表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/57

各々の闘志

2007年 西東京

 「さてと・・・そろそろ行きましょうか?」と殺し屋姉妹「示野姉妹」の長女愛奈が言うと、「そうね。あのイケメンな白人さんを殺さなきゃね。」と妹玲奈が言う。

 二人は今キャバクラにいたが、裏口から出て行く。裏口には用心棒の半グレがいたが何もいわず会釈しただけであった。この半グレは姉妹が殺し屋であるとは知らされていなかったが、このキャバクラのオーナーで自分達の雇い主でもある太田から姉妹を自由にさせるよう言われていた。

 姉妹は裏口に停めてある彼女らの2台のバイクにまたがり、目標の獄界町に向かう。愛奈が手に持つ写真には「ビィレグファミリー」の殺し屋ドニーの顔写真。


三日後 東京の中華街

 中国の城を模した風呂屋の最上階は中華街を支配する「八天黄会」の幹部が会議室として使う広間になっている。

 現在そこにいるのは、八天黄会のトップ2「龍位」である丁と倫だ。彼ら二人の前には、風呂屋の実質的なオーナーである幹部がおり二人に対して説明しているところだ。

 「部下に探らせていた横浜の件ですが、あの日本刀の殺し屋を派遣したのはヤクザだと分かりました。横浜の同志は噛んでいません。」「そうか・・・で、その黒幕は誰か分かったのか?」と倫。「善輪会系を除けば、横浜を支配している主要なヤクザは芳沢一家ですね。奴らは善輪会系を含めた他の横浜極道との会合を主導して横浜の同志との間に溝を引き起こす計画を立てました。」「なるほどな。奴らは我々の介入をよく思ってねえな。」と倫。「ええ。あの連中は異様にヤクを嫌う。ヤクザくらいじゃねえですかね、ヤクの商売を拒んでやがるの。」「ああ。しかもヤクザ連中ってのは勝手に自分らで設定した縄張りをいつも守ってやがるな。」と苦虫をかみつぶしたような顔で言うのは丁。「俺等のような新参者の参入を絶対に許さねえ古臭い連中だ。」と倫も同調する。「悔しいが、俺等を裏切りやがった半グレどもに商売を奪われている以上横浜で抗争は起こせん。」「ああ、それに横浜の同志が芳沢一家の送り込んだ殺し屋のせいで俺等に不信感を抱いてる。」「どうしたしましょうか?」それに対し、龍位は顔を見合わせてしばらく話し合ったあと幹部に命令を下す。「すまんが全ての二次団体の頭領に伝達して欲しい。臨時幹部会を開くとな。場所はこの会議室、時間は朝9時だ。」「承知致しました。」

 部下の幹部が帰ったと同時、部屋の奥の壁が突如として外れた。そこから緑色の鬼のような仮面を被り伝統衣装をまとった細身の男が現れる。それと同時、慌てたように龍位二人が深々と礼をする。「全帝様!」

 全帝は「八天黄会」全てを束ねるトップ、そして(八天黄会の主張によれば)三合会の正当な統治者であるとされるがその正体を知る者は外部の組織はおろか二次団体の幹部でさえいないという。彼と対面できるのは組織に命令を下す「龍位」2名だけだ。そしてその二人もいまだ全帝の素顔を見たことはない。

 全帝はゆっくりと二人の前に腰を下ろすと突然話し始めた。その声はボイスチェンジャーで変えてあるようだ。「今の話を聞いて思ったのだがね、半グレどもが暴れているということは逆にチャンスじゃないかな。」「チャンス・・・でございますか?」と戸惑ったように丁。「そう、チャンスだよ。今獄界町の混乱はその範囲を飛び出して善輪会全体の問題になりつつある。奴らが私たちに代わってヤクの供給元としてダスケファミリーを選んだせいでな。」「つ、つまり・・・善輪会との同盟を破棄せよとおっしゃるので?」と倫。「いやそこまでは言っていないよ。善輪会に食い込むのさ。」そう言った後、全帝は立ち上がって壁の奥の隠し部屋に消えてしまった。


3時間前

 米田組の事務所には重苦しい空気が漂っている。

 組員全員を集め、米田組長は重い口を開いた。「うちの若頭であり最強の武闘派であった星山が倒された。現在、押坂さんの下で治療中だ。これは・・・かなり大きな痛手だ。米田組の戦力が弱くなるというだけではない。あいつは・・・我々の精神的支えだ。」そう言うと米田は悲し気な顔でうつむく。組員達も頷くと泣き声も漏れてくる。

 そんな中、米田の横に立っていた勝田本部長が口を開く。(彼は小原一家と争った獄界抗争で殺し屋残浪に腕を両断されたものの凄腕の闇医者押坂によって腕を義手化していた。)「カシラを襲ったのは半グレの連中じゃねえ。危険な双子の殺し屋姉妹だ。」と同時、部屋に笹山が入ってくる。「勝手ながら星山君を押坂医院に搬送した組員に聞き取りさせてもらった。間違いねえ。星山君を殺そうとしたのは示野姉妹だ。」その声に米田組成立時からいた古参組員から驚きの声が上がる。「そうだ。あの悍ましい示野達也殺害事件の犯人とされる姉妹だ。あの女ども、事件発生後蒸発したと思ったら裏社会で殺し屋やっていたらしい。魔瑠狗須を本気を出して来たな・・・」「・・・その通りだ。富樫は我々を本気で潰そうとしてきている。恐らく私のタマも取るつもりだろうな。それもいいだろう。だがな・・・どのみち富樫にもしんでもらう。魔瑠狗須の傘下事務所を次々と潰していってもきりがねえ。族の連中、昔の後輩、部屋住み、知り合いの他組員・・・とりあえずあらゆる人脈を使って魔瑠狗須の本部を突き止めろ!今最優先するべきは富樫だ!他の幹部はとりあえず放って置け。奴を殺せば魔瑠狗須は空中分解する筈だ。」米田は覚悟を決めたように命令した。


三日前

 「そりゃあご苦労なこった。だけど、相手女だろ?俺がそんな奴ら殺しちまうぜ。」ドニーは携帯電話に向かってそう言うとぐびっとウイスキー瓶を傾ける。「日本酒はまずくていけねえな。さあて・・・少し煙草でも吸うか。その後、黒人どもを殺しにでもいくかな。」

 そう言ってベランダに出たドニーの目の前には薄汚れた屋台が並ぶ路地。今、彼は米田組の管理する安アパートの一室を借りていた。その裏手の路地は米田組傘下の的屋集団「辻屋団」が支配している。だがそれらの屋台は片付け作業に入っている。そろそろ店じまいの時間だ。

 その様子を眺めているドニーはふと視線を感じた。そして目をやると、二人の女がドニーを見ていた。かなりの美人だ。だが屋台も閉めかけているこんな路地裏に何の用だろう?

 「これ、あなたのバイク?」といきなり金髪の女が話しかけてきた。「おう、俺のバイクだ。かっけえだろ?」と少し調子に乗るドニー。「ねえ、私たち今暇してるのよ。少しツーリングしない?」と黒髪の女も話しかけてくる。「あん?てめえら、バイク持ってるんか?」「ええ、あるわよ。来て。」


 「あら、いいじゃない。でも私の方が早いようね。」金髪女はドニーの横を並走しながら挑発する。「へへ・・・生意気な日本人女め!」ドニーは笑いながら女を抜かそうとする。すると反対側に黒髪女のバイクが入る。「一番速いのは私みたいね。」「へっ!てめえらなんかよう・・・」そう言ってドニーがバイクの速度を速めようとしたところ、いきなり両側の女二人のバイクが接近してきた。「ん?」「プレゼントね。」女二人はそう言うとドニーのバイクの両側に何か取り付けて爆速で去っていく。その直後、バイクが爆発した。ドニーは空中で吹き飛ばされながら怒りの形相で去っていく示野姉妹を睨みつける。「あのクソ共・・・爆弾を取り付けやがったか!」


翌日 西東京

 「ドニーが入院しただと!」ビィレグファミリー支部長代理ピートは驚きの形相で武器屋の石橋からの電話を受けていた。「アフリカ野郎か!」「いや、多分違うな。米田組が集めた目撃証言だと、星山をころした奴らと一緒だ。」「なるほどな。で、そいつらは西東京のキャバクラにいるんだっけな?」「ああ。だが多分、情報が出回っちまった以上半グレどもが遠くに逃がしちまっただろうな。」「分かった。」

 受話器を置いたピートは近くにいた幹部に命じた。「緊急会議だ!」


 「ドニーが・・・入院だと!」「ああ。バイクに乗っている最中、バイクを爆破された。しかも女だおもにだ!」ざわめきが起こる。「ああ。厄介な奴らだ。星山を殺した奴らと同じさ。」「じゃあ、そいつらは・・・」「キャバクラにいた筈だ。キャバクラの連中と話をする必要がありそうだな。」「そう!その通りだ!だが奴らはアフリカ人と組んでる。話をする必要さえねえ。米田組との約束なんて知ったことか!かちこむぞ!」ピートがそう命令すると、構成員一同はバイクの準備を始めた。


2日後

 「遊爛堂がめちゃくちゃにされたのはてめえの責任だろうが!上納金猶予なんかしねえぞ!」富樫は部下の太田を殴りつけた。「す、すんません・・・」太田は鼻血を出しながらひざまずいていた。「とにかくだ!上納金70万、どうにかして今夜までに間に合わせろ!」「わ、わかりやした・・・」

 退室した太田は部下に体を支えられて幹部室に入室した。「太田さん!?」彼の右腕についている赤城が慌ててタオルを差し出す。ひったくるようにそれを受け取った太田は鼻血を拭うと「上納金猶予はねえそうだ。てめえら、どうにかキャバクラ分の金をこさえる方法はねえか?」と尋ねる。すると赤城が「それなら一つ・・・」と手を挙げる。「あん?言ってみろ。」「俺が調べてみたところ、小原一家の裏金を隠してある空きビルがあるそうです。元片山派の下っ端情報っす。そいつに案内させましょうか?」「そりゃあいいな。だけどそこ、護衛いやしねえか?」「向かいに小原一家の支部事務所があるみたいです。今は米田組の下で働いている愚連隊連中も詰めているとか。しかし太田さん、奴らとはいずれ激突しますからね。」「まあそれもそうだな。よし赤城、金を奪って来い!俺は・・・病院を探る。星山の息の根を止めたいからな。」

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ