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国護りの大樹の敵対者……なんて面倒な立場はごめんだね! 師匠には悪いが、教わった魔法でオレは遊んで暮らしたい。  作者: 青風ぱふぃん


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7. 神の獣とその逆鱗

「いてててて……」

 しばらくして、オレは草原から身を起こす。


「もー、ひどいなリヴ爺……。あれ、リヴ爺?」


 見れば、巨大なガマガエルが、金色の花畑の上にでんと居座っている。

 ぬめりとした肌は、その表面にうっすらと金の花を映す。


「花模様のガマガエル!」

 オレは爆笑した。

「かっ、かっ、かっわいいじゃん、リヴ爺!」


 その瞬間、オレのいた場所にリヴ爺の尻尾が叩きつけられた。わっ、と声を上げてオレは素早く避ける。


「……っぶないなあ!」

「余計なことを言うからじゃ」

「……っていうか尻尾!! リヴ爺、尻尾出てる!」

「それがどうした」

「カエルじゃなくなっちゃうじゃん!」


 そう、リヴ爺の体が少し伸びている。

 少し伸びて尻尾が生えて、うーん、なんだろ、ヤモリ? 立ち上がったサンショウウオ? サンショウウオが立ち上がるのかどうか知らないけど。


 そんなオレの心を読んだのか、ふん、とリヴ爺が鼻を鳴らす。

「元々カエルが擬態だわい!」

 言いながら、ぶん、と尻尾を振る。

 危ないってば!


「無駄にでっかいんだから行動に気をつけろよ!」

「ふん、これでも随分縮められてしまった方だ。わしの女房はこの千倍はデカいぞ」

「キッッモ」

 言いかけた瞬間にはまた尻尾の一撃が飛んでくる。


「だから危ないからやめろって!! 当たったらどうすんだよ!」

「当てようとしてるんじゃ。ちょこまかしおって」

「当たったらもしかしたら死んじゃうでしょ! オレが死んだら師匠が哀しむよ!」

「哀しむか?」

「哀しまないかもぅ…………」


 オレは派手に落ち込んで、膝を抱えて小さく丸まった。


「鬱陶しいやつじゃな! 大丈夫じゃ、死んだら後のことはわからん! 哀しまれても哀しまれなくても変わらんじゃろ!」

「リヴ爺、慰めになってないよぅぅ……っ、おっと」


 バキィイン!


 なんか飛んできたから取り敢えず弾いてみた。

 岩のかけらだな? 魔力で飛ばしたみたい。ってことは。


 目をやれば、バキバキと岩を砕き、弾き飛ばしながら進む魔力の光が見える。

 やがて、がらり、と崩れた岩の中から、ボロボロになったリリアちゃんがよろけながら現れた。


「おー、リリアちゃんすごいじゃん、生き残れたんだ! お、水蛇くんも無事だったか」


 リリアちゃんを庇ったらしいデカ水蛇も、傷だらけでズルズルと岩の隙間から這い出てきた。


「ひどい目に遭ったわ……、なんなのこの化け物!」

 憎々しげに吐き捨てると、じろりとリヴ爺を睨む。


「化け物とはお言葉じゃの。貴様のちっこい蛇よりはよほど上位種じゃぞ」

「何言ってるの! たかがデカいだけのガマガエルが、私のリヴァイアサンを……」

「あっその名前は出さないで!」

 オレは慌てて止める。

「そいつは伝説の竜なんかじゃない、ただの水蛇の魔物、エンヒドリスのでっかいやつだよ!」

 それをリヴァイアサン呼ばわりしたら、リヴ爺がまたとんでもなく怒るかも!


 そっとリヴ爺の様子を窺うと、意外と落ち着いた様子で、デカいため息を吐いた。花がすごい勢いで舞い上がる。鬱陶しい。やめてほしい。


「……リヴァイアサンはわしじゃ」

「えっ」

「わしは雄じゃがな。世に言うリヴァイアサンは雌……、わしの女房じゃ」

「……ええっ!?」

 リリアちゃんがいちいち驚いてる。可愛い。


「う、嘘よ! リヴァイアサンはこの世界に一匹しかいなくって……」

「そうじゃな。この国の大樹聖典では、リヴァイアサンを囚えていた悪竜を勇者が退治し、助け出された彼女はこの国を守るためこの地で眠りについたということになっとるな」

「あれ、悪竜ってリヴ爺のこと? リヴ爺死んだの?」

 オレは思わず口を挟む。

「阿呆か。死んでたらここにおるわけあるか。瀕死のところをお前の師匠に拾われたんじゃ」

「なるほどぉ……」

 ……って、え、師匠の年寄りっぷり、想像以上。


「じゃ、じゃあ私のリヴァイアサンは、あなたの奥さん……?」

「じゃから違うと言うとろうが!!」

 バンッ!


 後ろ足で花畑を叩いたリヴ爺は、ひと飛びで大水蛇エンヒドリスに飛び掛かる。

 その脚で大水蛇エンヒドリスの首根っこを踏みつけ、ぐっと体重をかける。傷だらけの大水蛇エンヒドリスは幾度か尾を叩いて抵抗の意を示したが、リヴ爺にはなんの効果も及ぼさない。


「こんな貧弱な水蛇が、リヴァイアサンであるものか。うちの女房はこの国の水すべての水源として、国護りの大樹の根の先に囚えられておるわ」


 さっきリヴ爺が空高く蹴り飛ばした花たちが、気の毒な大水蛇エンヒドリスを慰めるようにパラパラと降り注いでいた。


   *   *   *


「リヴ爺って、偉かったんだねえ」

「今さら何を言っておる。まあ、偉いとか偉くないとかの話ではないがな」


 オレとリヴ爺は、大水蛇エンヒドリスをベンチにしてのんびりと話をしている。


 リリアちゃんはなんとか大水蛇を助け出そうと、いろんな魔法を撃ってくるけど、ほんっとうに大したことなくて、わざと当たっても痛くも痒くもない。……まあ、オレの天然の魔法防御力が高すぎるだけだけど。


「リリアちゃーん、もうやめようよ、疲れるだけだよ?」

「うるさい! 私は絶対にあんたの魔力を奪ってやる!」

「だから、付き合ってくれたらあげるってぇー」

「なんだかプライドに触るからイヤっ!」

「もー……」


 仕方ないかぁ。


「じゃあ殺そっか」

「えっ?」


 よっこいしょ。

 オレは立ち上がってリリアちゃんを見る。そして。


 ドドドドドドッ!


 沢山の光の槍を空から落とす。


 甲高い悲鳴が響く。

 金色の花が宙に舞って、視界を覆い尽くす。


 花びらがゆっくりと落ちていく中に、リリアちゃんがまだ立っているのが見えた。


「おお、さすが自称天才魔術師! 避けれたんだ」

「自称じゃないわよ!!」

 転んだのかな、かすったのかな。腕や頬に血を滲ませて、息を弾ませながらもリリアちゃんはまだ元気だ。


「うーん、じゃあもっと確実に殺さなきゃかー」

「待ってよ! なんで急に殺しに来るのよ!」

「だって、付き合えないなら殺さなきゃー」

「両極端! 待って待って、私が悪かったわ。ちょっとふざけすぎちゃった、ごめんなさい?」


 リリアちゃんは両手を合わせ、上目遣いにちょっと首を傾げる。かっわい。でももうどうでもいい。


 次は確実に。

 腕を伸ばして、手のひらをリリアちゃんに向ける。

 眉間に意識を集中し、ゆっくりと照準を合わせる。


「待って! お願い!」

 って言われてもな。家族じゃないなら要らないし。

 リリアちゃんはオロオロと泳がせた目を大水蛇エンヒドリスに留める。

「た、助けてリヴァイアサン!」


「その名前を使うなよー」

 オレは一回手を下ろして眉を下げる。


「リヴ爺がまた怒っちゃうでしょー。なんか違う名前使ってよー」

「うーむ、まあ、急に名前を変えられても、使い魔も混乱するじゃろう」

 リヴ爺が妙に優しい事を言う。


「え、嫌なんじゃないの」

「嫌じゃがな。使い魔は悪くないじゃろ」

「そっかあ。そしたらやっぱり、リリアちゃんだけが悪いのかぁ。じゃあヤッちゃうね」

「待ってよぉぉぉ!」

 ……と言われても、待つ理由はないしな。


 リリアちゃんは慌てて魔法で壁を作る。またもや金の花びらと葉っぱが宙に舞い上がる。

 もう、この花たち、なんとかならないかな。鬱陶しいな。

 オレは風を吹かせて花びらを吹き飛ばす。


 ぐらり、と視界が歪んだ。


「あ、あれ?」


 これは、花弁ペタル酔いの予感……?


 空を見上げると、金の花びらに混じってオレンジ色の花びらが落ちて来ている。


「しまった、もう夕方だ……! リヴ爺! 物陰に隠れて!」


 と言ってもここは草原だ。

 洞窟はさっき壊しちゃったし、でっかくなっちゃったリヴ爺の隠れられる場所がない!


「リヴ爺! 小さくなって! 森に隠れて!」


「いや、間に合わんのぅ。こりゃしまったわい」


 リヴ爺は呑気な口調で言うが、顔色は青ざめている。何とかしないと、と思ってもオレも花弁ペタル酔いの症状が出て動けない。オレはめまいに耐えかね草原に膝をついてしまう。

 本当にマズい!

 

「ああら、いいザマねぇ」


 四つん這いになった俺の前にリリアちゃんが立ち塞がる。


「本当に花弁ペタル酔いするんだぁ。子供みたーい」

 ケラケラと笑うリリアちゃん。事態の深刻さが分かんないのかな。


「リリアちゃん! リヴ爺を花弁ペタルの当たらない場所に隠して!」

「なんで私がそんなご親切なことを?」

「ご親切とかじゃなくってさぁ、このままだと色々マズいんだって!」

「私は別にマズくないわよ? むしろあんたたちを殺せるチャンスじゃなぁい?」


 何言ってんのリリアちゃん。このヤバさがなんでわかんないの?


「……あっそっか、魔法使いじゃないから事態の深刻さがわかんないのか」


 オレが呟いた瞬間、リリアちゃんがカッとなる。

「なによ! 赤ん坊みたいに地面を這いずるしかできないくせに、まだ魔術師を見下してるの!?」


 ガツン! とヒールで俺の背中を踏む。

 痛っって! 背骨! ゴリって言った!


「見下してなんかないよ、そう言うならちゃんと魔力を見てよ、リヴ爺がマジでヤバいんだってば!」

「ふざけんじゃなっ……」


 言いかけて、リリアちゃんはオレを踏んだままハッとリヴ爺を振り返る。


「何……あれ……」


 やっと魔力の変化を感じたのか。おっそいよ。

 オレは諦めて、リリアちゃんに踏まれるまま地面にべシャッとうつ伏せに貼り付く。


 その向こうで、不吉なオーラを放ちながら、リヴ爺がムクムクと膨れ上がり始めていた。

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