前哨戦
リリウカは側にある斧を持たず素手のままアネッテの前へやって来た。
(あの斧は使わないのかな? あっちの人としてた会話と関係しているのかな?)
リリウカは言う。
「ねぇねぇ!! 君強い? できれば強い方がいいんだけど!!」
「戦ってみればわかるでしょ!!」
「そうだねぇ!!」
アネッテは体に魔力を纏い、剣に炎を纏わせた。
「行くよ!!」
アネッテはリリウカに向かって炎剣で斬り込む。
リリウカの体に炎剣が触れるその瞬間、何かがアネッテの体に当たり、アネッテは元の立ち位置に戻される。
(なに今の? 押されたような感覚)
「ふぅ。危なかった。そんな危ないものオレに触れさせないよ!」
「触れたくない? ならこれは?」
凪いでいた炎剣の炎が鋭い形に変化する。
アネッテは構えた。
「炎刃千!!!!」
アネッテの炎剣から放たれた炎の斬撃がリリウカを襲う。
「あわわわわ!! これはやばいよぉ!!」
リリウカは両手を前に出して、衝撃波を繰り出す。
炎の斬撃と衝撃波が激突して、煙が二人を包む。
そして煙が晴れるとそこにはアネッテからの剣による攻撃を手から出したばかりの衝撃波を使ってすんでのところで耐えているリリウカがいた。
リリウカは一度足を上げてから床に足をつけると衝撃波が生まれ、アネッテを襲う。
衝撃波が直撃したアネッテが後退するとリリウカはすかさず、アネッテに拳を突き出す。
しかし、リリウカの拳がアネッテに触れたその瞬間、リリウカは驚愕する。
「アッチィ!!!!!!!!!」
リリウカは右手を押さえて転がる。
「こっこいつ!! 火のマナだけで魔力壁を作ってやがる!!」
本来引力のマナを集める技術を自分の能力特化させている魔法使いであってもその集めたマナには他属性のマナが紛れている。しかし、アネッテは火のマナのみしか集められない特性のため、火のマナのみによって構成された魔力と魔力壁はそれだけで火の力を持つ。
リリウカは立ち上がり言う。
「君、やるねぇ」
◇◇◇
オリオンは体に魔力を纏った。
バシンがオリオンへ殴りかかる。
「さっさと終わらせてやる!」
バシンの力の籠った右ストレートがオリオンを襲う。
しかし、バシンは驚愕する。
目の前のどうみても12歳そこらの子どもが自分の全力の拳を片手で止めていたからだ。
バシンはオリオンの手を振り払い、後ろに引く。
「ちょっとはやるようだな!!」
「降参はしないでね。ちゃんと倒すから」
「けっ! 言いやがる!」
バシンは拳を振りかぶる。
「だがなぁ。オレの拳はこんなもんじゃねぇぜ!」
バシンは振りかぶった拳を床に叩きつける。
床の破片が散らばり、視界を塞がれたオリオンのもとへ走りだし、再び拳を振りかぶる。
オリオンは砂埃にバシンの影を見て、瞬時に後ろへ引くとバシンの拳が足元の床にめり込む。
そのままバシンは止まることなく、拳をオリオン目掛けて振り下ろし続ける。
オリオンはすんでのところで避けるがバシンの拳はオリオンの足元を何度も叩き割る。
するとバシンの攻撃が止む。
砂埃が晴れる。
「さぁて、そろそろオレの攻撃受け止めてくれよぉ!! さっきみたいによぉ!!」
オリオンは見た。
バシンの右腕が纏う圧倒的な魔力の量を。
(さっきとは比べ物にならない程の魔力量!? あれは受け止めきれない!!)
「いくぞぉ!!!!」
バシンは拳を振り上げ、オリオンへ振り抜く。
「くぅ!!」
オリオンは両手を前に出して、全力で引力を発した。
「なっ!! なに!?」
オリオンの引力により、バシンは動くことができず、オリオンを見る。
バシンは言う。
「これ、お前がやってんのか?」
「そうだ・・・・・・!!」
バシンは笑い出す。
「はっはっはっはっ!!! こりゃあ参った。お前バケモンかよぉ!!」
バシンは殺意を消した。
それに伴いオリオンも引力を解除した。
「くっくっく。いいだろう。見せてやるよ。オレ達の本当の力を」
そう言ってバシンはリリウカの方を見る。
「おい! リリウカ! そっちはどうだ?」
「こいつやばい!! 強いよぉ!! 負けないけどねぇ!!」
「そうか。リリウカ。やるぞ。アレの試し撃ちだぁ!!」
「え!! いいのぉ!? やっほーい!!」