたが司令塔だな!」相馬は間に立ちふさがる組員達を撃ちながら皆山目指して進んできていた。

 「くそ!」皆山はピストルを取り出すと相馬の下の地面を撃った。アスファルトが飛び取る。だが相馬は意に介さず、少しづつ距離を縮めてきている。「おっさん、そんなのただの時間稼ぎにすぎねえぞ?」「くそ!」皆山は焦って銃を撃つが、相馬には当たらない。相馬は後退する皆山に対し、確実に近づいてきている。

 「やはり狂気の銃器マニアだな・・・作戦を練らねえと。」と皆山は呟き、物陰に飛び込んで考え始める。


 相馬が裏社会に入るきっかけとなったのは銃器であった。田舎の猟友会に入って猟銃を使っている祖父の影響が大きかったが、やがて対人の武器にも興味を持つようになる。

 だが武器に対する興味の深さにより、学生時代は孤独であった。武器以外の興味がなく、同級生と話が合わなかったのだ。彼はいじめの標的になってしまう。いじめを主導していたのは暴走族の兄とヤクザの父親を持つという噂の不良で、取り巻きも多い。彼等は暴力の他物を隠す、靴に画びょうを入れるといった陰湿ないじめを行った。

 その結果相馬は壊れてしまった。彼は武器の研究を進めていく中で構造を学んだ銃について自作し、それでいじめ首謀者を撃ち殺してしまった。

 この事件によって少年院に入ることになった相馬であるが、そこで彼の人生を決定づける存在と出会う。それが後に巨大半グレ集団閻魔爛弩の首領となる梅田だ。身体が弱い相馬を見下す他の不良少年と違い、梅田は相馬の類まれなる銃の才能を認めてくれたのだ。その経験から相馬は梅田について行くことを決意した・・・

 というのが皆山が情報屋笹山から得た相馬に関する情報だ。


 「奴は体力があまり無え。肉弾戦にもっていけばもしかしたら・・・」と皆山は考えを巡らせる。そして一つの結論に達した。「おいてめえら、地面を撃ちまくれ!」

 組員達は皆山が命令を発するときは大体なんらかの考えがあると理解していた。彼等は一斉に地面を撃つ。コンクリートが爆ぜ、埃が舞う。

 「くそ!前がよく見えねえ。」相馬は悪態をつく。「くそ、一旦撤退・・・」

 そのとき、埃が舞う中から二つの影が襲いかかってくる。相馬は二つの影に押し倒された。

 一つの影は蝶野だ。彼は相馬を地面に押させ付けている。その間にもう一つの影、皆山が相馬の手からハンドガンをもぎ取る。


5時間前 東京 安福町

 安福町は東京の下町ともいえる場所であり、比較的静かな場所だ。

 だがこの町にはこの町ならではの危険な雰囲気が漂う。ボロアパートが立ち並ぶ場所からはときたまうめき声が聞こえ、生気のない目の住民が徘徊している。しかも皆白いローブのようなものをまとっているのだ。

 彼等は皆麻薬常用者だ。彼等は」「太極宇会」というカルト教団の信者であり、教団の教えは「薬物の使用により理想世界である太極宇宙に転生できる」というものであった。

 無論これはでたらめであり、教団上層部の思惑は麻薬市場の確立であった。彼らは麻薬を教団理念の中心に位置づけ、屋内施設の畑で麻薬の原料を育てて信者に管理させている。その麻薬は信者に対して「お布施」と引き換えに渡されるほか、「太極宇宙に至る者を多くする」という名目の下で信者以外の者にも販売されている。運び屋兼売人には信者が使われている。

 そして麻薬を大量に購入する「大口顧客」も存在する。その大半は麻薬を売りさばこうとする個人ないし組織だ。

 閻魔爛弩もそのような顧客の一つだ。彼等の主なシノギは強盗タタキであったが、副業として行っていた麻薬ビジネスをより拡大させようと目論んでいるのだ。

 今、信者が大勢住むアパートの敷地内にある「集会場」で閻魔爛弩幹部の菱川と彼の手下が太極宇会の幹部と彼女に付き従う信者と向き合っていた。

 「よお!ヤクを見せてくれ。」と菱川。だが教団幹部は答える。「金が先だ。」すると後ろの信者たちが気がふれたように叫びだす。「教団の活動には金が必要だ!」「早く金を寄越せ!」

 「ふん。」菱川は肩をすくめると手下に合図した。手下は二つのスーツケースを幹部に差し出す。幹部は信者に合図してスーツケースを開けさせた。

 中には大量の金塊が詰まっていた。

 幹部はにやり、と笑うと言う。「あなた達閻魔爛弩とは良い取引が出来そうだわ。」


翌日 暗幻街

 小原一家系三堂繪が管理する倉庫で、椅子に縛り付けられた相馬と拳を固めた星山がにらみ合っていた。

 「いくら痛めつけようとあんたらによって役に立つ情報はやらねえぞ!暴力しか取り柄がねえ古くさいヤクザがよお!」との相馬の挑発に対し、「はっ!そんなことぐれえ分かってるぜ!」と言った星山は相馬の顔面を何度も殴りつけた。歯が吹き飛び、鼻が折れる。だが相馬は「フハハハハ・・・」と血を吐き出しながら笑う。星山はそれを意に介さず、電動ノコギリを作動させた。

 相馬の顔から笑みが消える。星山は相馬の手を掴み、その5本の指を全て切り落とした。それでも相馬は「この程度で俺が寝返るとでも・・・」と啖呵を切る。「だからよお、てめえからの情報が目的じゃねえってばよ。これはけじめだな。」そう言って星山は今度はバーナーを取り出した。そのバーナーで指の切り口を焼く。「出血多量ですぐ死なれては困るな。」

 星山はその後、足にも同じ処置を行うと、今度はペンチを取り出す。そのペンチで相馬の舌を引き出し、引っこ抜く。相馬は何かわめいているが舌がないため何を言っているか分からない。星山は真顔でドライバーを2本取り出すと、それを相馬の両耳に突っ込んだ。

 「ゆっくり苦しんで死ね。てめえの惨殺死体を梅田に送り付けてやるからよ。」という星山の声は低い。

 

 


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