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国護りの大樹の敵対者……なんて面倒な立場はごめんだね! 師匠には悪いが、教わった魔法でオレは遊んで暮らしたい。  作者: 青風ぱふぃん


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2. 師匠のお出かけとお留守番

「一週間ほど出かけてくる。各種の薬は用意してあるから、客が来たら対応しなさい」

「はーい」

「足りなくなったらルビーとサファイアに聞いて、調剤しなさい。勝手なことはするんじゃないぞ」

 信用ないなあ。

 師匠の言葉に、オレはぶすっとして見せる。


 うちは魔術師の家というより、薬屋としてこの村に認知されている。

 師匠の薬はよく効く。オレもずっと勉強してるから、師匠には敵わないまでも充分な薬は作れるようになっている。……と思ってるのに。


「…………。まさか、ひとりで出来る、などとは思っていないよな?」

「思って……、なくもないですが思ってないです」

 不満げなオレの答えを聞いて、頭の上でのってり座っていたリヴ爺が、バチン! と火花を散らした。


「いってえええ!!」

「アックスよ、安心して行ってくるといい、わしが監督していよう」

「すまんがお願いする、リヴ爺」

「師匠はなんでこんなガマガエルに腰が低いの!?」

「お前が頼りないからだ、ウィズ」

 すかさずリヴ爺がオレに言う。


 ううーっ。悔しげに唸ってみせたが、オレを慰めることもなく、師匠はリヴ爺とルビー、サファイアに声をかけて出かけていってしまった。


   *   *   *


「ねえねえ、ルビーちゃん、サファイアちゃん、オレに乗り換えない? あんな無愛想な師匠なんかより、若くてピチピチのオレのほうが良くない?」


「お断りしますわ」

「マスターのほうがカッコいいよ」


「にべもない……! そこがいいっ」

 オレは身体をくねらせて見せる。


「……こう言ってはなんですが、ウィズさん気持ち悪いですよ」

「気持ち悪いよねえ」


「うおおっ、きれいなお姉さんからの罵倒っ! ありがとうございます!」


「……馬鹿にしてますかね?」

 ルビーが言うとともに、リヴ爺もオレの頭の上で不快げな声を出す。

「……本当に気持ち悪いぞ、ウィズ」

「リヴ爺は黙ってて!」

「いい加減にしないと怒るぞ」

 リヴ爺はパチパチっと放電を散らす。


「待ってやめてごめんなさい!! ……だって、暇なんだよぅ〜!!」


 師匠が居ないと全然お客が来ない。

 いっつも誰かしら訪ねてくるのに、師匠が居ないと知ったら今日はだーれも訪ねてこない。

 『作りすぎちゃったおかず』とか『初めて焼いてみたお菓子』とかの差し入れも全く来ない。

 なんでだよ!!


「暇だからって師匠の使い魔に主替あるじがえを持ちかけるんじゃないっ」

「だって羨ましいんだもんー!! ガマガエルよりきれいなお姉さんのほうがいいー!!」


「リヴ爺のほうが使い魔としては上位ですよ?」

 ルビーが言う。

「せっかくマスターが優秀な使い魔を譲ってあげたのに、恩知らずだなぁ」

 サファイアも言う。


「ヤダヤダヤダ、優秀さなんて求めてない、オレは今癒しを求めているのだぁ!!」


 バリバリバリ!! と頭の上で火花が散り、オレは悲鳴を上げて床にひっくり返った。


   *   *   *


「ねえーリヴ爺ー。なんでオレ、モテないのー」

 夜。オレはひとりでだらだらと食事をしながら、使い魔を相手に愚痴る。


 今日は、いつもは何処かから届く『作りすぎちゃったおかず』がないので、パンとスープだけの晩ご飯だ。まあ、ルビーとサファイアが煮込んでくれた野菜スープがあるだけ幸せである。というか食えればなんでも幸せである。


「ねえ、オレさあ、『水神の末裔』って呼ばれる水色の髪と金の目だよー? 貴重だよー?」

「それを言うなら黒髪赤目のアックスはダークドラゴンの末裔だわ」

 リヴ爺が呆れたように言う。

「うわー師匠かっこいいー。ずるいー。まあ他にも赤い髪は火の神獣の末裔とか、金髪は太陽神の末裔とかだけどさぁー」

 髪の色と瞳の色で何かの末裔とする言い伝えは、定番の口説き文句に使われる。つまり、多分何の根拠もない、相手を喜ばせるためだけの作り話だと思う。大昔にも、オレと同じでモテたくて試行錯誤した誰かがいたに違いない。


「でもオレは珍しくなーい? なかなか居ないよ水色の髪に金目ー」

「珍獣コレクターにはモテるかもの」

「いやだぁぁ、かわいい女の子にモテたーい」


「だったら性格変えたほうがいいよ、生まれ変わる勢いで」

 食後の薬湯を持ってきてくれたサファイアが酷い事を言う。

「せめて女性に下衆なことを言わない配慮くらい欲しいですよね」

 お茶請けの角砂糖を小皿で出しながら、ルビーも呆れたように言う。


「食後のデザート角砂糖!?」

「甘いものがこれしかありませんでしたので」

「オレ馬? 馬なの?」

「馬のほうが可愛げがあるなぁ」

「サファイア今日オレに当たり強くないー!?」

 半べそで縋りつこうとしたオレをふいっと躱し、サファイアはさっさと部屋を出ていってしまった。


「サファイアはマスターが好きですからねえ。置いていかれてイライラしてるんですよ」

 ふふふ、とルビーが笑う。

「かく言う私も、主替えなど持ちかけられて、クッキーすら焼く気力も無くなりましたけどね」

「あっ、この角砂糖は自業自得ってやつ……?」

「さあ?」

 ふふふふ、と笑いながらルビーも部屋を出ていってしまった。酷い。


 オレはとんでもなく苦い薬湯を飲み干し、角砂糖を口に投げ込む。

「んむ、まあ、れも、こうやっへ用意してくえるらけ良いよれ」

「食いながら喋るな!」

 もー、すぐ怒る。リヴ爺気が短い。

 オレは黙って、もぐもぐもぐもぐ、角砂糖を口の中で溶かした。


「んん、ふたりともさ、花弁ペタル酔い予防の薬湯、毎日煎じてくれるしさ、その後の口直しの甘いものも必ず用意してくれる。まだ見捨てられてねーなーって感じして嬉しいなって」


「……そういうところをちゃんと見せてやればもうちょっとあのふたりも……」

「ん、何?」

「いや、なんでもない。寝る前には歯を磨けよ」

「はーい」

 うっさいな、とチラッと思ったけど、角砂糖が甘くて幸せだったので、オレは素直にリヴ爺に返事をして、井戸に向かった。


   *   *   *


 あれから数日。


 今日も今日とて暇である。


「今回は師匠どこまで行ったのかなー」

 薬局の簡素なカウンターで、ぼんやりと窓の外を眺めながらリヴ爺に言う。


 オレが店に出るときは、リヴ爺も一緒に店にいる。


 店、と言っても玄関入ってすぐの居間の真ん中に接客用のテーブルセットを置いて、さらにその奥に細長いテーブルと椅子をカウンターと称して置いてあるだけ。隣の部屋への扉や、2階への階段も普通にある普通の部屋。

 空いてる壁は全部、薬の棚で埋まっている。


 玄関横には広い窓があり、外が見える。つまり、外からも、中が見える。


 デカいガマガエルがカウンターの上にドンと構えてるからお客さんが来ないんじゃないの? と前に言ったらめちゃめちゃ雷食らったので、それからは文句を言わないようにしている。

 でも店が暇なのは絶対リヴ爺のせいだと思う。オレがモテないわけじゃなく。

 オレがモテないわけじゃなくてね。


「さあなあ……今回はどこまで言行ったろうなぁ」

 リヴ爺は前足の指を顎に当て、考える素振りをする。


金葉リーフは国内どこにでも降る可能性があるからのぅ」

「どこまで行くかくらい言ってってくれればいいのになー」

「曖昧な情報でもあやつは即座に出かけていくからな、本人もどこまで行くか把握できておらんのだろう」

「師匠は金葉リーフ最優先だもんなー、仕方ないけどさー」

 オレは腕を枕にカウンターに頭を寝かせ、

「……つまんないなー」

 とぼやいた。


 金葉リーフとは、国護りの大樹が極々たまーに、花弁ペタルとともに1枚だけ、はらりと落として来るものだ。


 花弁ペタルは、その日によって白だったりピンクだったり、たまに黄色だったり青かったりもする。その中に、ふと、手のひらくらいの大きさの金色の葉が1枚、混ざる。


 金葉リーフ花弁ペタルと違い、地に落ちても消えない。鋭い辺を持ち、ひらひらと優しげに落ちてくるのに触れるとざっくり切れる。なので、災いの象徴として、見かけた者は慌てて逃げて通報し、大樹の守護部隊がすぐに回収に来る。


 運悪く致命傷を負ったものはどうしようもないが、怪我した者には上級治癒魔法がかけられて療養費が支給され、落ちた土地には土を清めるための補償金が出る。


 そんなわけで、金葉リーフが見つかったら皆こぞって通報する。


 そして、そんな通報を、どうやってか師匠はいち早く知り、大樹守護隊より先に金葉リーフを手に入れるべく現地に飛ぶ。

 なんの通報もない時も、時折ふと、人の少ない僻地の方へ、もしかしたら金葉リーフが誰にも知られず落ちているかもしれないと、探索に行く。


 今回のお出かけがどっちなのかは知らない。


「そんなんそう簡単に見つかるわけないじゃんねー……。人手がある方が良いじゃん……オレも連れてってくれたらいいのに……」

「目立ちたくないんじゃ、守護隊に見つかったら今まで集めていた分も没収されてしまうからの。数百年がパーじゃ」

「長生きだな師匠ー! 気が遠くなるー」

金葉リーフは大樹の力の濃く固まったものだからの、戻さなければ大樹がわずかずつ弱るのじゃ。……まあ、数百枚数千枚程度では何の影響もないんじゃが」

「何万年やるつもりなの!! 気が! 遠ぉーくなるー!」

 オレは椅子の上で反り返って手足をバタバタさせて騒ぎ、リヴ爺の

「まあ、ただ弱らせようというだけではないのだがな」

 と言う呟きを気に留めなかった。


 窓の外には、今日も花弁ペタルが降り始めていた。

 ここまでお読みいただいてありがとうございます!


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