表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE ORION  作者: 黒羽感類
Season Two ダヴィ編
52/72

脅威

古代の魔法使い・フィレルメイットは怪物と人間の違いをこう解いた。



「怪物は生物としての『肉体』と魔力が集まって形成された『魔力体』を有しており、

人間は生物としての『肉体』と『生命の根源』を有している。

そして怪物と人間は二対の関係で存在している。

しかし、魔法においてその差は激しく、魔力体を持つ怪物に魔法の練度で勝つことはできない。

生物では人間にのみ存在する『生命の根源』は怪物にとって脅威になるはずである。

事実、魔物は人間によって生み出された。

故に、そう遠くはない未来で

我々人類が魔法に対して怪物と同等の影響力を獲得することは確実である。」



     ◇◇◇



相変わらず濃く広がる霧は晴れる気配を感じさせなかった。

小屋のドアを開けて知らぬ土地に足を踏み入れてから多くの時間を山登りに費やした。

エルザが道案内として放ったギムレットと別れてからもそれなりの時間が経っていた。



「なあ、エルザ先生が言ってた仙人ってどんな人なんだろ」

疲労で会話がなくなっており、久しぶりにガブリエルの声を聞いた。

オリオンは答えた。

「体術の達人らしいよ」

「オリオン知っているの?」

「ライトから聞いたことがある」



    ◇◇◇



エルザが用意した五人の隠れ蓑についての説明は端的なものだった。

エルザによる最後の授業後、五人はこれからの行動について説明を受けていた。

「学院とは真反対の場所にあるオッサ山という場所に行ってもらうわ。

まあ、そもそもアンタ達は学院の場所も知らないでしょうけど。

それで、その山に住んでいる仙人と呼ばれる老人に匿ってもらうのよ」

レンダはいつものように挙手をして質問をする。

「オッサ山と言ってもどこを目指して行けば良いのでしょうか?」

「安心しなさい。仙人にとってオッサ山は庭みたいなものだから。山に入れば必ず出会えるわ」



    ◇◇◇



オリオンは『仙人』という言葉を聞いてライトとの会話を思い出した。

ライトもエルザ先生から聞いたと言っていた。

オリオンの応えに四人はオリオンの気持ちを慮る。

「ライト・・・」

いつぶりかの会話が終わりそうになる。

それを察したオリオンは明るい顔を見せた

「はは。大丈夫だよ。強くなって取り戻そう」

その言葉は本心であり、決して取り繕ったものではない。

話題を振ったガブリエルが元気に返事をする。

「おう!」

再び、ガブリエルを中心に会話が弾む。

暫くしてこれからについて話が及んだ。

レンダは言う。

「しかし、学院から持ってきた食糧がつきそうだ」

「そろそろ着かないと腹ペコで不機嫌になっちゃうよぉぉ!!」

「サレンちゃん。そこなの?」

濃い霧の中、一筋の光が見えた。

「ねぇ!あれって!」

「日差しかな?」

「てか、今って夜なの?昼なの?」

「とりあえず行ってみよう!」

五人は光が指す方へ走り出した。





光に近づけば近づくほどに霧は薄くなっていく。

光へと段々近付いて行く。

もう少しで霧が晴れるその時だった。

まだ薄い霧の向こうに何か大きな黒い影が立っているのがぼんやりと見えた。

五人は目を凝らしながら夢中でその黒い影へ走った。

近付けば近づくほどにとてつもない威圧を感じ取った。

レンダはいち早くのその威圧の正体に気付いた。

レンダが言う。

「止まれ!! これは引力だ!!」

しかし、遅かった。

霧は晴れ、その巨大な黒い影の正体が露わになった。



「あれは・・・」




五人の前に立っていたのは、黒い巨体に三つの頭を持つ怪物。

ケルベロスだった。





「なんでこんなところに!?」

「わからない」

「仙人はどこだよ!」

ケルベロスは右前足を上げて五人の前へ振り落とす。

地鳴りと共に砂や石が飛び散り、五人はその衝撃で背後へ飛ばされる。

明らかに友好的ではないと察した五人は立ち上り、踵を返して走り出した。

霧の中に紛れれば逃れることもできるかもしれない。

そう期待して振り返ったが来た道に霧はなかった。

まるでそこには初めから霧など存在していなかったかのように。

期待を裏切られてしまったが、五人は逃げ切ることを諦めなかった。

(こんなところで怪物に殺されて終わりたくない)

まだやらなければならないことがある。





ケルベロスは飛び上がり、一瞬にして五人の目の前に着地した。

五人の逃げ場を塞ぐ。

(やらなきゃいけないのか)

(怪物と戦うのか)

ガブリエルは言う。

「オリオン! どうする!」

逃げることができないのならば、一つしかない。

五人でなら士師を倒せた。

オリオンは言う。



「戦おう!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ