相馬の狂気
2008 横浜中華街
今中華街の道路の真ん中ではヤクザが半グレ幹部の相馬を取り囲んでいた。「相馬、善竜会への武器供給をやめろ。それからな、シャークスに黄弁銀行を襲わせた点については金山組に補償してもらうぞ。」「あん?俺が誰と取引しようが勝手だろうがよ!」そう言うと相馬はいきなりヤクザの幹部中安を撃った。中安は弾丸を避けようとしたが、肩を貫いてしまった。「中安さん!」と駆け寄る川上に対し、相馬は容赦なくその足を撃つ。川上は「くそ!」と相馬を睨みつけながら倒れ込む。「よし、お前らやれよ。」と相馬はにやにやして言う。すると相馬の手下の半グレたちがマシンガンを乱射して取り囲んでいるヤクザ達を次々と撃つ。中安はピストルを構えるが、その手から血が噴き出す。「おいおい、とろいぜ!」そう笑うのは相馬。
「くそ!てめえら、一旦退却だ!」との中安の指示により、生き残ったヤクザは数名車に乗り込む。「くそ!逃げやがったか!」そう言って運転手の半グレが運転席に滑り込もうとするが相馬が止める。「あんなゴミども、追わなくていいぜ。どうせ善竜会がすぐ潰すんだ。」
10分後 獄界町
「何だと!大丈夫なのか?」星山は電話に出た川上に問いかける。「はい。幸い意識はあり命に別状はありません。中安の叔父貴も無事です。押坂先生の簡単な手当てのおかげでもっています。ですが、下っ端の舎弟連中が何人か・・・」そう言うと川上が声を詰まらせる。「・・・すみません、オヤジ。」「そうか・・・川上、てめえの責任じゃねえよ。舎弟を駆り出すよう指示したのは俺だ。すまなかった。」「オヤジ・・・」「俺が油断してたよ。怪我が治ってもしばらく押坂医院で休ませてもらえよ。」そう言って電話を切ると星山は少し考え込む。(相馬はただの中間幹部じゃねえ。実質的には梅田の右腕なんだろうな。奴に勝てる要素が必要だ。仕方ねえ・・・)
結果的に、彼は別のところに電話をかけるつもりらしい。「石橋さん、少しお話が・・・」
20分後
「すまねえ、笹山さん。」「ああ、いいってことよ。石橋さんは奥だよ。」
「よお、ミスター星山。俺等の武器買ってくれるっって?」と石橋の頭越しに問いかけるのはアメリカのバイカーギャングファントムガンズの日本支部長リッキーだ。「ああ。武器を買うだけだぞ。あんたらの前任者みてえに抗争に介入するんじゃねえぞ。」「分かってるぜ!でよお・・・」「待て。この場に石橋さんに同席してもらった意味、分かるだろうな。」「チッ、分かったぜ。ミスター石橋を通して武器を流せばいいんだろう?」「そうだ。うちは石橋さんを通した武器じゃねえと受け付けねえ。」「分かった分かった・・・」「石橋さん、どんな武器が?」「武器と呼べる武器はほぼある。ハンドガン、ピストル、アサルトライフル、マシンガン、手りゅう弾、ロケットランチャーもあるぜ。」「ロケットランチャーだと!?あんたら、そんなものまで持ち込んでるのかよ・・・石橋さん以外に売ってるのか?」「安心しろよミスター星山。俺等はただいざというときのために武器庫を持っているだけ。何個か余分にあるからあんたらに売るだけだぜ。」「そうか・・・マシンガン20丁とアサルトライフル5丁、手りゅう弾40個をもらう。弾丸も供給できるだけくれ。」「分かったぜ!これからよろしくな!」
笹山の店を出た星山は冷や汗をかいていた。ファントムガンズはアメリカ本国では随分凶悪な集団らしい。奴らと取引してしまった、大丈夫だろうか?
5日後 草山通り
「おう!あんたがうちの新しいサブリーダーだな?」と相馬は太田に言う。「ああ。で、あんたが最初にヤクザ連中と戦ったんだな?」「ああ。小原一家の連中だ。俺が善竜会に武器を流していること、気にいらねえみてえでよ。しかも奴ら、中華街まできやがった!」「そうか・・・副リーダーとして命じよう。まずは小原一家を潰して来い!」「了解ですボス!あんなゴミ共、すぐ片付けますぜ。」「ああ、頼む。」「その前にボス?」「ん?なんだ?」「武器の仕入れ先は中国人だけじゃねえ。他の仕入れ先からちっと連絡があってな。邪魔な連中の排除を手伝って欲しいみてえだ。」「そうか。武器の仕入れは大事だな。行ってこい!」
30分後 東京 郊外
「すまねえ。少し遅れちまった。」「おう、ミスター相馬。」そう言って相馬と握手するのはブラジル人ギャングチョッパーファイヤーの渉外係だ。「で、俺が倒せばいい連中は?」「ペルー人どもだ。俺等の商品を奪いやがった。」そう言って渉外係が指し示したところには壊れた小屋がある。何かで破壊されているようだ。「奪われたのは鉄くずか?」「家電だ。奴らは丸尾町に逃げ込みやがった!」「分かった。その馬鹿どもを俺が殺す。その代わり・・・」そう言うと相馬はいきなりナイフを片手に持ちながら渉外係に言う。「武器を値下げしてくれるな?」「わ、分かった。」
1時間後 千葉県 丸尾町
「よし、さっさと片付けちまうぞ。」そう言うと相馬は手下と共にバンから飛び降りた。
バンが停まった目の前の建物の中ではペルー人カラーギャング「ピストロー」の連中が煙草を吸っていた。「おい今誰か来なかったか?」「こんなところにか?俺等に何の用があるってんだ?用があるとしたらあの腰抜けブラジル人どもくらいだけどな。」
そのとき、ドアがめきめき音を立てて倒れた。「その腰抜けブラジル人は俺様の大切な取引相手だぜ!」相馬がそう言い、両手でピストルを構えると乱射した。その場にいたペルー人は次々と倒れていく。
「アヒャヒャハ!お前らいらなかったな。俺一人で制圧出来たぜ。」そう言いながら相馬は奥に進む。そこには口から血を吐きながらすすり泣くボスの姿があった。「やめてくれ・・・ブラジル人から盗んだものは返すし、俺はあんたの傘下につく・・・」「知ったこっちゃねえな。」そう言うと腰からナイフを抜き放つ相馬。「さてと・・・てめえを殺した証拠を持ち帰らねえとな。」「な、何をする?」「よいしょっと!」相馬はボスの腕にナイフを当てると、何と皮膚を削いだ。その皮膚を近くにいた手下に渡し、「これからは趣味だ。」と低い声で言う。「いてえ!くそ!まだ何かやるのか!?」「そうだぜえ!」そう言うと相馬はにやにやじながらボスの腹にナイフを入れる。「昔寿司屋でバイトしていた頃を思い出すな。」そう言うと腹を開いていく相馬。
彼は手下でさえ冷や汗を流す前で、ボスの腹から何かを取り出した。「まだ動いてるなあ。」そう言って彼がつかみ取ったものは、何とボスの心臓だ。
翌日 獄界町
久しぶりに星山は米田組の本拠に戻っていた。
直系組員を集めた会議が行われていたためだ。
米田組長に促され、星山は言う。「小原一家が善竜会と通じている半グレ組織閻魔爛弩の幹部相馬と交戦した。奴はチャカの精度が高い。一人でも十分強いが、優秀な手下も抱えている。だが、奴は金山組に喧嘩を売った。そして小原一家のかわいい舎弟を殺しやがった!そこでだ・・・お前たちにも協力してもらいたい。小原一家若頭皆川をトップとする特別部隊を結成したい。部隊の目標は・・・相馬の確保だ。奴に対する『お仕置き』は俺がやる。ヤクザのこわさ、身に刻んでやる。」
そう言った星山の目はギラギラと光っていた。




