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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season One 学院編
50/72

紐帯

襲撃後、三日で学院は再開した。

校舎や寮への被害が僅かだっためでもあるが、学院最高責任者であるダヴィの命により、早急にカロス及びメタリオスの底上げを行うためであった。

それは学院にとっての大きな損失を穴埋めするためだった。

襲撃によって行方不明になったのは、ライトのみにとどまらず襲撃時、学院敷地内にいたタレッドの生徒全員だったからだ。

学院の見解は第三勢力に誘拐されたというもの。

よって、学院に残った生徒への教育をタレッドと同等のものにして戦力の均衡を崩さないよう命令したのだった。




オリオンのクラスを担当するのはエルザ・シュウだった。

エルザが教室に入り、これからの方針を話そうとすると生徒達は皆、クリファの質問をするのだった。

エルザはその生徒達の反応を見て、クリファが信頼されていたことを知った。



     ◇◇◇



エルザは授業が終わるとオリオンたち五人を呼び寄せた。

呼び出された場所は、まやかしの森にあるエナフェロー演習場だった。

二つあるうちの一つは襲撃によって破壊されたが、もう片方は森林スペースを除いて残っていた。





演習場にはエルザが先に来ていた。

五人はエルザの前に並んだ。

エルザは五人がいることを確認すると口を開いた。

「二日後。ダヴィ・アーリマンが学院に来ます」

「士師が!?」

「今回の襲撃の調査と戦力強化のために視察をしに来ます」

「それがどうかしたんですか?」

「襲撃犯と対峙した人間へ聴取が行われるでしょう。あなた達も例外ではありません。そこであなた達に質問があります。第五士師アルガリドを倒したのは本当にあなた達なのですね?」

「はい。俺達が五人で倒しました」

「そうですか」

そしてエルザは続ける。

「あなた達は軍に捕まるでしょう」

「えっ!? 何故ですか? 士師を殺そうとしたからですか? しかし、あの人は襲撃犯ですよ!!」

「わかっています。しかし、問題はそこではありません」

「・・・なんですか?」

しかし、その質問にはエルザは答えなかった。





「兎にも角にも。あなた達を学院に置いておけなくなりました」

「どういうことですか・・・。なぜ・・・」

「なので、これから最後の授業を行います」

「最後の授業?」

「今から一人一人の魔法練度を見て、指導していきます」

「エルザ先生が!?」

「何か問題でも?」

「いいえ! ありません!!」

「ならば、始めます」





言われるがままに、五人はエルザによる特別授業を受けることにした。

まずは、オリオンがその強大な引力を披露した。

エルザは言う。

「それだけ強力な引力を発するポテンシャルがあるのにもったいない。引力ってのはね何も手からしか出てないわけじゃないのよ。もっと体全体を意識しなさい。そうすれば今よりも引力が強くなるわ」

「ありがとうございます!!」

「次」


続いて、アネッテは剣に炎を纏わせた。

「どうですか?」

「それが全力? もっと出せるでしょ」

アネッテは出来る限り火のマナを刃に纏わせた。

「いい炎を出すわね。でもまだ出力が安定していない。もっと火種を想像しなさい。火のマナはこの水や植物に溢れた森の中でもそれらのマナに負けないくらい存在しているのよ。乾燥や摩擦。火が起こりそうな現象を想像するの」

勝手に火のマナが集まっていたアネッテにとって意識的にマナを集めるアドバイスはとても新鮮だった。

「ありがとうございます!!」

「もし、どうしても炎が纏えない時がきたら『サラマンダー』を呼びなさい」

その言葉にアネッテは、襲撃時剣先に誰かが触れた感覚があったことを思い出した。

「次!」


ガブリエルは拳技こぶしチャレンジを見せた。

木に取り付けた的にアルガリド戦で使用した魔法だった。

「どうよ!!」

エルザは冷静な口調で言う。

「あんたに足りないのは体術の先生ね。専門性を持った人に教えをこいなさい」

「え!? それだけ!!」

「あんたの魔法は完成された体術でこそ光輝くわ」

「うすっ!!」

「次!!」


サレンは紐を使った魔法を見せた。

サレンが投げた紐はヒラヒラと的の上に乗ると、その瞬間力強く的に絡みついた。

「何かに触れると絡まるように予め命令してあるのである!!」

「そうねぇ。小さい物に留められる魔力は少ない。逆に大きなものに留められる魔力は多くなる。あなたには小さい物をコツコツ積み上げるのがお似合いね」

「アタシもさんせーい!!」

「次ぃ!!!」


レンダはタベラリウム君一号を見せた。

「今はこれぐらいしかお見せできません」

「十分。疑似生物を作る魔法はいくつかあるけれど、大抵の場合、形をはっきりさせる程に実行可能な命令の数は増えていくわ」

「精進します!!」




ただ淡々と五人にアドバイスを送っていたエルザだったが、五人の実力に驚いていた。

(クリファ!! こんな生徒を見ていたのね。おそらくこの五人だけが飛びぬけて能力が高い。いいわ。やってやる!! 時間の許す限り、この子たちを開花してあげる!!)



      ◇◇◇



そして、エルザによる特別授業が終わった。

再び五人はエルザの前に整列した。

「最後にあなた達に言わなければいけないことがあるわ」

「なんですか?」

「先ほども言いましたが、あなた達はこのままだと軍に捕まります。なのであなた達を隠さなければなりません」

「隠すとは?」

「あなた達を学院から逃がします!! そのための手配も既に済んであります。決行は今夜!!!」

五人は急な話に驚愕した。

「こ、こ、こ、今夜!?」

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