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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season Two ダヴィ編
62/72

みちすがら

「レンダ。お前が一番貧弱だな」

あまりにハードな体術の修行に息を切らし、仰向けになるレンダにカシアスはそう言った。

「ええ・・・まあ」

「でも大丈夫! 俺が鍛えてやるよ! この体のようにな!」

そう言ってカシアスは自分の肉体を見せつけた。

「・・・それは目立つので嫌です」

カシアスは残念そうに「お・・・そうか。じゃあ、そこそこに筋肉つけてやる」と言った。

(サレンとレンダ。この二人は魔法では、高度なことをしているが体術は他の三人と比べるとまだまだだな)





カシアスは五人の今後の成長について洞察した。

(ここでの修行では、この霧の能力を突破した順に成長するだろう。


魔法を見る限り、レンダやサレンは魔法が一番難しいことをしているように見える。それは事実だろう。しかし、この修行ではアネッテ、ガブリエルがリードしている。


アネッテは剣に炎を纏うという単純なものだが、魔法はそんな単純なものではないと気づいている。


ガブリエルは、ケルベロス戦で使っていたという拳チャレンジは、恐らく多様な打撃技を打つことを求めた結果、魔法が複雑化し制御できず、自分の意思とは違う技が出るようになってしまったのだろう。そこで打撃技にそれぞれランクをつけて貯めた魔力量に応じて出る確率を設けることで遠回りながらも制御しようとしたのか。単純な話。大技は魔力が大量に必要で小技の場合、魔力は少なくていい。だから、魔力が少なければ小技しかでないが、魔力が多ければ、大技がでる可能性が生まれるということ。

子どもが考えた魔法だ。きっととんでもない発想をしたに違いない。いずれにしろ制御しきれていない状況に技名をつけたにすぎない。

だが、俺と師匠で体術を教えて、あの魔法を制御できるようになれば、とんでもないことになるぞ! 殴り合いの中で複数の選択肢の中から、最善の一手を選べる能力。楽しみだ! 早く全力のガブリエルと殴り合いてぇ!


そして、オリオン。アイツは引力を体術に合わす発想が生まれれば強くなる。引力操作は引っ張るだけではない。学院で習ったはずだ。それを体術に応用するんだ。強大な引力はとんでもない力を体に与えてくれるはずだ。

いずれにしろ、五人の実力を『アレ』までには間に合わせる)



                 ◇◇◇



「あのおっさんやばくねぇ~?」

休憩に入った五人は原っぱの上でくつろぎ始めた。

「マジやば~い。アタシら五人がかりでも勝てないのウケる~」

(軽いなぁ)

「魔法は意味不明だけど、体術は相当だね」

「うん。只者じゃないねぇ。オリオンはどうだった?」

「この強さで仙人に敵わないってどんだけ強いんだろうなって」

「まあ、怪物をペットにしているからね」

カシアスとの修行は一ヶ月続いた。



                  ◇◇◇



テッサリア地方ラーリッサのとある草原にダヴィはいた。

岩の上に腰を下ろして心地よい風を浴びていた。

ダヴィの元へ黒いスーツの老人が近づいて来た。

「モラガか」

「ダヴィ様。第三勢力について調査報告が上ってきました」

「どうだった」

「はい。やはり、第三勢力とは、災害級魔法使い・シシュ―ター率いる反体制派組織『アポドシウス』でした」

「『世界を脅かす勢力として今最も危険な組織』と外では言われているらしいな」

「災害級は、一人で都市を壊滅させる力を持つということ。更に、シシュ―ターは『怪報』としても警戒されています」

「まったく戦争中に厄介な奴に絡まれたもんだ。いや、戦争中だからか・・・」

「学院に戻りますか?」

「いや、学院の方は良い。学院の運営はルンガンに任せておこう。俺達がやるべきことは学院にはない。何が狙いかはわからないが、今第三勢力はオビアスに潜んでいる。俺が自由に動いていた方が都合いいだろう」

「シシュ―ターを討伐する作戦はおありで?」

「いや。ただ、親父と西の女王が手を組めばシシュ―ターに勝てるだろう。オビアスのため、そうなるだろうし・・・」

「どうかなさいました?」

「なんでもない。やはり・・・」

「?」

「第三勢力に勝つだけでは駄目だ。第三勢力を倒した直後、真のオビアスを取り戻す」



                  ◇◇◇



カシアスとの修行を始めて一ヶ月が経った。

カシアスはこの一か月間の修行に満足していた。

(体術を最も向上させたのはガブリエルだろう。しかし、体術と魔法の親和性を最も高めたのはアネッテとオリオンだな。サレンとレンダも動けるようになった。これなら『アレ』に送り出せる)

カシアスと仙人の前に並ぶ五人。

小屋に来た時と比べ、表情には自信に溢れていた。

体術の強さだけではなく、ここでの暮らしがそれぞれの心を癒したのだろう。





しかし、その中でアネッテの表情だけが曇っていることに仙人は気が付いた。

「どうした? アネッテ。疲れたか?」

その言葉にサレンが同調する。

「アネッテ。修行始めてからあまり元気ないんだよねぇ」

「カシアスからは一番成長したと聞いておるが。ちとカシアスがきつくあたりすぎたかのう」

「そ、そんなことないですよ師匠。な、なぁアネッテ・・・」

黙っていたアネッテは口を開く。

「カシアスにはよくしてもらってます。自分の成長度合いも満足しています。ただ、今はまだ、みんなに言えないことがあります。心の準備ができたら、私のことを話させてください」

仙人は何かを察したように「わかった。アネッテのタイミングで構わん」と柔らかな声で言った。

他の四人とカシアスも納得してアネッテに問いかけるのをやめた。

仙人は言う。

「それでは、これからの修行の話をしよう」

「きたぁー! どんな修行だろうとやってやらぁ!」

「どんな修行ですか?」



仙人は応える。

「これからとある場所に行く。君等に倒して欲しい魔法使いがいるのじゃ」

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