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怪物になった日

2007年 獄界町

 米田組事務所の前には規制線が張られ、鑑識が捜査を行っている。

 「この時代に日本刀で人斬りか・・・そんな奴がいたんだな。」と警官は疑わし気に米田組長を見る。「へい。奴の本名は不明。奴は残狼を自称しています。そいつは取り逃がしちまいましたが、状況から見てここにいたあんたらのお仲間殺しの犯人でしょうな。」と米田は冷静に答える。

 現場には多くの血が飛び交っていた。米田組を監視していた警察官が小原一家が雇った傭兵団によって送り込まれた暗殺者によって数人切り殺されたのだ。

 「すまねえな星山。俺の家族と仲間を殺したのは小原一家だ。あんたらは街を守ろうとしていたんだな。」と電話の向こうから聞こえるマル暴刑事富山の声を聞きながら星山は静かに頷いた。「ああ。あんたが気付いてくれてよかったぜ。」「だがなあ・・・それは俺個人の気持ちだ。俺の上司、さらにその上にいる連中はこれを機にこの街からヤクザを全員追放しようとしている。多分締め付けは厳しくなるだろう。気を付けろ。」そう言って電話は切れた。


二日後

 「おら!警察だ、開けろや!」小原一家の事務所前にマル暴が集合していた。警官殺しの件について話を聞こうとしたのだ。

 「くそ、サツかよ!」片山は副総長室で唇をかみしめていた。「どうしますかカシラ?」と副本部長野本が飛び込んでくる。「くそ・・・サツへの対応は任せたぞ!」「はい?」「とっとと玄関を開けてサツを入れろ!」そう怒鳴りつけた片山は副総長室を飛び出した。外には護衛の瀧本が待っていた。「裏口から逃げるぞ!」「へい!」二人は動揺する組員達を押しのけながら、裏口から外に出た。組の車がある。

 片山は運転席に飛び乗ると「ギャングどもを米田組の事務所に向かわせろ!」と命じた。「承知しやした。」と言って瀧本は携帯電話を取り出す。

 車を運転する片山の額には汗が浮かんでいる。(俺は・・・親父の遺志を成し遂げなきゃならねえ!サツごときに潰されてたまるか!)

 かつて片山組を率いていた父親が悲しげに解散宣言する様子を若き片山は見ていた。最後まで組に残った忠実な組員はわずかであったが、皆涙を流していた。そして組員達が出て行ったあと、父親は片山を強く抱きしめた。

 その夜、「今日くらい贅沢しようか」と静かに言うと父親は片山を連れて事務所を出た。

 継母は父親のことを「ろくでなしの社会不適合者」であると言ったが、片山はその言葉が間違っていることを知っていた。継母はかつて父親が持っていた金と権力に釣られて来ただけのくだらない女にすぎなかった。病死した前妻の息子である片山にも冷たく接した。

 父親は金があった頃に訪れていた店に向かっていた。その店はかつて片山組にみかじめ料を払っていたが、今は善輪会系金山組の手に渡っていた。店の前に金山組幹部の高級車が停まっているところを見た父は少し寂しそうな顔をした。

 そのとき、店の影から鉄バットを持った不良集団が現れ、近づいてくる。「片山、俺らのヘッドをよくも病院送りにしてくれたな!」「ここで死んでもらうぜ。」

 父親は「隠れてろ。」というと片山を電柱の影に押し込んで、拳を固めた。「善輪会が来たってのにお前らはまだいるのか!?馬鹿だなあ!」そう言うと父親は武器を持った相手にそのまま突っ込んでいく。そして・・・ボコボコにされた。「ハハハハ・・・威張っていた組長さんも組が無けりゃあこんなもんだな!」そう言うとそのチーマー集団は去ろうとする。そのとき、店の前で談笑していたヤクザが気付く。「おいてめえら、ここに面見せんなっつったろうが!」怒鳴りながら二人の金山組組員が走り寄ってくる。「くそ、善輪会の奴らだ!」チーマー集団は逃げる。

 かけつけたヤクザは父親の最期の言葉を聞いている片山を発見する。

 父親が自分にヤクザとしてのし上がる夢を託したことを理解した片山は突然、ヤクザ達に頭を下げた。「俺を・・・組に入れて下さい!」「お、おい・・・待てよ小僧。確かにあんたの父親は・・・」「まあまあ、お父さんはあんてに夢を託したんだ。親父には俺から説明するからよお。」「だが小原・・・」「まあ組に入れるのはまだ先になるしいいだろ?時期を見て俺から親父に盃をお願いしてやる。だからお前は・・・そうだな、俺の下につけ。金山組準構成員として働いてもらおうじゃねえか。」こうして片山は組員の一人である小原の下につくことになったのだ。

 小原は組内では超武闘派と言える人物であり、組長の指示でシマ内で迷惑行為をするチーマー集団に喧嘩を仕掛けにいくという。父親を殺した集団だ。「小原さん・・・」「あん?」「お、俺も連れて行ってくれませんか!」「小僧、お前にはまだ早い。」「頼んます!親父の仇を取りてえ!」「気持ちは分かる。だがお前が行っても殺されるだけだぞ。お前はまだまだトレーニングが必要だ。体力も充分についていねえし、銃の使い方も教えてねえ。」そのとき、幹部の一人が近づいてきた。「馬鹿野郎!兵隊は多いほうがいいだろ。」そう言うと幹部は小原を殴りつけた。幹部にしては随分と若い。「原野補佐・・・わかりやした・・・」小原はそう言うと渋々片山を連れて行った。

 結論から言うと、片山は役に立たなかった。チーマー集団に怯えていたのだ。全員小原と仲間の組員が倒してしまった。そして組員達は集団のトップを拉致した。

 「すまねえ小原さん、俺・・・」という片山に対して小原は「原野若頭補佐は無茶ぶりがひどい性格でな・・お前が戦えねえのも無理はねえし、お前に怪我がなくてよかったぜ。」と言う。だが原野は違った。「おいおいガキ、てめえ親の仇ぐれえ自分で取れや。」そう言って片山を一発殴ったあと、原野は銃を投げてよこしたのだ。「ガキ、ついて来いや。」

 原野が連れて来たのは拉致したチーマー幹部を閉じ込めている倉庫だ。「てめえで仇を取れ。こいつらを・・・殺せ。できるだけ苦しめるんだぞ。」「え?」「おいガキ、俺の言葉が聞こえなかったのか?こいつらを殺せっつってんだろ。」

 片山は目の前の椅子を眺めた。四つの椅子に一人ずつ幹部は猿轡をかませて縛られている。そして見知った顔があった。嘲笑しながら父親を殺した奴だ。片山は怒りで目の前が真っ赤になり、そいつの足を蹴り飛ばして後ろに転ばせると顔を何度も踏みつけ、最後に引き金を引いた。原野の狂気的な笑い声が倉庫に響く。「いいぞガキ、他の奴らも殺せ。てめえの父親を殺した奴とつるんでいたんだぞ!」

 その日から片山の狂気が覚醒したのだ。そしてその原動力はヤクザ界の大物になってやるという野望であった。


20分後 誅罰

 「あん?なんか騒がしいな。」と星山は呟いた。事務所周りが騒がしい。

 そのとき、警備の組員が入ってくる。「大変ですカシラ!」「あん?どうした?」「あの・・・小原一家の瀧本と誅罰グループ、それに・・・片山がいます!」

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