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舎弟の死

2007年 アメリカ インディペンデントシティ

 公園にバイクを停めた5人の男はバイクを降りた。

 「よし、行くぞ!」一人の男の呼びかけで彼らは覆面と青色の服を身に着けた。そして目の前を見つめる。

 そこに広がるのは「黒人街」と言われている土地である。ここは元々黒人のうち貧困世帯が寄り集まる地域であったが、現在は黒人ギャングが支配する犯罪者の街となっている。

 夜中になっており、街中では怪しい取引が行われていた。麻薬の売人らしき人がやつれた顔をして身なりが汚い住人に麻薬を売り、金を受け取る。別のところでは筋肉質の用心棒が入り口を守る中に街の内外の富豪男たちが入っていく。中では目から希望の光が消えた女たちが無表情で出迎え、彼らに「奉仕」している。

 そんな真夜中でも騒がしい路地に走って来た5人の男達は叫び声を挙げながら、売人や風俗の入り口の用心棒に対していきなり銃を乱射する。彼らは血を流してうめきながら倒れる。

 だが、そのとき両側の建物から紫色の服を着た者たちと青色の服を着た者達が現れ、男5人に一斉に銃口を向けた。

 「おい、ここは・・・アラブ野郎のシマじゃねえのか。」と小さく指示役の男がつぶやく。他の4人も固まる。そのとき、周囲の男女の銃口が一斉に火を吹いた。弾丸が次々と5人に当たり、5人は倒れる。

 そのあとに人々は粛々と死体を袋に詰めた。またある者は裏社会の処理業者に処理を依頼する電話を掛ける。

 そのとき、「お前らが同盟を結んでいること、奴らは知らなかったな。」と声がして高級なスーツを身にまとった男が現れた。「ああ、そのようだな。」と言ってアラブ系ギャング「フラブ・アソシエーションズ」の「導師」が出て来た。その後ろから顔をのぞかせたのはハイチ系ギャング「デッド・ボーイズ」の幹部だ。「あの野郎、俺らのふりをしてアラビア街を襲撃しやがった!」「そうだな。奴らはしくじった。黒人街の同盟を軽視したんだ。」と言いながら高級スーツに身を包んだ男は煙草をふかし始める。「そうだな。あんたのおかげで白豪主義連中をこの街から追い出すことができそうだな。」と言い、フラブの「導師」は笑う。「ああ。白豪野郎の死体だがな、処理業者に処理させたらもったいねえ。ビィレグの元に送り付けてやるといい。」とダスケは言うと手にもっていた瓶よりウイスキーを飲みほした。


2007年 日本 東京 獄界町

 星山は闇医者押坂医院に入った。

 「ああ、星山さんだな。」と言い、医院長の押坂が出て来た。

 「桜井の容態はどうだ?先生?」「実はな・・・あまりよくない。少し話をしよう。」そう言うと押坂は自分の診察室に星山を招き入れる。

 そこで押坂は重苦しく口を開く。「桜井さんだが・・・あと数日もつか、といったところだ。手は尽くしているが・・・助かる見込みは薄いんだ。」「何!?それは本当ですか!?」「ああ、だから・・・一度米田組長にも来ていただきたい。」「・・・分かりました。」そう言って星山は俯いた。「あの、先生・・・」「どうしました?」「桜井の様子を見ても?」「構いません。」そう言って押坂は廊下に出て隣室のドアを開ける。

 米田組のヒットマン桜井は口に呼吸器を付けた状態で横たわっていた。顔は青白く、目は閉じている。「まじかよ・・・」植物状態の桜井を見て星山は崩れ落ちる。「桜井・・・くそ!」星山は拳を床に叩きつけながら絶叫した。

 そのとき、桜井の頭がわずかに動く。「!?」押坂が慌てて駆け寄り、叫ぶ。「桜井さんの意識が戻りましたぞ!」「何ですと!」

 桜井が目を見開いて星山を見つめる。「カシラ・・・」「桜井、お前・・・」星山の顔から涙が溢れる。「よかった、よかったぜ・・・」

 だがその瞬間、心電図モニターが音を上げる。と共に桜井の顔が歪む。「おい桜井!」

 押坂は慌てて内線で助手に電話する。「4号室の患者が危ない!緊急処置の準備を!」

 薄れゆく意識の中、ヒットマン桜井は自分が組入りしたときのことを覚えていた。


 桜井は元々昔から喧嘩が好きなワルであった。柔道と空手を会得していた彼はそれを喧嘩のために使い、高校時代には番長になった。

 その後彼は自衛隊に入った。体力には自信があったからだ。だが自衛隊は彼のような不良には不向きな組織であったと言える。厳しい規律に縛られた生活がストレスとなった桜井は上官を殴り倒して除隊処分を受けた。

 桜井はそれから裏社会に入った。半グレ組織「メデゥーサ」に所属するようになったのだ。桜井は所属時からメンバーに期待されていた。というのは彼の人脈を活用して自衛隊の横流し品の武器を仕入れることを桜井が提案したのだ。これによりメドゥーサは他の半グレを次々と制圧していくことが出来たのだ。さらに自衛隊の経験から武器の扱いが上手い彼は組織内でますます頭角を現し、遂にリーダーになった。

 そして出会いの夜を迎える。「俺らはヤクザよりも強いことを見せなきゃな!」そう言って彼は新興の極道組織米田組の事務所にカチコミを掛ける。当時の米田組は小さな組織であったが、精鋭がそろっていた。その中で桜井は武闘派として知られている幹部候補星山とぶつかった。「殺してやるぜ!」桜井はお得意のチャカを星山めがけて放つ。だが星山は弾丸に屈することもなく、ナイフを手に持って突っ込んでくる。弾丸によって破けた服の間から防弾チョッキが見えた。「くそ!」そう思ったときには星山が目の前に迫ってきていた。彼はナイフを桜井の足に刺した。激痛で桜井は足を突く。「兄ちゃん、俺ら極道が裏社会の頂点に立てている理由はなあ、喧嘩が強いだけじゃねえ。頭も使うんだよ。例えば常に撃たれるリスクを想定して防弾チョッキを着ておくとかな。」

 周りを見回してみたところ、大半の者がヤクザにボコボコにされていた。また何人かのメンバーは勝てる見込みがないと悟って逃げたようだった。「くそ・・・こんな場所で死にたくねえ・・・」桜井は泣き崩れた。米田組のシマを奪い、さらに組織を拡大させるつもりだったが結果は・・・自分の死だ。

 そのとき星山が言ったのだ。「裏社会の覇者になりてえならなあ、俺の舎弟になれ。てめえはなあ、喧嘩とチャカの腕前は一流みてえだな。だがそれだけじゃあ俺らのようにはなれねえ。色々教えてやるぜ。」


 星山との出会いを回想した桜井は「あんたと・・・出会えてよかったですよ・・・カシラ」とだけつぶやくと目を閉じた。そして心肺が完全に止まったのだ。

星山は崩れ落ち、桜井の遺体に抱き着いて泣いた。そして携帯電話を取り出すと米田組長にかけ、言う。「桜井が死にました。死に顔は・・・安らかです。」


3日後

 組長室で米田と星山は組員の死について語り合っていた。

 「お前が桜井を部屋住みとして自分の下につけたいといったときはな、俺も驚いたよ。うちを襲った半グレだったからな。だが、結果的にお前の判断は正しかった。奴には身の丈に合わない野望があるように見えた。だがな、桜井は自分の身の程を知れば努力する奴だ。お前の指導、そして奴の努力のおかげであいつは米田組で最も有力なヒットマンになることが出来たからな。」「ええ。あいつは心の奥では半グレ時代から任侠を理解していたのだと思います。奴が俺の舎弟になってからメデゥーサの連中と話したことがありやすが、あいつは仲間思いだったらしいですぜ。あいつは手下から上納金を徴収しなかった一方、手下のシノギの運用資金をポケットマネーから出していたとか。おかげで半グレのボスなのに奴の懐はいつも寒かったらしいですよ。」「おう、そうか・・・俺らのような反社は天国には行けねえがあいつは仁義のある奴だったから地獄では少しマシな扱いを受けていると思いてえな。ハハハハ・・・」そう言って米田組長は表情を崩した。その顔は笑っているように見えたが、涙がこぼれていた。

 そのとき、組長室にノック音がした。「おう、入れ。」と米田が言うと電話番の組員が入って来た。「笹山さんから連絡です。武器屋の石橋さんと外国人が店に来ていてカシラと話したいと。」


2時間後

 星山は舎弟の中安と共に情報屋笹山が経営するてんぷら店に足を踏み入れた。

 「久しぶりだねえ、星山君。」とカウンター席から声をかけてくる老人は米田組に武器を卸している武器屋石橋だ。「こんにちわ。どうされましたか?」席に着くと早速星山は本題に切り込んだ。「実はさ、武器の仕入れ元の一つから紹介して欲しいと言われたんだよね。」そう言うと彼は自分の隣に座る無精ひげの白人を指さす。

 その人物を見て星山は少し眉をしかめる。彼の着ているベストは最近日本に進出してきたというアメリカのバイカーギャング「ビィレグファミリー」のものだ。彼らはカルテルやマフィアのような残虐性と黒人差別で知られており日本国内の治安が悪化するのではないかと警察から睨まれている。

 その白人は口を開いて何か言った。それを石橋が翻訳して伝える。「俺はビィレグファミリー日本支部長レニーだ。あんたらのシマを荒らしているチンピラ連中はダスケファミリーと取引している。俺らとしてもダスケファミリーの勢力が拡大することを阻止したい。同盟を結ばないか?」

 

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