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アッー


   一


 昔、洛陽の都にマッチョがいた。

 彼の名は杜子春。マッチョである。

 もう一度言う。マッチョである。


 「ソイヤッ ソイヤッ ソイヤッ!」


 筋肉を見せつけながら半裸でダッシュしていた。

 そして通報された。

 杜子春は反省して警察に抱きついた。

 アッーーーーー!


〜〜〜〜〜〜〜〜


   二


 ある黄昏時、杜子春は湖の上でぼんやりしていた。


 「誰もおれの筋肉についてくるマッチョはいない」


 そして星空を見上げた。

 白虎の爪痕のような月のクレーター。

 玄武の尾のような黒い雲。

 そんなことを思っていると、仙人が来た。


 「マッチョ」

 「マッチョ」


 2人は互いに腹パンをして、腹筋の強度を認め合った。


 「さすが仙人、人外の腹筋だ」

 「お前こそ人間にしては鍛えすぎじゃ」

 「強者に会えて嬉しいぞ」

 「ワシもじゃ。カッカッカ」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ ゴゴゴゴゴゴゴゴ


 漢のオーラが空へと立ち上ること青龍のごとし。

 その熱気の燃え盛ること朱雀のごとし。


 「おぬし、地獄の悪鬼と戦ってみないか?」

 「喜んで!」


 2つ返事で了承した杜子春はウォーミングアップを開始した


 「これ、悪鬼羅刹はあのガビ山の頂上に出現する。ワシが案内しよう」


 と、仙人はタオパイパイジャンプをかました。

 すなわち、まず岩の柱を投げつけて、

 その後に自分も空へ飛び出し、

 柱に足の裏をくっつけて一緒に飛行するのだ。

 杜子春は見様見真似でタオパイパイジャンプを行った。


〜〜〜〜〜〜〜〜


 プロテイン

 ああプロテイン

 プロテイン


   仙人


〜〜〜〜〜〜〜〜


   三


 

 「ここが山頂か」

 「そうじゃ。待っていると悪鬼羅刹とエンカウントすることができる」

 「腕が鳴るな」

 「そうじゃろ。そうじゃろ」

 「心踊る強者だといいが」

 「そう願っておるわ。じゃあワシはジムに行くから後は頑張るのじゃぞ」

 「おう!」


 そう言って仙人はカエルジャンプで山の向こうへ消えていった。

 後に残された杜子春は、れんぞくパンチをしながら待った。

 すると空から筋斗雲に乗った猿。


 「キサマが杜子春か。どっちが強いか勝負だウキー!」

 「面白い。受けて立とう」


 空飛ぶ猿の縦横無尽なトリックステップ。

 雲と如意棒を混ぜた変幻自在な連続攻撃。

 そのどれもが筋肉に弾かれてしまった。


 「フン! 他愛もない」

 「そ、そんな、攻撃が効かないウキー」

 「今度はこっちの番だ」

 「ウッキーーーーーーーー!」


 杜子春のパンチで猿はキラリと星になってしまいましたとさ。


    ✨



 「次の相手はまだか」


 すると今度は源義経と平将門の亡霊が海の向こうからフワフワとやってきました。


 「そこにいるのは弁慶か」

 「違う、俺は杜子春だ」

 「ここは東京ではないな。どこだ」

 「そんなことはどうでもいい。勝負だ」


 謎のバトルが開始しました。

 源義経の目にも止まらぬ高速斬撃。

 平将門の力任せのメガトンパンチ。


 「ぐはぁ」


 さすがの杜子春も、伝説の偉人には苦しそうです。


 「おぬし弁慶ではないな」

 「だから杜子春だと言っている」

 「物理攻撃は効かぬようだ。ではビームならどうだ」

 「なにっ?」


 平将門が口をガチャンと開けて、

 エネルギー充填120%、発射ァー!


     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

     ビビビビビ

      ビビビ



 「ぐわあああああああ」


 杜子春は黒焦げになってしまいました。



〜〜〜〜〜〜〜〜



   四


 地獄。気温が低い暗い夜道を歩く杜子春。


 「俺は……死んだのか?」


 地獄の道をランニング。

 すると後から脳筋閻魔大王がクラウチングスタートからダッシュを決めました。


 「うおおおおおおおおおおおお」

 「なっ、早い」


 閻魔大王は杜子春を追い越してからUターン


 「杜子春、キサマの罪状が分かったぞ」

 「なんだと」

 「ビーム耐性のトレーニングを怠った罪」

 「クッ……確かにその通りだ」

 「罪を認めるか、それでこそマッチョ」

 「ああ。ありがとうマッチョ」

 「そんなキサマには、特別にビーム地獄に案内してやろう」

 「ありがたい」


 こうして2人はウッキウキで弾幕STGのような戦闘機が突撃してくる世界線へレッツゴー


 「弾幕を筋肉で受ければいいのだな」

 「その通り」


 さて弾幕を受けようとした杜子春だが、

 弾幕が腹に当たると肉体が爆発してしまう。


 「ぐわあああああああ」


 その時から、杜子春の生存本能が目を覚ました。

 己が死とは何ぞや

 己が生とは何ぞや


 不老不死の地獄にて、

 致死体験を繰り返し、

 杜子春の命が今、初めて燃え始めた。


 「筋肉だッ!」


 杜子春の筋肉が、より強く、より鋭く、

 そしてより効率的に、動き、殴り、天翔ける

 翼のように、舞い上がる。


 「アォ アォ アォ!」


 謎の奇声と共に戦闘機を撃ち落とす杜子春。

 バトルモード真っ只中の杜子春。

 ワハハハハ


 すると誰かの声がする。


 「誰か、助けてー」


 幼女が叫んでいる。

 杜子春は目を覚まして。



〜〜〜〜〜〜〜〜


    五



 「ハッ、夢か!?」

 「そうじゃ。夢だ」

 「くそッ、最初から催眠術を受けていたとは」

 「して、どうじゃった?」

 「プロテインを求める幼女がいる」

 「え?」

 「プロテインを求める幼女がいる!」

 「違うじゃろ」

 「いいや、プロテインは素晴らしい飲み物だ」

 「あ、ああ、そうじゃな」

 「だから幼女に筋肉とプロテインを届けに行く」

 「ええ……」


 どこで道を間違えたのか、

 杜子春はあらぬ方向に進んでしまいましたとさ。


 そして通報されて、再び警察に抱きつきましたとさ。


 アッーーーーーーーーー!!!

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