表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE ORION  作者: 黒羽感類
Season Two ダヴィ編
54/72

相性

累燃火はその時に出せるだけの量の炎を一度に全て四方へ放出する技。

急激に火のマナを集めて瞬時に炎へ変える作業はアネッテにかなりの負担を強いる。



ケルベロスに飛ばされ木に打ち付けられたアネッテは失っていた意識を取り戻した。

アネッテはふらふらと立ち上がり剣を握り直した。

アネッテは苦悶する。

炎の剣を得てからアネッテはその未来をについて考え続けていた。炎を纏う剣は炎の火力が上がれば威力も上がる。しかしそれは言ってしまえば炎だけが強くなっているに過ぎない。炎の剣としてのアドバンテージを生かしていると考えることはできていなかった。アネッテはどうすれば炎の剣としての真価を発揮できるのか悩んでいた。しかし、その答えは未だ見つけられずにいる。

考えるより今は目の前の現状をどうにかしなくては。

アネッテは走り出し、再び戦いの場へ戻った。





「うお!! 当たりだ!! (こぶし)チャレンジレア度ランキング第3位!!! 相性パンチ!!!」

そう叫んでいたのはケルベロスによって木々の中へと飛ばされているガブリエルだった。

「ガブリエル!!」

「大丈夫! すぐに戻るぜぇ!!」





戦いの場に戻るとオリオンが引力を使いケルベロスを抑えていた。

「オリオン! そのまま抑えていて! 私が攻撃する!!」

「わかった!」

オリオンは引力でケルベロスの全体の動きを封じた状態を続けた。

「累燃火!!!」

アネッテがケルベロスへと飛び上がり、剣を振り下ろそうとする。

剣がケルベロスの額に触れようとした時、オリオンは引力の放出先を下へずらした。

それによってアネッテはオリオンの引力に影響されることなく、ケルベロスの額に燃えたぎる炎の刃を押し込んだ。

「今度こそ!!!」

炎を放出しながら剣はケルベロスの額に直撃している。

炎の熱さ、剣の痛み。それらを全て受け止めてなおケルベロスは表情一つ変えない。

「熱を感じていないの!?」

左右の黒犬が牙をアネッテへと向けた。

アネッテは剣をケルベロスの額に押し込み、タメを作ってから上へ飛んだ。

片方の黒犬の牙を避け、もう片方の牙を剣で防ごうと構えたが、相手の早さを見誤る。

牙は既に目の前に来ていた。

(まずい!!)

その瞬間。アネッテと黒犬との僅かな間にガブリエルが姿を現した。





「戻って来たぜぇ!!!」

ガブリエルは黒犬の牙に拳を打ち込む。

累燃火ですら傷一つ与えられないのにも関わらず、ただの殴打が効くはずもない。

寧ろ危険な行為である。

アネッテはそう感じガブリエルに忠告をしようとした。

「ガブリエル!! 危な・・・!?」

しかし、アネッテは見た。

ガブリエルの拳が怪物ケルベロスの牙とまるで同等の攻撃のように振るわれているのを。





アネッテとガブリエルはオリオンの側へ着地する。

ケルベロスを引力で牽制しつつ、一連の流れを見ていたオリオンは疑問を抱く。

「今のなに? 魔法?」

ガブリエルは答える。

「そうだ! 今の俺はケルベロスの攻撃なら俺の拳で相殺できる!」

「なにそれ!! 無敵じゃん!!」

「そんな能力だったの!! あのダサい名前の技!!」





いつもなら二人の反応にツッコミを入れるガブリエルだったが、今はその気にはならなかった。

ガブリエルは気付かされた。自分の魔法の練度がいかに低いかを。

(さすが怪物。相性パンチの本領を発揮させてはくれなかったか)

まだ成長途中。相手は怪物。

わかっていても今の練度では本当の力を発揮できないという現実に悔しさが溢れ出た。

それでもガブリエルは切り替えた。

攻撃を防ぐ手段が自分にはあるのだ。

怪物相手でも強気に出られる。

「アネッテ!! 行くぞ!!」

ガブリエルはアネッテと共に前線へ出る。

「カバーは任せろ!!」

オリオンは再び全力の引力をケルベロスへ放出した。

体が動かず三つの頭だけで応戦するケルベロスは、それでも三人には圧倒的有利に攻撃を続ける。





例え頭が一つだったとしても一対一では負けてしまう。

そこへ矢を放ち前線の援護を始めたレンダが現れた。

矢にはタベラリウム君二号が付着している。

タベラリウム君はケルベロスの目に着地して目を濁らせる。

「レンダ。毒は?」

「準備できたよ。今持っているだけの毒を全て放つ!!」

すると木の影から声がする。

「なら!! そろそろアタシの出番だね!!」

そう言うと木の影からサレンが出てきた。

「オリオン。私がさっきみたいに木を大きくしてケルベルスを縛るから、引力の調整よろしく!!」

「わかった!! 任せて!!」

「ふふ。そしたらレンダ。その後は好きなだけ毒を盛ってね」

「うん。怪物に毒が効くかわからないけど、しっかり準備したよ」

レンダはサレンの作戦を聞くと前線にいるアネッテとガブリエルにサインを送った。





「やってくれ。サレン」

「任せてぇい!!」

サレンはケルベロスの頭上に巨木を落とした時と同じようにマメガキの苗を何重にも絡ませたものを地面に差し込み、御呪いを唱えた。

「円環の走者 御礼 羊 庭 卵 鉛 右足 木 神話に永久を」

マメガキの苗は地響きをたてながら勢いよく成長し、ケルベロスのもとへ伸びていく。

それを見たアネッテとガブリエルはケルベロスから離れる。

サレンが差したマメガキの苗は、御呪いで木の強度を上がり、更にサレンの魔法で木の成長が早まっている。





マメガキの木はオリオンの引力で移動できないケルベロスの体を掴もうとする。

木の動きを見計らってオリオンは引力を解除した。

サレンの思惑通り、強化され巨木となった数本のマメガキの木はケルベロスの自由を奪い始め、間もなくケルベロスは拘束された。





「やったぜ! あのケルベロスを拘束したぞ!!」

ガブリエルの喜びも束の間、サレンは言う。

「レンダ!! 出番だよ!!」

「うん」

レンダは手持ちの全ての毒を含んだタベラリウム君二号が付着した一本の矢をケルベロスへ向けて弓を構えた。




その時だった。

「ほっほっほ。お見事お見事」

遠くはない山頂より、声がした。

「!?」

山頂を見上げるケルベロス。

「お疲れさん。もういいぞ」

その山頂より発せられる声がオリオン達五人に向けられたわけではないことを五人はすぐに理解した。





マメガキの木に縛られているケルベロスは、立ち上がると同時に簡単に木の拘束を解いた。

それを見たオリオンは瞬時に全力の引力を向けるが、ケルベロスは引力を強め、簡単にオリオンの引力を上回った。

(嘘だろ!! 俺の全力が効かない!?)

ケルベロスの威圧が今まで以上に高まった。

(本気じゃなかったんだ)

五人がケルベロスに気圧されていると再び、山頂から声がする。

「戻りなさい」

その声にケルベロスは一瞬、頭を伏せる動作をすると高く飛び上がり、山頂へ登って行った。




すると今度は山頂から声の主が飛び上がり、五人のもとへ下りてきた。

五人は声の主の姿を見て瞬時に理解した。

声の主は言う。

「ようこそ。我が家へ。私が仙人だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ