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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season Two ダヴィ編
57/72

黒髪の少女

深い霧の中、仲間とはぐれたアネッテは剣を構えた。

ルールはカシアスに辿り着いた場合、魔法無し、武器無しで殴り合うこと。

今この状況はそのルールが適応されないはずである。

そう考えたアネッテは、何かが起こるかもしれないこの状況に対応するために剣を握ったのだった。





アネッテは剣を構えたままゆっくりと一歩ずつ前進した。

その時だった。前方にうっすらと人影のようなものを見つけたのは。

アネッテは剣を強く握り、目を凝らす。

人影は段々と濃くなっていく。

(こっちへ来る? カシアス? オリオン? それとも・・・)

影は濃くなり、大きくなる。

アネッテはその人影の動きを観察した。

(近付いているだけじゃない!)

アネッテはふと影が何をしようとしているのか理解した。

人影がアネッテのほぼ真ん前に辿り着くと同時にアネッテは剣を振る。

ガキンッ! と剣と剣が衝突する音がなった。

(やっぱり! 敵! こいつを倒して辿り着けってことね!)

アネッテは相手の剣を振り払い、隙のできた敵に剣を振りかぶる。

「食らえ!」

剣を炎が包み込む。

「累!燃!・・・」

炎の剣を振り下ろそうとしたアネッテは、目の前の状況に動きを止めた。

アネッテは言う。

「な・・・んでいるの?」





アネッテの目の前にいたのは、アネッテと背格好の似た黒い髪の女の子だった。

アネッテが動揺して動きを止めている隙に、黒髪の女の子は剣をアネッテの胴に向かわせる。

間一髪で避けたアネッテは、尻もちつく。

そのチャンスを逃すまいと女の子は、無表情のままアネッテに剣先を突き出す。

アネッテは転がりながら避け、再び剣を強く握った。

女の子の攻撃を剣で受け、振り払い、アネッテは立ち上がった。

アネッテは言う。

「エレクトラ。エレクトラなんでしょ? どうして? 何をしているの?」

黒髪の少女・エレクトラは、アネッテからの問いかけに一切反応せず、剣を振りかぶる。

「エレクトラ! 聞いて!」

アネッテが応戦しようと剣を構えた瞬間。

エレクトラの剣が炎に包まれ始めた。

「この技は!?」

狼狽しながらもアネッテは瞬時に自分も剣に炎を纏う。

触れ合う炎の剣は、威力に違いはなく、反動で両者後退する。

(エレクトラが炎の剣? そんなぁ。あの子がこの魔法を使えるはずがない)





両者の炎の剣による攻撃は一度も相手の体をかすりもせず剣と剣のぶつかり合いが続いた。 互角の戦い。

お互い一切の隙もなく、全ての振り下ろした剣が相手の剣に吸い込まれていくようで、攻撃は戦いを進展させない。

しかし、確実にアネッテの体に疲労は溜まっていく。

(エレクトラの動きは全て私と一緒。これは私自信と戦っているんだ。この状況を打破するには、今ここで今までとは違う私の攻撃をしなければ勝てない!)

無表情で言葉を一言も発さないエレクトラは、剣の炎を一層滾らせて、アネッテの技『累燃火』を繰り出そうとした。

アネッテも累燃火で応戦しようと炎の火力を上げようとする。

しかし、アネッテの剣の炎はエレクトラの炎よりも出力が弱く、思うほど火力が出せていなかった。

(しまった! 疲れでマナを集めるのが遅れた!)

エレクトラよりも劣る火力での対応を迫られたアネッテは必死に考える。

(どうする? どうする? 考えろ! 累燃火の特徴を!)





累燃火は、出せられるだけの炎を『四方』に放出する技。

そのため範囲攻撃に使えるが今のアネッテの火力では万全でも攻撃範囲はそこまで広くはない。

(なら! こうすればいいじゃん!)

アネッテは『四方』に放出されるはずだった炎を一方向から放出することで剣を振り下ろす勢いが増し、攻撃の威力を増加させた。

炎が剣を振り下ろした方向とは逆の方向に放出される。

「炎衝!!!!」

エレクトラは累燃火で受けるも、押し負けて倒れ込む。

アネッテの炎衝は止まらず、そのまま刃はエレクトラを真っ二つにした。

体が二つに分かれたエレクトラは一瞬にして霧となり、始めからそこには何もなかったかのように消えていった。





エレクトラとの対戦時にはいつの間にか消えていた深い霧が再び、アネッテの周りを包もうとしていた。

アネッテはもう何もない地面を暫く見つめると語り始めた。

「エレクトラ。あなたは幻覚。そんなことはわかっている。だってもうあなたは死んでいるんだもの。あの業火によって村を焼き切った日から」

アネッテはそれだけ言うと顔を上げて、霧の中を進もうとした。

すると、霧が気流に乗るように動き始めた。

そして、霧がアネッテを避けはじめ、やがて霧は一本の道を示した。

(この道の先に、カシアスがいる!)

アネッテは進み始めた。

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