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閻魔爛弩

2006年 獄界町

 片山は不機嫌そうな顔で受話器を置く。「クソったれ!サツの野郎ども、横槍入れてきやがる。」片山は不機嫌そうに受話器を置く。

 今しがた米田組事務所と彼らご用達の押坂医院に派遣した組員と連絡を取っていたのだ。その結果、両方とも警察車両が停まって警備をしているところだという。

 「噂によると獄界町を担当する富山っていうマル暴の野郎が上を脅したらしいっすね。」と言うのは小原一家若頭補佐の美川だ。彼は武闘派ではないが小原一家の事務方のトップであり、事務が苦手な片山にとっては不可欠な存在だ。そして片山が父親の下で組員をやっていた時代からの舎弟でもある。

 「上を脅した?」「ええ。サツの上層部の奴らは俺らヤクザを憎んでますが、それゆえ抗争は放置するんですよ。だがあの野郎がしゃしゃり出てきてこんなあぶねえ抗争が起きてるのに獄界町の警備をしなければサツの評判が悪くなるって訴えたとか。」「けっ、面倒臭い野郎だな。あんな偽善者・・・消しちまうか。」「へ?でも流石にサツと喧嘩するのはまずいんじゃねえですか?」「あん?俺らが直接交番襲ったり警察署怒鳴り込むわけじゃねえよ。いるだろ、そういうのを肩代わりしてくれる連中が?」「ああ、なるほど・・・傭兵連中ですか。」「そうだよ。奴らに富山派閥のマル暴を全員再起不能にさせようぜ。」と言い、片山は醜い笑みを浮かべて受話器を取る。


翌日 

 「ふうん、あんた辞めたいのね。」「は、はい・・・客に、その・・・」キャバクラの店長室で訴えるのはキャバクラの従業員だ。それに対応する店長は半グレ組織魔瑠狗須のトップ海棠の愛人エリカだ。「その客、どんな奴よ?」「赤い髪の毛で、三角の髭が生えてて、それで・・・・う、すみません、記憶が・・・」従業員は冷や汗を流して過呼吸になりながらへたり込む。

 それを上から見るエリカの笑顔は不気味だ。彼女は猫撫で声を出して従業員の前にかがみこむ。「つらかったのね。よく話してくれたわ。でもね、あなたはうちの店のナンバーワンよ。あなたを指名したい客はそのクズ男だけじゃないわ。善良な方もいらっしゃるのよ。彼ら、日中真面目に働いているからストレスたまってるのよ。だからね、夜ここに癒されに来るのよ。そういった人たちはあなたが生きがいなの。」「で、でも私今日のホテルの出来事思い出しちゃって・・・ああ、助けて店長!」するとエリカは言う。「そうねえ・・・あんまり使いたくないんだけど、その嫌な記憶を忘れさせる方法が一つだけあるのよ。」そう言って彼女は店長が用いる机の引き出しからジップロックに入った緑色の錠剤を取り出した。「過去にも何人かあなたみたいなつらい思いをした従業員はいたのよ。彼女らはね、この薬を使って嫌なことを忘れてたの。赤髪男は出禁にしておくわ。知ってるでしょ、私のカレ。裏の顔もあるけどね、女の子いじめは絶対許さない人だから。」「薬・・・ですか?」「そう。これで嫌なことは全部忘れられるし、元気も出るのよ。私も昔あなたみたいにひどい目にあわされたことあるのよ。でもね、これのおかげで助かったわ。薬局でも簡単に買えるんだけどちょっと高いのよ。だから私は従業員用に定期注文してるんだけど。いる?」「そ、それ大丈夫ですか?その・・・副作用とか?」「副作用?ああ、少し眠くなるわね。だから飲んだ直後は寝たほうがいいわね。」「わ、分かりました。じゃあ・・・頂きます。」そういうと嬢は渡された二錠の薬を飲み込み・・・苦しみ始めた。顔が紫色になり、ものすごい痙攣をおこす。そのまま女は倒れた。

 ドアを開けて海棠が入ってくる。「木船君には困ったものだ。私の旧友ですが彼の趣味はどうやらレイプのようです。」「これで私の管理する店全てに木船君が来たことになるわね。」「ええ。申し訳ないですエリカ。だがもうこんな面倒なことはしなくて良さそうです。木船君には對魔の連中を紹介しましたから。」「對魔?」「中国人集団ですよ。彼ら、木船君のような変態を顧客として女を売っていますから。今頃木船君は彼らが世話した女奴隷で遊んでいるでしょうね。」「あらま、流石海棠ちゃんだわ。仕事が早いわね。」「まあ私も頭を痛めていましたからね、木船君には。まあ、それはともかくこの女の死体を片付けますよ。さあ、入りなさい。」すると二人の屈強な男が入って来た。魔瑠狗須の構成員らしい。「この死体を解体小屋で解体していつもの廃工場敷地内に埋めておいてください。」「承知しました、海棠さん。」と言って二人の男は女の死体を持ち上げて裏口の戸を開け・・・頭から血を流して倒れた。頭に穴が開いており、即死だ。

 「なんだ?エリカ、とりあえず伏せていなさい。」そう言うと海棠は腰のピストルに手を掛けながら裏口を見やる。

 「てめえ、手を頭の上に置け。そこにしゃがんでいる女もだ!」金色のガイコツが描かれたトレーナーを着て白い覆面を付けた四人組が入って来た。手には拳銃が握られている。

 「ああ・・・本物は初めてみましたよ。あなた方、剛糲夢ゴーレムでしょ?最近東京中で強盗を繰り返してるという。」「そうだ!その通りだ。分かったらとっとと手を頭のうえにおいて金庫に案内しろよ。」海棠は異様なほど冷静に頭の上に手を置きながらエリカに命じる。「エリカ、怖いと思いますがいう通りにしなさい。さて、強盗諸君に警告しておきますがあなた方は後で後悔しますよ。」「ああん?無駄口叩いている暇があったら・・・」「ああ、せっかちですねあなた方は。まあいいでしょう。金庫はそこにありますよ。エリカ、暗唱番号は?」「え、ええと5978だけど・・・」「聞いたでしょう。取る物取ったらさっさと出て行って下さいね。」と冷静に海棠は続ける。「よおし、お前ら二人はこいつらが妙な動きをしないか見てろよ。お前は俺と一緒に来い。金庫を開けるぞ。」そう言うと強盗は金庫にかがみこみ、ダイヤルを回す。

 その瞬間、白い煙がもくもくと上がる。「あん?なんだこりゃ!」強盗達は動揺する。「ああ・・やはり下部組織のほうはあまり賢くないようですね。」そう言うと海棠は起き上がり、腰からナイフを抜くと目の前でパニックになっている見張り役の強盗の首を刺した。「え、うわっ!」と驚くもう一人の強盗の首にも海棠のナイフが走る。

 エリカも起き上がり、腰からピストルを取り出すと一人の強盗の頭を撃ち抜いた。

 煙が晴れた時、部屋の中にはエリカが殺したキャバ嬢の死体、強盗4人が殺した死体処理係の死体、海棠とエリカが殺した三人の死体というひどい有様だった。

 「海棠ちゃん、強盗のボスどうしようかしら?」エリカが残り一人の強盗をスタンガンで気絶させたようだ。「エリカ、お手柄だ。ああ・・・追加で何名か太田君に手配してもらいましょう。死体処理と、それから尋問担当の連中が必要ですね。」


数時間後

 目を覚ました強盗は驚きの叫び声をあげる。「うお!ここは・・・」奴は暗い廃工場のようなところで椅子に縛り付けられていた。「やあ。あなた、禿げていたんですね。思ったより年配でしたね。」と海棠が声をかける。「あ!貴様は・・・」「そう。あなたが狙ったキャバクラの経営者の友人ですよ。たまたま居合わせてしまったもんですから。」「お、おいてめえ何してやがる!俺の仲間はどこだよ!」「仲間・・・というかあなたは手下としか思ってないんじゃないですかね。どちらも私とエリカで殺しましたよ、朱雀さん。」「!?何故お、俺の名前を・・・」「ああ、言い忘れていました。私、魔瑠狗須の海棠と言います。名前くらい聞いたことあるでしょ。最も顔はなたがたのような末端の下部組織にまで共有されていないみたいですがね。」「うおっ・・・あんただとは知らなかったんだよ!許してくれ。」「許す?あなた方は問答無用で私の部下を殺しましたよね?」「で、でもあんただって俺の仲間を・・・」「私はギャングです。そして強盗に襲撃されました。殺さない理由がないでしょう。」そう言うと海棠は肉切り包丁をちらつかせる。「やめてくれ、頼む。俺たち剛糲夢はあんたらの下につくよ。降参だ。」「そうですかあ・・・では剛糲夢をこちらに譲ってくれるかどうかあなたがたのボスに聞いてみないとね。」「ま、待て!それはやめてくれ。」「ああ、もしかして・・・ボスの梅田さんを恐れてますね。安心して下さい。あなたは何事もなかったふりをして梅田さんと電話で会話して下さい。そして紹介したい人物がいると告げて私に代わるように。分かりましたね。」「わ、分かった。携帯はポケットだ。梅田の番号はXXX-XXXX‐XXXXだ。」「はいありがとう。」そう言うと海棠は朱雀のポケットから携帯を取り出して番号をプッシュして朱雀の耳に押し当てる。

 「おう、梅田だ!どうした朱雀?」電話の向こうから野太い声が聞こえる。「ああ、梅田さん!実はその・・・」「あん?」「紹介したい人がいるんすよ。電話変わっていいっすか?」「何だ?腕利きの強盗でも見つけたか?」「へ、へい・・・まあそんなところで。」「おうよ、変われ。」

 「ああ、もしもし。」「よう。強盗だって?」「ええ。強盗被害に遭いましたよ。あんたの手下の剛糲夢にね。」「・・・」「ああ、少し驚かれましたかね?あなた、わざとですか?魔瑠狗須の絡んでいる店を襲ったの。」「ふ、フハハハハハ!」次の瞬間電話の向こうから笑い声がした。「その通りだ!あんたは海棠だろ?」「ええ、いかにも。梅田さん、あなたがた閻魔爛弩えんまランドはまさか私たち魔瑠狗須に喧嘩を仕掛けてきたんですかね?」「バレちまったら仕方ねえな。そうだよ!俺たちはお前らのシノギを潰してやる。強盗団はまだまだ沢山残ってる。剛糲夢みてえな雑魚どもなんざくれてやるよ。でもな、早いとこ獄界町を俺ら閻魔爛弩に引き渡したほうがいいと思うぜ。」「なるほど。では宣戦布告ということで。」そう言うと海棠は電話を切り、へし折る。「厄介な連中に喧嘩を売られましたよ。」「ええ~、閻魔爛弩?海棠ちゃんに比べれば大したことないでしょ?奴ら、ただの強盗オタクのチンピラじゃないの。」「まあそうですね。でもそれは閻魔爛弩所属の強盗団の話です。あの方々を裏から操っている閻魔爛弩上層部はかなり凶悪な半グレですよ。ボスの梅田を筆頭とするステゴロ四天王が支配している組織ですからね。」「ステゴロ?古臭いわね。今は昭和時代じゃないのよ。暴力がが得意な脳筋野郎じゃなくて海棠ちゃんのようなインテリが力を持つのよ。」「エリカ、君は私をおだてるのがうまいですね。」「あら、そうかしら?」


同時刻 草山通り

 「やっぱりやわだな下の奴らは。」と言いながら強盗を操る半グレ組織閻魔爛弩のボス梅田は携帯電話を置く。「朱雀の野郎、裏切りやがったんのか?」彼の右腕の日下部が怒りに燃える顔で問う。だが梅田は冷静だ。「ああ。魔瑠狗須の連中に拷問でもされたんじゃねえか。」「くそ!じゃあ早いとこ剛糲夢の残党連中を抑えねえと。半沢にでも奴らを監視させねえと・・・」「いや、構わねえよ。」「は?奴らを・・・放っておくのか?」「ああ。時間の無駄だろ?今獄界町では抗争が起こってる。今はチンピラの雑魚どもに構ってる暇はねえぞ。抗争で混乱しているところに・・・介入しねえとな。」そう言って梅田は部屋の隅を指さす。

 「おっさん、目覚めたか?」と縄に縛られた男に聞くのは閻魔爛弩の下っ端だ。「うっ・・・」と起き、その男はいきなり吐いた。「汚ねえな、俺のズボンが汚れちまったじゃねえか!」と怒鳴って一人のチンピラがその男を蹴り飛ばした。「おい、そいつを傷つける許可は出してねえぞ!」と梅田が立ち上がる。チンピラは少し怯えた表情を見せる。「でも梅田さん、こいついきなり吐きやがったんすよ!」「ふうん。そうかい。」そう言うと梅田はいきなりピストルを取り出してそのチンピラの頭を撃ち抜いた。「てめえごとき雑魚が俺と会話できるだけでもありがたいと思えよ!」

 「おい・・・貴様ら・・・小原一家傘下のチンピラか?」「ああ、おっさん。俺の手下がすまねえな。あんたは傷つけねえよ。あんたら倉崎組と戦争する気なんかねえよ、冠城組長さんよ。」「あん?何だガキ、偉そうな口をきいてやがるな。俺らとやり合う気がなけりゃ何故縛ってるんだい?」「ああ。あんたを誘拐した連中はあんたに何らかの価値を見出していたみてえだな。それを聞きてえのさ。」「・・・なるほどなあ。てめえ、おもしれえな。倉崎組の獄界抗争に介入する第三者か?」「まあそうだな。今からあんたの大事な組員達は小原一家と激突するだろうな。噂だと刃桜傭兵団の連中が小原一家側に加わったらしいがお前らは勝てるかな?」それだけ問いかけると梅田は服を脱いだ。あらわになった背中には赤い閻魔王を模した入れ墨が彫られている。


翌日 獄界町

 「なんだと?冠城が奪われた!?」片山は目の前に土下座する三次団体の組長を睨みつける。「も、申し訳ありません。」「申し訳ねえですむか!」そう言うと片山は足をその組長の頭に振り下ろす。「ぐっ!」組長は血を流しながら崩れ落ちた。「てめえが何をしでかしたか分かってるのか!?倉崎の連中はカエシをしてくるぞ!」「あ、そ、それが・・・冠城を奪った奴らは返してほしければ身代金をと・・・」「あん?どういうこった!そいつらの素性は!?」片山は頭を抱える。


同時刻 蔵部町

 「何!?冠城組長を返すだと?」と電話番に問いかけるのは倉崎組若頭の有賀だ。「へい。身代金を払えば返還すると。」「奴ら・・・どういったつもりだ。」有賀は不審そうな顔をする。「とりあえず親父の声を聞かせろと言え。親父の生存が確認出来たら奴らの言う通りの場所に俺が行く。」


四日後

 「ああ、カシラ・・・」と涙を流すのは車いすに乗った胡桃だ。「俺、回復したんですよ。でもカシラ、何故あなたはベッドにいるんです!?」そう言いながら胡桃はベッド上で意識を失う星山若頭の上にかがみこむ。

 そのとき、「うん?」とうめいて星山が目を開けた。「か、カシラ!?」「おう・・胡桃か?」星山は起き上がろうとして「うっ!」とうめいてベッドに倒れ込む。「カシラ、無理しねえで下せえ!よかった・・・今親父に連絡します。」胡桃はうれし涙を流しながら携帯電話を開く。

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