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獄界決戦

2007年 獄界町

 人だかりの中、米田組事務所内は騒然としていた。

 「兄貴はここから出ないように!」と言うと組長舎弟の室谷は護衛の土井と長瀬と共に銃を持って飛び出す。

 一方、幹部室からも車椅子で出て行こうとする星山を止めて舎弟の中安が飛び出した。「カシラはあぶねえからここにいて下せえ!」「だけど・・・」「いいからいて!」中安は銃を両手に握りしめて幹部室の扉の前に立ちふさがる。

 庭には多くの単車が停まっていた。敵対組織小原一家に協力する単車ギャング「誅罰グループ」だ。彼らは車から降りると各々火炎瓶や鉄パイプなどを握りしめて突撃してくる。

 「撃て!」との室谷の命令で組員達が相手を撃つ。だが火炎瓶によって木造の建物に火が付き、室谷は慌てて命じる。「いったん中へ!消化しろ!」

 その様子を少し離れて単車の中から見ているのは小原一家副総長兼若頭片山と片山の右腕とされている瀧本だ。「米田組もこれで終わりだ!そして俺は片山会を復興させてやる!俺が会長、お前が副会長だ。小原一家はサツに踏み込まれたが、こいつらギャングを傘下につければ小原一家から脱退しても片山会は再興できる。」「ええ。遂に夢がかないますね、カシラ。」「ああ。俺が金山組、そして小原一家に加入してきたのはこのためだからな。」

 そのとき、入り口が騒がしくなる。「ん?トラック!?」

 何と集まる単車に対してトラックが突っ込んで来たのだ。そしてその後から火炎瓶を投げつけながら乗り込んでくる多くのバイク。

 「くそ!あいつは・・・望野か!」トラックの運転席を見た片山が目を見開く。長らく入院していた星山の舎弟、望野が暴走族時代の仲間を引き連れて参上したのだ。さらにトラックの助手席から身を乗り出すのは同じく星山の舎弟の有馬だ。

 誅罰グループは慌てて陣形が崩れている。「チッ、あの役立たずどもめ!」と舌打ちすると瀧本は車から降りた。

 中では消化活動が行われる中、組員達が組長室と幹部室の前に固まる。何人かは火炎瓶のせいで負傷しているが、皆銃を握って厳しい表情で前を見つめる。

 組長室の中では米田組長がマシンガンを握ってひたすら扉の方を見つめている。いざとなれば自分が死ぬことになっても敵にダメージを与える所存だ。

 幹部室の中に中安が入った。「カシラ、大丈夫・・・え?」何と幹部室の中に星山の姿はなかった。車椅子だけが残っており、窓は空いている。

 瀧本が混乱する誅罰グループをまとめようと動き出した時、そこにタックルする影があった。「おいてめえ!ここがお前の墓場だ!」それは何と直立する米田組若頭星山だ。「ほ・・・し・・・や・・・ま・・」「そうだ!俺はなあ、組員達のおかげでたっぷりリハビリできたぜ。」そう言うと星山は突然瀧本の頬にパンチを繰り出す。「いてえなコラ!」そう言うと瀧本は星山の顔に交互にパンチを繰り出す。星山は鼻血を流しながらも瀧本を睨みつけ、そして前に飛び出した!両手で瀧本の顎を掴み、頭突きを食らわせる。「ハハハ・・・」そう笑う瀧本も鼻血を流す。そして二人は取っ組み合いを始めた。

 一方、入り口付近では誅罰グループが望野が呼び寄せた烈火隊を次々と倒していた。だが烈火隊の連中は傷だらけの体で立ち上がり、何度も抵抗した。それを誅罰グループは嘲笑い、鉄パイプで殴っていく。

 だが火が付いた建物の中から米田組組員達が飛び出し、誅罰グループの背後からピストルを撃ちこむ。

 その間にも星山と瀧本のステゴロ勝負は続いていた。二人は顔中から血を流しながら殴り合う。

 「くそ・・・星山の野郎、なかなか固いな。」と車内にいた片山はダッシュボードからピストルを取り出し、こっそりと車外に出た。瀧本を地面に叩きつめる星山の背中がそこから見えた。

 瀧本は立ち上がり、星山の顔に思いっきりパンチを叩き込む。星山がうめいた。血が目に入り、よく前が見えない。

 それと同時、片山が星山の背中を撃つ。

 星山は衝撃を感じ、倒れる。「瀧本、大丈夫か!」片山は蹲る瀧本に駆け寄る。「ええ、それより・・・星山を殺しちまってください。」「ああ、そうだな。」そう言って片山は倒れる星山の頭にピストルを向け・・・頭を吹き飛ばされて倒れた。「え?」唖然とする瀧本の前で星山は起き上がる。「胴体を特注防弾福で巻いおいてよかったぜ!」そう言うと星山は立ち上がりかけた瀧本の頭に弾丸を撃ち込んだ。

 誅罰グループは撤退を始めていた。「やってられるか!」彼らが単車に乗り込んだ時、サイレンが響いて門をくぐって警察の装甲車が侵入してきた。そして機動隊がそこから下りてくる。その後ろのパトカーから下りて来たマル暴の富山が叫ぶ。「全員その場を動くな!」

 その声を遠目に聞きながら星山はどっさりと倒れた。


四日後

 半グレ集団魔瑠狗須のトップ3人がカラオケ店を貸し切って会合を行っていた。

 「小原一家との同盟が破綻したとことによりヤクを売るのが難しくなりました。八天黄会を始めとした売り手連中も我々と手を切るかどうか検討しているところだと思います。」とリーダーの海棠が口を開く。「そうだな・・・今先輩に他の売り手を当たってもらっているが、厳しい状況だな。」とトップ2の太田。「ヤク以外のビジネスを考えたほうがいいんじゃねえのか?」とトップ3の黒沢が言う。「そうですね。ただし今ヤクザ連中は抗争中。双方に被害が出ており、警察からの監視も強まっている。その間に商店街等から彼らに支払われていたみかじめ料をかっさらうことが可能になりました。抗争も終盤に近づいていますので今のうちにこのみかじめ事業を拡大しましょう。」「ああ・・・そうだな。じゃあしばらくは事業の新規開拓は進めねえってことでいいか?」と太田。「ええそうですね。ただ、事業拡大のスピードを速めたい。各々の配下組織の構成員をより多く動員して下さい。他の幹部連中にも追って通知を出します。そしてあなた方には申し訳ないのですが、各々の幹部の出来高に応じて幹部の位を上下させます。みかじめを支払う店をより多く手に入れた幹部程位が上になります。」「・・・分かった。それが一番効率良い方法だろうよ。」「ああ、俺もそう思う。」「では決定ですね、今日は解散・・・」と海棠が締めようとした時、黒沢が口を開く。「ボス、この後少し話せるか?二人だけで。」「ええ、構いませんよ。太田さんはそれで大丈夫です?」「ああ。構わん。」そう言うと太田は部屋を出て行った。

 「で、黒沢さん?」「ああ・・・この音声を聞いてくれ。」そう言って黒沢はボイスレコーダーをテーブルの上に置いた。そこから流れてくるのはかつて小原一家で幹部を務めていた男守屋と海棠の会話だ。


 守屋「ふん。だけどあのボンボン野郎は死んだろ?」

 海棠「ええ。そうですね。ヤクザ組長の息子である割には酷い最期でしたね。まあ、彼を殺したのは私だったんですがね。」


 海棠は笑みを浮かべていたが、その顔が突然固まる。「ボス・・・このボンボン野郎ってのは誰のことだ?」「こ、これですか・・・まず何の会話かさっぱり・・・」「・・・あんたなあ、とぼけるのもいい加減にしろよ。」そう言うと黒沢は突然銃を取り出す。そしてその銃口を海棠に向けた。

 「あんたは飛田さんを殺したろ!?」「わ、わたしが飛田さんを!?そんな筈ないでしょう。飛田さんはこの魔瑠狗須の創設者でしょう?」「ああ、そうだよなあ!殺すわけねえよなあ!金でチンピラどもを従わせていただけのあんたに魔瑠狗須のトップ2の地位を与えてくれた人だもんな!飛田さんはよお、あんたを信頼していた。あいつは俺に引退後は海棠を支えろと言っていたんだぞ!俺らにとってはガキかもしれねえがあんたには人をまとめる力はあるんだとよ。俺は飛田さんの決定に常に従ってきたが、彼の中で唯一間違いだったことがある。それはなあ・・・てめえに組織の後を継がせたことだよ!」「く、くそ・・」海棠は机を蹴り上げるとドアのほうに駆け出していく。「助けて下さい太田さん、黒沢さんが・・・」「おいおい落ち着けよボス」そういいながらドアの向こうで待ち構えていた太田がナイフを海棠の腹に近づけた。「飛田さんの仇を取れ、黒沢。」「ああ。」そう言って黒沢が引き金に手を掛けたとき海棠がいきなり笑い始める。「フフフ・・・ハハハハハ・・・」「なんだてめえ、何がおかしい?」「ここで私を殺してしまえばあなた方は無事ではすみませんよ。私の家族はあなた達を潰そうとするでしょう。海棠家は社会の表も裏も、全世界を支配しますから。」「何訳分かんねえこと言ってやがるんだ!」そう言うと黒沢は海棠の頭にピストルを当てると引き金を引いた。海棠は狂ったように笑いながら死んでいく。

 「ご苦労さんだったな。」と太田は黒沢に言い、二人は室内に戻る。そして海棠の死体をまたぐようにフードを被った男が入ってきて先ほど海棠が座った席に腰を下ろす。

 「先輩、これからはボスとして頼みます。」と太田がその人物に頭を下げる。「ああ。よろしくな。」と言いながらその男はフードを外す。それは米田組を破門された後小原一家によって殺された筈の富樫であった。

 

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