表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE ORION  作者: 黒羽感類
Season Two ダヴィ編
60/72

笑う兵士

「おい! キサマ! ここでなにをしている!」

深い霧の中、一人になったサレンの耳に怒鳴り声が舞い込んだ。

「だれ?」

声の方へ振り向くと軍服を着た男が一人立っていた。

急な状況にサレンは身を固くするが、すぐに状況を飲み込もうとした。

その間も軍服の男はサレンに怒鳴りながら近づいて来た。





男の様子を観察したサレンは、男の恰好に見覚えがあった。

それはサレンの故郷に駐屯していた東オビアス軍の軍服だった。

彼らは他の東オビアス軍の軍服とは全体的に配色が異なっているのが特徴だった。

そのため、一般兵士とは見た目の雰囲気が違う。

レンダは駐屯兵士を「一般兵士とはやっている仕事が違う」とサレンに教えたことがある。

それを思い出したサレンは、酷く怯えた。

(まさか! まさか! またあの姿を見ることになるなんて!)

兵士はサレンの目前にまで来てサレンの肩を掴もうとした。

「い、いや!」

サレンは兵士の手を振り払い、走って逃げた。

すると兵士も走り出した音がした。





サレンが振り返ると軍服を着た兵士の数が二人に増えていた。

サレンがそれを見て驚いている間に、兵士は次々と増えていき、十人程度までになった。

十人の兵士が追いかけてくる。

そのプレッシャーからか足元はもつれ、サレンは転んでしまった。

急いで立ち上がらなければ、兵士達に追いつかれる。

捕まれば何をされるかわからない。

そんな思考がサレンを更に焦らせる。

しかし、立ち上がろうと地面に手をつくと、サレンは気付く。

自分が転んだ先に大きな穴が空いていることに。

(危ない! もう少しで・・・)

するとすぐ近くで兵士達の声が聞こえる。

「惜しかったなぁ。もう少しで落ちるところだったのに」

「いいじゃん。いいじゃん。俺達で入れてあげようよ。あの時の仕返しだぁ」

焦るサレンだったが、恐怖で身体が思うように動かなかった。

もがくサレンを兵士達は起き上がらせて穴の中へ投げ入れた。

サレンは穴の底から兵士達を見上げる。

いつの間にか、兵士達の手にはシャベルが握られていた。

(ま、まずい! 埋められる!)





サレンは必死に穴の壁を登ろうとするも兵士達に土をかけられる。

「はははははぁ!! アイツ登ろうとしてやがるぞぉ!

「無理無理! 俺らだってできなかったんだからぁ!」

サレンは再び穴の底に落下する。

(どうにか。どうにか。脱出しなくちゃ)

藁をも掴む思いでポケットの中を探ると、ポケットの中にマメガキの枝が一つ入っていた。

(これは、いつかの・・・使えるかも。でもこれだけじゃ足りない!)

枝を地面にさしたサレンは、髪の毛を一本抜き、枝に絡ませた。

(アタシの魔力がこもった髪の毛、これなら)

更に髪の毛を数本抜いて右手に絡ませた。

サレンは髪の毛とマメガキの枝に魔法を施した。

すると、枝はぐんぐん伸びていき、地上を超えて更に伸びた。

(少し頼りないけど・・・)





サレンは、細いマメガキの枝を登り始めた。

兵士達が手に持つ物は、シャベルから剣に変わっていた。

兵士達は剣で枝を切ろうとする。

「無駄だよ!! この枝は一見細くてすぐに倒れそうだけど、アタシの魔法で強化してんだから!!」

兵士達は枝を切るのをやめて、枝を登るサレンに剣を向けた。

(何をするつもり!)

深い霧の中でもサレンははっきりと見えた。

兵士達の悪意のこもった笑みを。

兵士達は一斉に剣をサレン目がけて投げた。

(アタシに向かってくる!!)

剣がサレンに当たるその瞬間、サレンは右手で直撃しそうな剣だけを振り払った。

「ふぅ。良かった。念のため、硬くした髪の毛巻いといて」





サレンは一気に枝を駆けあがると地面の上に飛び降り、髪の毛を巻いた右手を兵士達に見せる。

兵士達はそれを見て怯えだし、歯をガタガタ鳴らし始めた。

「まだやるの!!」

「わあああああああ!!!!」

サレンがそう威嚇すると兵士達は走って逃げて行った。

(ふぅ。行ってくれてよかった。枝登ってクタクタだし、魔力のこもった髪の毛はもうないし。危なかったぁ・・・)

すると霧がサレンを避け始め、一本の道を示した。

「これが修行か・・・。よし!! やってやるっしょ!!」

サレンは一本道を走り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ