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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season One 学院編
47/72

襲撃②

クリファはまやかしの森に入り、五人の引力を探ろうとした。

引力は繋がり、お互いが引力を発せれば、どこかで触れ合うはずなのだ。

クリファは思う。

(私はまた、子ども達の命が終わるのを間抜けにも許してしまうのか)

オリオン達が何故学院へやって来たのかは知らない。

ウロボロスの五人とオリオン達五人を自然と重ねてしまっている。

彼らは違う。それに今回はしっかり監視していた。

それでも、消えない不安。

(だって獣の刻印は・・・・・・)






その時だった。クリファを目がけて魔力の弾が飛んできたのは。

クリファは即座に片手で払う。

(来たか!!)

まやかしの森に入れば、襲撃を行った魔法使いに出会うことはわかっていた。

だからこそ、早く五人を見つけたかった。

足止めをされるのは避けたかったクリファだが、瞬時に気持ちを切り替えた。

森の中を見渡す。

魔法使いの姿は見えない。

クリファは言う。

「お粗末な純度だこと。マナの集めかたも知らないのかしら」

すると木の上から叫ぶような男の声と共に誰かが下りてきた。

「おい! 誰に言ってんだそれ!!」

男は落下の勢いを使って魔法武器をクリファの上に振り下ろした。

クリファは避けたが魔法武器が地面をえぐり、砂埃がたった。






砂埃が晴れると一人の男が立っていた。

クリファは男の顔を見て驚愕した。

(何故ここにいるの!? 西オビアス国第四士師リーストン・アフラ!!)

西オビアス国。クリファたちが住む東オビアス国の戦争相手。

確かに戦争相手ならば襲撃をしてくる可能性はある。

だが、女王の子である士師が規定を破って学院を襲撃するのか。

クリファにとって最もありえない相手だった。






リーストンは言う。

「謝れよ!! 学院教師ごときが俺に放って良い言葉じゃない!!」

「士師。何故、規定を破ったのですか!!」

「あん? そんなの決まってんだろ。全てを手に入れるためだよ。それにそっちの士師だってどうせいつかは同じことしただろうぜ!! 特にダヴィとかな!!」

「我が国の士師はそのような利己的な考えはしません!! いくら士師とはいえ侮辱は見逃せません!!」

「はははは!!!! いいぜ!!!! 言葉なんかいらねぇ!!!! さっさと殺し合おうぜ!!!」




リーストンが持つ魔法武器は、リーストンの身長と同じくらいの長さがあった。

持ち手が細く先にいくと楕円形に大きくなる。

楕円形の先には小さな穴が開いていた。

名を『ゾイエクソシア』という。






(さっきの攻撃はあの武器から?)

クリファは、闇属性の魔法を使って蛇を十匹呼び出した。

「行きなさい」

蛇はリーストンへ噛みつこうと襲い掛かる。

リーストンはゾイエクソシアを狂暴に振り回して蛇を殺していく。

「おいおい。闇魔法だからどんなもんかと思えば、ただの蛇出しただけかよ。がっかりさせんなよ」

クリファは、今度は倍の二十匹の蛇を呼び出した。

クリファも蛇と共にリーストンへ攻撃を仕掛ける。

リーストンは蛇を払いつつ、クリファの近接技をあしらう。

クリファがリーストンの攻撃を腕で受け止めた瞬間、地面から巨大な蛇が口を開けてリーストンを飲み込まんとする。

しかし、奇襲に対してリーストンは簡単に対処してかわしきった。

巨大な蛇は数百匹の蛇が集まって体を成していた。

かわされた巨大蛇はバラバラに分かれて、リーストンの頭上へ落下する。

「俺に触れられるとでも?」

リーストンはゾイエクソシアの先端を頭上の蛇へ向けた。

ゾイエクソシアの先端の穴から、魔力の刃が飛び出し、数百匹の蛇たちを切り刻んでいった。




クリファはリーストンの対応の早さに疑念を抱く。

(早い? いや、本当に見て反応しているのか? 攻撃を予知しているのか? しかし、未来予知は預言者の一族でなければリスクが大きすぎる)




リーストンは言う。

「今度はこっちから行くぞ!!!!」

ゾイエクソシアは魔力を自由な形と強度で放出することができる魔法武器。

リーストンは一撃目よりも魔力の純度を上げた。

連射された魔力の弾は一撃目とは威力が段違いだった。

クリファは受けることはせずに避けた。

しかし、それをリーストンは読んでいたかのように放った魔力の波がクリファに覆いかぶさろうとする。

クリファは蛇を大量に呼び出して、波よりも早く自分を蛇で覆った。

蛇が死んでいく中、軽傷で済んだクリファは更に蛇を呼び出し、リーストンへ放つ。

放たれた蛇はこれまでとは違って、体を真っ直ぐにしてリーストンのもとへ飛んでいく。

リーストンが蛇を避けると蛇は地面に突き刺さった。

突き刺さった蛇は急激に長さを変えて、リーストンへ巻き付こうとする。

だが、それをゾイエクソシアの魔力の刃で全て切り捨てた。




リーストンはゾイエクソシアから魔力の鞭を出して、クリファに振り下ろす。

クリファを狙って暴れる鞭を蛇によって回避しようと試みるが、全てを防ぐことは出来なかった。




(やはり、私の動きが読まれている!!)

立て続けに行われる攻撃を闇の魔法によって対応してきたため、マナの供給が間に合わず、魔力量が著しく低くなっていた。

クリファがマナを集めるために引力を解放したその時だった。

(・・・これは!?)






クリファが気付いたのは、リーストンの引力の圧が出会った時から一定であることだった。

魔法による戦闘は、引力によってマナを集めながら行われる。

今この時もお互い引力によってマナを集めている。

魔法を使用中は引力でマナを集めるのは不可能で、魔法使いの状況によってはマナを集める力が衰えることはよくある。

そのため、戦闘中魔法使いから放たれる引力による圧には波がある。

しかし、リーストンにはそれがない。

そして、圧がそれほど強くないのだ。



(微弱な引力。常時引力の発動!? そうか!! 引力による予想!! これがリーストンの能力の正体!!)



リーストンはクリファの表情を見て察した。

「気づいたか。俺がお前の動きを読めていた理由が。だが関係ない。種がわかっても対応できないのがこの能力の利点」



リーストンが使用する魔法武器ゾイエクソシアは、マナの種類を選ばない。

ゾイエクソシア内であらゆるマナを混ぜて魔力を生成している。

そのため、魔力に属性がつくことはない。

この特性が微弱な引力であってもマナを集めて溜めることを可能にしている。

加えてリーストンは手以外からも引力を発している。



リーストンは言う。

「通常、引力は手のひらから出すよう習う。手は繊細な動きが可能だ。だから引力を操作しやすいと考えられている。しかし、俺は体全体から引力を放つ!!」



(そして、それが他者の引力と繋がることで予想を可能にしている!!)



「更に、魔法による攻撃はゾイエクソシアで行う。だがら、俺は引力を発動し続けられる」



クリファは考える。

これ以上時間はかけられない。

この時も子ども達が危険な目にあっているかもしれない。

今後、他の魔法使いと連戦になる可能性だってある。

ここで立ち止まっている場合じゃない。




「さあ!! どうでる!! 女教師!!」




クリファは思う。

(子ども達を助けることを考えたら余力が欲しい。だからお願い!! 力を貸して!!)




瞬間、クリファの背後に大きな紫色の渦が現れる。

生成しただけの魔力を全て使ってクリファが発現したものだった。




「あん? またデカい蛇でも出すんか? 馬鹿の一つ覚えだな」

しかし、直ぐにリーストンはその場から逃げ出さなかったことを後悔した。




紫の渦からはクリファよりもはるかに背の高い女が現れたのだった。

女は体調が悪そうに俯いていた。

顔は髪の束で覆われており、目視できなかったがリーストンはそれが髪ではないことに気付くのに一秒もいらなかった。

女はクリファの肩にもたれかかった。

次の瞬間、女はゆっくりと顔を上げてリーストンと目を合わせた。

リーストンは声にならない声で言う。

「何故、怪物が、お前と・・・・・・」

リーストンが全てを言う前に、リーストンは石になってしまった。



紫の渦から出現したメデューサはクリファの目を横から見つめる。

クリファは言う。

「もう少し。待っていて」

メデューサはその言葉を聞くと紫の渦となって消えた。



クリファは安堵した。

この程度の消耗で済んで良かったと。

(これならまだ戦える。早く!! 子ども達を!!)



クリファがまやかしの森奥へと走り出そうとしたその時。

クリファは自分の腹部が熱くなったのを感じた。



見るまでもなかった。

クリファは直ぐに何かが自分を貫いたのだとわかった。

黒い大剣が背中から腹に貫通していた。

「ぐはっ!!!」

口から大量の血が飛び出した。

刺した犯人を見ようと振り返ったが人の姿はなかった。

クリファはそのまま倒れ込み、意識を失った。




死闘が行われたその場所には、不気味な笑い声と黒い影が動くだけだった。

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