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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season Two ダヴィ編
68/72

運び屋

「あら! お客さんなんて久しぶりねぇ」

一人になったレンダが松明で照らされた廊下を歩いていると廊下の先から黒い服を着た女が現れた。

「あなたは怪報ですか?」

「ええ。そうよ。エイスタと言うの。それがどうかした?」

「今からあなたを倒します。よろしいですか?」

「・・・やめときなさい。大人は怖いわよ」

「構いません。やりましょう!」

「ん〜〜。まぁ、無駄な殺しはしてもいいんだけど、アンタ子どもだし、まだ私みたいなお姉様には興味ないでしょ。だから、私の言う通りにしたら生かしてあげるわよ」

「どういう意味ですか?」

「ああ〜。なんでもない。大人の話。それより、死にたくないなら、私の下僕になりなさい」

「下僕? どうしたらいいんですか?」

「簡単よ。『負けた』と言いなさい」





「いいですよ。ただし、アンタがこれを飲んだらね」

液体の入った瓶をエイスタの足元へ転がす。

「・・・・・・私に毒盛ろうっていうの? あまり舐めないで」

そう言ってエイスタが鞭で瓶を割ると液体が地面に溢れた。

「じゃあ、倒す!!」

「わかったわ。無駄な殺し。しちゃうわ!!」

エイスタは鞭を振り回す。

鞭は地面や壁を削り始めた。

(ありゃ、当たると死ぬな。近づく方法を考えなきゃ)

レンダはエイスタにバレないように自分の背後に液体を垂らしてタベラリウム君2号を二体召喚する。

レンダは魔力を体に纏う。

「なぁに? その疑似生物は。どんな能力があるのかしらぁん」

レンダはタベラリウム君2号を盾にしながらエイスタへ近づこうとする。

「そぉんな柔らかそうなもので私の鞭を防げるとでも!!」





鞭はうなりを上げてタベラリウム君2号を襲う。

タベラリウム君2号は鞭の攻撃を受けてプルンプルンと反応する。

激しい鞭による攻撃は行われ続ける。

「ちょっとは耐久力あるみたいだけど、それも時間の問題じゃない?」

タベラリウム君2号の形は変わらないが、鞭によって削がれて小さくなっていく。

タベラリウム君2号の体の一部だった液体が廊下中に飛び散っていく。

そしてついに鞭の先がレンダの頬を掠める。

「ぐっ!!」

「やっと当たったわね。さあ、私の言う通りに動きなさい。三回回ってワンと鳴きなさい!!」

レンダは抵抗することができず、体が勝手に動く。

レンダは犬のように四つん這いになって、三回回転した。

「ワンッ!!!!」

「よぉし。よぉし。良い子ねぇ」





エイスタ・バシャーニの魔法『Sだけクラブ』の能力は、エイスタの鞭に当たった者に一つだけ言うことを聞かせるといもの。強い命令は難しく、小さな命令を重ねていく。命令を聞いていくうちに対象は躾けられていき、自ら「負けた」という言葉を発する。対象が「負けた」と言った瞬間対象は、自分は負けたと思い込み、戦意を失くす。





(よかった。魔力で守っていたから、擦り傷ですんだ。しかし、こんなところサレンに見られたら終わりだな)

「もうアンタを守るものはなくなったわ。降参しなさい」

「いいえ。大丈夫です。これからは攻める番なので!!」

「はぁ?」

「現れろ!! タベラリウム君1号!!」

廊下中に飛び散ったタベラリウム君2号二体分の液体がもぞもぞと動き始めた。

「なにっ!?」

液体はやがてタベラリウム君1号の形になってエイスタの方に進み始めた。

「さっきの疑似生物の小型版?」

タベラリウム君2号は1号百体分の質量を持つ。

つまり、この場にいるタベラリウム君1号は二百体の群れとなってエイスタを襲う。

「こんなの!! なんの能力ももたないただの雑魚でしょ!! 全部壊してあげる!!」

タベラリウム君1号の群れは鞭によって少しずつ排除されていくがエイスタに迫り、廊下の壁に追い詰める。





「こんなものになにができるっていうのよぉ!!」

レンダはニヤける。

「できますよ。このために作ったんですから」

「はぁ?」

その時、エイスタは気づく。

自分の体を這い上がってきた一体のタベラリウム君1号がいることに。

「触るんじゃないわよ!!」

振り払おうとするもタベラリウム君1号の群れがエイスタの体に登ってくる。

「こんのぉ!!」

足を這い上がる大量のタベラリウム君1号に気を取られ、頭の上に登ったタベラリウム君1号に手が出ない。

すると頭に登ったタベラリウム君1号はそのままエイスタの眼球の上に乗るとそのまま急速に溶けて、エイスタの体内へ入っていった。

「ぎゃ!!!! 何すんのよ!!!! 出てきなさい!!!!」

暴れ狂うエイスタだったが、まもなくして、動かなくなる。

その場に膝をつき、前方へ倒れた。





本来タベラリウム君は『運ぶ』ことを目的に作られている。しかし、タベラリウム君2号は『毒』を『運ぶ』ことをせず、その分の余力を含めた能力を全て『密度を上げて形を保つ』ことに使用している。

タベラリウム君2号は破壊されると液体が周囲に飛び散りその残骸がタベラリウム君1号になる。

レンダは一ヶ月半の修行期間で戦闘におけるタベラリウム君の使用方法を見つめ直し、改造に成功させていた。

これらはアルガリドとの戦いでサレンと行った作戦を一人でできるようにと考えてのことだった。

レンダは言う。





「最初アナタが割った毒の瓶。あの中にもタベラリウム君1号が入っていたんです。全てはそれを悟られずに、アナタのもとへと運ぶ作戦だったんです」

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