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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season Two ダヴィ編
71/72

継承

中とは逆に静寂に包まれているラビュリントス入り口前で仙人とイゲティスは同化していく木々を眺めていた。

イゲティスは仙人に言う。

「リウ様。本当によろしいのですか? あの方達を怪報に会わせて」

「問題ない。しっかり鍛えてきた。死ぬことはない」

「しかし!! リウ様。あなたが報告したのですよ!! あの怪報は・・・・・・!!」

「ああ。わかっておる。この中にいるミノタウロスの怪報は、ミノタウロスの復活を諦めている」

「そうです! しかし、それが問題なんですよね!!」

「ミノタウロスの・・・いや怪物の復活には、儂らでは計り知れない程の犠牲が必要だ。

それは実現不可能と言っても過言ではない。だからこそ、ミノタウロスの怪報共は、復活ではなく、継承に目的を変更した。そして儂の調べうる限り、既に継承は成功している」

「もしミノタウロスの力を継承した怪報と戦うことになんてなったら、生きて帰ってこれないしゃないですか!!」

「大丈夫じゃ。人間が怪物の力を完全に継承することは不可能。せいぜい、ミノタウロスの十分の一程度だ」

「それでも強すぎます!!」

「安心せい。今のあの子らなら、勝てる!!」



                 ◇◇◇



バシンは懐から瓶を取り出した。

瓶の中には小さな肉の塊が入っていた。

「これはミノタウロスの肉片だ」

バシンはその肉片を瓶から取り出して口の中に入れた。

するとバシンの筋肉がうねりだしたと思うとバシンの体が大きくなっていった。

「これが・・・・・・ミノタウロスの力!!!!」

リリウカはアネッテと距離を置き、金色の椅子のもとまで戻った。

椅子の台に立て掛けてある斧を手にした。

「ねぇ。これが何かわかる? これはねぇ、ラビュリントス内に残っていたミノタウロスの角から作った斧だよ。角だけなのに一振りでとんでもない力を飛ばせるんだ。君で試すね!!」



                ◇◇◇



バシンは言う。

「お前、名前はなんだ」

「オリオン」

「オリオン。お前も本気を出せ! あの引力!! 今お前が纏っている魔力壁は半端だ。もっと出せるだろう!!」

オリオンは纏っていた魔力壁を払う。

「テラスパノピア」



オリオンのその詠唱と共にマナのみを対象にした引力が発せられる。

そして、制御された引力ではなく、全力の引力によって集められたマナが魔力となり、魔力壁としてオリオンの体を包む。

膨大なマナによって形成された強大な魔力壁はバシンがこれまでに受けたことのない強力な圧力を感じた。



「はっ!!! たまんねぇぜ!!!! 来い!!! オレがぶちのめしてやる!!!!」

オリオンとバシンはお互いに飛びかかった。

拳と拳がぶつかり合う。

パワーも体術も互角の戦い。

どちらかが一瞬でも隙を見せれば致命傷を負う。

バシンの魔法は人や物を殴れば殴るほど殴打の威力が上がる。

それはオリオンの拳に対しても同じこと。

「ほうら!! まずは、一発!!」

バシンの攻撃をオリオンは腕をクロスさせて耐える。

後退するオリオン。

バシンはすかさず飛びかかる。

しかし、躊躇いなくオリオンはバシンの懐に飛び込む。

オリオンのスピードを見誤ったバシンはオリオンからのアッパーを食う。

「ぐはっ!?」





バシンはオリオンから距離を取って床を殴り、割れた床の破片やタイルをオリオンに投げる。

オリオンはそれを殴って破壊する。

その隙にバシンはオリオンのすぐ側まで近づいており、拳を振り下ろす。

それをオリオンは避けて、飛び上がり、バシンの頬に蹴りをいれた。

バシンは壁まで吹っ飛んでいく。

「くふっ! やるなぁ」

バシンはさっきやったのと同じように床を何度も連続で殴り始めた。

そして右の拳に肉片を飲み込む前とは比べ物にならないほどの力が宿った。

「さぁ!オリオン。ケリをつけよう。最高の一発で!!」

「わかった」

オリオンは拳を構えた。

体に纏っている全ての魔力を右の拳に集めた。

人間の持つ力を凌駕した引力で集めた圧倒的な魔力量。

怪物の力を継承し、グレードアップしたバシンの拳。

両者は、拳を振りかぶり、互いの元へ飛んだ。





オリオンが全力の引力で纏える魔力の量は制御時の八倍である。更に修行によって瞬発力が鍛えられ一度に消費する魔力の上限は制御時の五倍。つまり、地面を蹴る力が強くスピードが上がり、殴打の力も上がっている。





しかし、オリオンはそれらの魔力を全て右手に込めている。

その込める行為がタメになり、バシンの方がオリオンのもとへ先に着く形となった。

それでもオリオンの拳は怪物の力を受け継いだバシンの攻撃を遥かに凌駕していた。

拳と拳がぶつかり合った瞬間、バシンは自分の負けを確信した。

オリオンは拳を振り切る。

バシンは勢いよく吹っ飛んでいき、壁にめり込んだ。

「ふぅ。これでなんとか決着・・・・・・」

オリオンはアネッテが心配であったが、かなり消耗していた。



                  ◇◇◇



アネッテは炎剣を振るう。

「炎刃千!!!!」

リリウカはミノタウロスの斧を振るい下ろす。

「カテギダ・シングロシィ!!!!」

アネッテの炎の斬撃とミノタウロスの斧から放たれた衝撃波がぶつかり合う。

炎の斬撃は衝撃波に押されてアネッテを襲う。

「炎衝!!!!!」

アネッテは剣から放出される炎の勢いを使ってその場から瞬時に離れる。

アネッテは間髪入れず、リリウカに向かって走り、攻撃を叩き込む。

「炎累弾!!!!」

剣の周りの炎が弾のようになってリリウカに向かっていく。

全ての弾を一度に払う衝撃波を撃つためにリリウカにタメができる。

アネッテはその間も炎の剣をより一層滾らせながらリリウカに近づく。





「近づくなぁ!!!」

リリウカが衝撃波で弾を一掃。

アネッテは衝撃波が飛んでくるコースを読んでおり、避けきる。

「食らえ!!!! 軌炎縄!!!!」

炎剣の炎が辿った軌跡に残った炎が炎剣と結びついて一本の縄になっていた。

その炎の縄をリリウカの頭上に振り下ろす。

「ぐぅ!! わぁ!!!」

リリウカは斧を振り遅れ、炎の縄が直撃した。

「はぁはぁはぁ。なんで、オレが押されてんだ!! ミノタウロスの斧があるんだぞ!! こんなはずじゃねぇ」





リリウカは斧を構えた。

防御を捨てた、大きなタメ。

アネッテはリリウカを止めるよりも自分の技で受けることを選ぶ。



累燃火という技はそもそも剣から放出する炎の量と方向を調節する技術が備わっていなかったがために生まれた技。

しかし、今のアネッテは一ヶ月半の修行でその両方を克服している。

剣から大量の炎を放出する特徴から『炎累弾』『軌炎縄』など炎を周囲に解放する技へと応用した。

アネッテの現段階の大技は累燃火と炎刃千の合体技である。



アネッテは言う。

「炎砲・波の一振り!!!!!」

炎の波がリリウカの放った衝撃波を飲み込む。

リリウカは斧を床に突いたまま波に焼かれた。



                  ◇◇◇



「アネッテ!! 大丈夫か!!」

と言ってオリオンがアネッテのもとへ向かう。

アネッテが返事をしようとすると、部屋の扉が開き、ガブリエル、サレン、レンダが入ってくる。

「おう!! オリオン! アネッテ! 無事か!」

サレンは言う。

「二人も倒したんだぁ!! これでみんな一緒に帰れるねぇ!!」

レンダが続く。

「どうやって帰る?」

オリオンとアネッテは疲労で床に寝転ぶ。

オリオンは言う。

「まぁ、どうにかなるでしょ」

アネッテは返す。

「うん。みんなで帰ろう」



                  ◇◇◇



5人でラビュリントスを出ると仙人が一人で待っていた。

仙人が柔らかい表情で言う。

「お疲れさん」

仙人に返事をしようとした時、ガブリエルが気付く。

「なあ、なんかラビュリントス光ってねぇか?」

他の四人が振り返ってラビュリントスを見ると確かにラビュリントスは薄く光っているように見えた。

仙人は言う。

「見えるようになったか。あれはミノタウロスの魔力じゃ。なぜか怪物の魔力は光っている。儂はケルベロスと暮らしていたら見えるようになったが君らも見えたか」

「へえ、なんで光ってんの?」

「それは儂も知らん」

アネッテが言う。

「そういえば、イゲティスさんは?」

それまで五人を労うように柔らかな表情をしていた仙人の顔が一気に強張る。

「それについてじゃか、少々面倒なことが起きてな」

「なんですか?」

仙人は言う。





「フィモスの村にダヴィが来ておる」

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