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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season Two ダヴィ編
65/72

ラビュリントスへ

ラビュリントスは森の中にあった。

山の上からは視認できない程、森の木々に囲まれている。

苔の生えた入り口を見ただけでは、さほど大きな建物には見えないが、時間をかけて少しずつ森と同化をしているため、外壁と木々の隔たりがなくなり、全体像を把握できなくなっている。





五人と仙人、イゲティスはラビュリントスの前まで来ていた。

ガブリエルは言う。

「ねえ、これ壊せないの?」

「人間じゃ無理だな。ミノタウロスの魔法で強化されておる。主従契約中()のケルベロスにも難しい」

怪物について以前、クリファから聞いていた五人は改めて怪物の実力を思い知った。

ケルベロスを屈服させた仙人にすら「無理だ」と言わしめるミノタウロス。

魔力一つとっても人間とは魔法に対する理解力が違う。

仙人は五人に言う。

「中には魔法使いが五人いる。言いたいことわかるな」

「一人一殺。ですね」

「そうじゃ。修行の相手として儂が選んだ怪報だ。当然弱いわけはない。君等の中に例え死人がでても、助けには入らんし、死体も放置していく。死んだらそこで終わりじゃ。残った者だけが修行の続きを行える。良いな」

「はい!」





「まっ、心配するな。フィモスの民は医療の技術に長けておる」

イゲティスは言う。

「医療技術は外に持ち出すことはできませんが、あなたたちならいくらでも協力します! あと・・・帰ってきたら、もう一人の偉大な魔法使いについてお話しさせていただきます!」

五人はラビュリントスの入り口に近付いた。

この中では世界を破滅させようと企む、腕の立つ魔法使いがいる。

強敵との初の一対一での戦闘。

五人で力を合わせて一人を倒すのとは違う。

緊張を感じたまま五人はラビュリントスの中へと入った。



                 ◇◇◇



ラビュリントスの扉を五人で押して開けると、中は真っ暗だった。

「何も見えないね」

五人が足並みをそろえて、ラビュリントス内に入ると、廊下の壁の松明に一気に火が灯る。

松明の火によってラビュリントス内が見えるようになった。

入り口から続く道は一本の廊下のみで、それを真っ直ぐ行くと突き当りに左への曲がり角があった。

「取りあえず、あそこを曲がろう」




ガブリエルが言う。

「敵は見当たらないけど、どこからか襲ってくるかもしれねぇ。気を付けろ!」

五人は曲がり角まで行って突き当りを左に曲がった。

曲がった先は真っ暗だった。

再び松明に火が灯ると思い、ガブリエルは待った。

「気を付けろ! 暗闇に紛れて襲ってくるかもしれねぇ!」

すると松明に火が灯ったのか周囲が明るくなった。

前方を確認すると少し先はまだ薄暗かった。




「おい! また暗闇だぞ! 先進むか!」

ガブリエルの問いかけに返事はない。

「ん? なんだよみんな! さっきから黙って。ビビってんのか!」

そう言ってガブリエルは周囲を見渡すとそこにはさっきまで一緒にいた四人がいない。

「えっ? あれ? おいおいおい! どうなってんだよ! オリオン達どこにいったんだよ!! 一緒に角曲がったよなぁ!! まさかはぐれたのかぁ!?」

すると前方の薄暗い場所から声がする。

前方の松明に火が灯る。





そこには男がガブリエルを見ながら地面に座っていた。

ガブリエルは男の手元にナイフが握られているのを見逃さなかった。

そして、ここは廊下ではなく一つの部屋だった。

男は言う。

「確かに五人で曲がったと思うぜ。捻くれてんだこの迷宮。そういうこともあるさ」

「誰だ。お前」

「俺か? 俺は迷って戻れなくなった魔法使いだ。本当は奥にある玉座に戻りたいんだがな」

「怪報か?」

「なぁんだ知ってんじゃん。ていうかわざわざラビュリントスに入って来たってことは怪報希望者か? その年で、有望だな。先輩として俺が色々教えてやるよ!」

「違う! 俺はお前を倒しに来た!!」

「へ? 俺を? ガキが? 嘘だろぉ」

そう言って男は腹を抱えて笑い出した。





「やめとけやめとけ。お前じゃあ、俺には勝てねぇよ」

「なんだと」

「俺らは、別に卑屈になって怪報になったわけじゃねぇよ」

「あん?」

「強者は強さを求め続けるからこそ強者になり、強者であり続けているってことだ」

「そうか! わかった! じゃあ、戦おう!!」

「・・・お前話聞いてたか?」

「どうせお前は玉座に行ってミノタウロス復活の儀式とやらをやりに行くんだろ! 逃がすか!!」

「まぁ、待て待て。確かに、玉座で儀式を行うのは間違っていないが、今はそう単純な状況じゃねぇ。裏切り者が出たんだ。しかも二人。俺は今からその二人を殺しに行くんだ」

「裏切り者?」

「ああ、そうだ。だからよう、なあ、お前。名前なんて言うんだ?」





「ガブリエル・ヘルトブルク」

「俺はソラン二・ビア。なあ、ガブリエル。手を組まないか?」

「はあ?」

「だからよぉ。二人で手を組んで裏切り者二人を殺そうぜってこと。そうすれば怪報二人消えるぜ。いい話だろ?」

「お前らは仲間だろ! 罠にハメようとしているな!」





「なに言ってんだよ。元々俺達は仲間じゃない。

それぞれ野望をもってバラバラのタイミングでラビュリントスに入ったんだ。

初めは争ってたんだがな、儀式は一人ではできないことを知って一時的に手を組むことにしただけだ。俺はこの迷宮に長くいる。お前よりは迷宮のこと理解している」

「理解してるだぁ? 部屋から出られてないじゃん! それにお前どうせ裏切りそうだし! 二人殺したら不意打ちで俺の事も殺しそうだし! 話によればそれなりの手練れだろ! ここで誰の邪魔なしに一対一ででやった方が勝率は高い! それにお前は見た目が胡散臭いんだよ!」





「俺が胡散臭いだとぉ!? おめぇ! それだけは言っちゃいかんだろぉ! ようしわかった! やろうぜ! ガキの血肉は儀式に必要だぁ! 掻っ捌いて儀式に使わせてもらう!!!」

「本性表したなぁ!! この悪者目!! ぶん殴ってやるぅ!!」

「おめぇ、ガブリエル・ヘルトブルクつったかぁ?」

「そうだ!!」

「・・・・・・ヘルトブルク?」

ソラン二の動きが止まる。

「・・・なんか聞いたことあるなぁ~。なんだっけかな?・・・・・・まっいっか。外の世界なんてどうせ破壊するんだし! じゃあ、始めようぜ!!」

「なんだお前! 変な奴だなぁ!!」





ソラン二は床に手をついて言う。

「キルフィ:バースト!!!! 柵獄!!!!」

すると突如、部屋の壁や天井、床がうねりだした。

(なんだこれ!? 環境型魔法か!?)

「さあて、楽しもうぜ~~~」

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