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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season Two ダヴィ編
53/72

挑戦

一瞬にして回り込まれたことから、ただ背を向けて走っただけでは距離を取れないことをオリオンは理解した。

ケルベロスに関わらずオリオンが行う足止めの方法は一つ。

オリオンは両の掌をケルベロスに向け、制御された引力をケルベロスへ放った。

人間と魔物。

オリオンが引力を放ったことのある生物はその二つのみ。

怪物を相手にどれだけの効果を発揮するのかは未知であったがオリオンは自分の引力であれば怪物すらも抑止できる自信があった。





オリオンの引力がケルベロスに届く。

その瞬間。オリオンは怪物という存在の異常さを感じ取った。

ケルベロスはオリオンの引力を、埃を払うかの如くやすやすと振り解いた。




オリオンの思惑が崩れる。

オリオンの強大な引力によってケルベロスの動きを止め、他の四人の戦闘準備を進める狙いであったが、試練や授業によって培った『制御された引力』では怪物を止めるには力不足なのだった。




しかし、まともな引力勝負を行うのは初めてであるオリオンは、自分が引っ張り合いに負けたことを直ぐには理解できなかった。

無抵抗のままルベロスの引力に引っ張られたオリオンは大きな口を広げるケルベロスの元へ落ちていく。

(今までの感覚、常識は通じない)

三つある頭の内、真ん中の黒犬が口を広げオリオンの到着を待つ。

オリオンは成す術なく口の中へ落下しながら思い出す。




『強大な引力と魔法への高度な理解力を持つ怪物に対して、人間はその数と魔法への想像力で対抗してきました。ですから、怪物と対峙する場合、多くの命を犠牲にして対抗するのです』




クリファが学院の倉庫で五人に解いた教えだ。

(始めから全力の引力を放っていれば・・・また違ったかもしれない)



後悔を噛み締めるオリオンにケルベロスの歯が触れるその時だった。

矢が二本ケルベロスの目に向かって放たれた。

オリオンを飲み込まんとするケルベロスの目の上に矢がたどり着くその時、矢に付着していた液体のような物がぐんぐんと一箇所に集まり体をなした。

それはレンダの魔法によって生み出された疑似生物『タベラリウム君二号』であった。

二匹の疑似生物は真ん中の黒犬の二つの眼球の上に降りた。

ケルベロスは自分の視界を濁らす物体は振り張るように顔を振り始めた。




オリオンはケルベロスの口元から体を逸らしてケルベロスの体を蹴り飛ばし地面に飛び降りた。

「大丈夫か? オリオン!」

弓矢を持ったレンダが次の矢を構えながら言った。

「次は全力でいく!!」



オリオンが意気込むと背後から声がした。

「二人とも退いて!」

そう言って現れたのは燃え滾る剣を持つアネッテだった。

レンダは言う。

「ガブリエルは?」

「まだ準備中。その間、オリオン! 引力お願い!」

「任せろ!」

レンダは言う。

「僕は弓矢で援護射撃をする。だが、大量の毒を盛るためには少し時間が欲しい」

「わかった。二人で時間を稼ぐ」

そうオリオンが応えると木の影からサレンが顔を出した。

「その間はアタシが援護するから安心して!」

「よし! みんな。なんとかここを乗り切ろう!!」

レンダは木々の中に身を隠し、アネッテはケルベロスの前へ立った。





アネッテはアルガリド戦時より火力を上げた炎の剣を構えた。

「累燃火!!!!」

アネッテの持つ最大火力の技をケルベロスは咬み砕こうと三つの頭で応戦する。

しかし、ケルベロスはある違和感を覚える。

首から下の自由が効かないのだ。

端の黒犬が睨む先にはオリオンがいる。

ケルベロスはオリオンの引力によるものだと直ぐに察した。

オリオンは引力のアネッテへの影響を考慮して引力の放出先をずらしていた。

そのためケルベロスの体全体の動きを止めることは出来なかったが、俊敏性は衰え、動きにタメをつけられなくなった。

だが、それでもアネッテの最大火力の一撃を退けるには十分だった。

アネッテは剣ごとはじき返され、木々の中へ消える。





そこへ木の影からサレンが現れた。

「今度はこっちぃ!!」

手に持ったマメガキの苗を何重にも絡めて作った苗の棒をケルベロスへ向けて振った。

すると振った反動からか苗はぐんぐんと成長し、学院の授業で見た巨木よりも更に大きくなっていった。

マメガキの木はその勢いのままケルベロスに激突する。

巨木はそのままケルベロスの上に覆いかぶさり、地響きと共に砂煙が舞う。

「へへん!! どんなもんだい!!」

サレンは誇らしげにそう言うとまた木の影に隠れた。

オリオンは一人、ケルベロスの動向に目をやる。

砂煙が晴れると巨木を真っ二つに咬み砕いたケルベロスが立っていた。

口の中にある巨木の欠片を吐き捨て、オリオンを睨む。





オリオンはケルベルスに掌を向ける。

殺気を強めたケルベロスはオリオンへ向かって走り始めた。

それを見たオリオンは恐怖から体が固まり、引力を放出するタイミングが遅れた。

(しまった!!!!)

オリオンの引力の放出先を予想して避けたケルベロスはオリオンに巨大な爪をもってして屠りに来る。

(やられる!!)



その瞬間、木々の中から誰かが飛び出した。

「くらえ!! (こぶし)チャレンジ!!!」

それはガブリエルだった。

ガブリエルはケルベロスの頭に拳をぶつける。

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