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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season One 学院編
44/72

(防ぎきってやる!!!!)

引力と魔力がぶつかり合う。

オリオンはまず、引力操作の留保を使い、魔力の塊をその場に留めてから魔力の塊のコントロールを得ようとした。

これはスキオロスから攻撃を受けた際、二匹のジャッカロープに対して無意識にやっていた操作だ。

(凄まじい威力だ!! 俺の引力で耐えられるか!?)

引力操作では通常『引っ張る』操作が最も力を発揮する。

『留保』や『反発』の力は『引っ張る』よりもやや劣ってしまう。

それでもオリオンの引力は強大なため、本来はその心配をする必要はない。

アルガリドが『怪物の一撃』に匹敵すると称したその攻撃は、真実は兎も角オリオンの引力を以てしても強力なものだった。

「うおおおりやぁぁ!!!!」

引力は魔力の塊を捉えた。

続いてオリオンは魔力の塊を空に向かって解き放とうと両手を空へ向ける。

「行ってくれぇぇぇ!!!!!」

両手が空を向くと同時に引力によってコントロールされた魔力の塊は、上昇して引力のコントロールから解放される。

魔力の塊は空へ打ち上げられて、そのまま轟音と共に破裂した。






森には引力を全開にしたオリオンと切り札を使ったアルガリドが満身創痍で立っていた。

「本当に防ぐかよ」

「続きをしよう」

アルガリドが胸ポケットからカードを取り出すとオリオンはアルガリドがいる方向とは逆の方向に全力で走り出した。

「言葉だけか? もう限界なんだろぉ!!」

アルガリドもオリオンを追って走る。






(体術なら俺の方が上!! カードで動きを止めて近接戦にもちこむ!!)

アルガリドは水の壁をオリオンの進行方向へ出すがオリオンはそのまま水の壁へ飛び込んでいき、通り抜ける。

(攻撃用ではないとはいえ、今の状態ならダメージはあるはず)

実際にオリオンの走る速さは落ちていた。

(もう一回!!)

水の壁がオリオンの前に現れると、オリオンはコケるようにして水の壁へと飛び込む。

転がるっていくオリオン。

(よし!! あいつはもう限界だ!!)

転がるオリオンは木にぶつかって止まる。

アルガリドがそれを目視すると逃げる隙を与えないようにすぐさまオリオンに近付こうとする。

オリオンへあと数歩といった所まで来たその時だった。

アルガリドの足元から突如として太いロープのようなものが伸びてきて、アルガリドを縛り始めた。

(なんだ!?)

アルガリドを縛るものそれは、巨大化した草だった。

アルガリドはもがきながら脱出を試みようとすると更に足元からマメガキの苗が伸びてアルガリドを包む程の木に成長した。

「罠か!!」

アルガリドのその言葉に木の影に隠れていたサレンが現れる。

「そうだよ。あんたがオリオン達と戦っている間に張らせてもらったよ」

アルガリドの口元がニヤつく。

「お前ら程度の魔法で俺を縛っていられるとでも!! プミリオ!!!」

アルガリドは胸ポケットにいる小人を呼び出した。

アルガリドをサポートしていた小人にカードを出させるつもりだった。

しかし、ポケットでもぞもぞと動いていた小人の動きが止まる。

そしてアルガリド自身も動けないことに気付いた。

サレンは言う。

「わかっている。だから二段構え!!」

アルガリドの目の前には両手をこちらへ向けるオリオンが立っていた。

サレンとレンダの魔法を邪魔しない程度に補助として微力な引力を放っていた。

そもそも今のオリオンでは疲労でそれが精一杯だった。






(だが、これも限界だろう。オリオンは疲労困憊。やはり俺を長時間縛っておく手段はない)

そう考えるアルガリドの思考を読んだかのように木の上から声がする。

「長時間縛っておく必要はないよ」

それはレンダだった。

「あなたは今ここで死ぬんだから」

(こいつ!! 俺が死ぬだと!? 並みの魔法使いとは鍛え方は違うんだ。俺はあの魔王の息子だぞ・・・)

「言い残すことはないね。まぁ、喋れないか」

レンダはポケットから小さな瓶を取り出して蓋を開けた。

「頼んだよ。タベラリウム君一号」

そう言って瓶をひっくり返すと中からドロッとした半透明のものが落下した。

半透明のものはアルガリドの顔の上に落ちてうねうねと動いたかと思うと、カタツムリの形になった。

カタツムリの殻の部分には青黒い塊がある。

カタツムリはアルガリドの顔の上を進んで鼻の穴の中へと入っていった。

アルガリドの表情が恐怖で満たされる一方でレンダの目はただ、死にゆく者を観察していた。






アルガリドは声にならない声を上げながら苦しみ、やがて動かなくなった。

それを見てレンダは木の上から降りた。

オリオンは引力を止め、座り込んだ。

サレンがアネッテとガブリエルを心配する言葉を発すると同時に草影からアネッテとガブリエルが姿を現した。

「終わったのか?」

「もち!! 大成功!!!!」

「よかったぁ。死ぬかと思ったぁ」

喜ぶ四人とは逆にレンダはアルガリドの体に触れて残念そうな表情を浮かべていた。

それに気づいたオリオンはどうしたのかと尋ねた。

「この人まだ死んでないよ」

四人は一斉に驚きの声を上げた。

「やっぱり士師だね。普通の致死量じゃあ、死なない。もっと精度を上げないと」

ガブリエルが「ホントしぶといなぁ。このおっさん」と言うとサレンが「アルガリドはまだ十八歳だけどね」と返した。



「サレンの魔法ってどうやったんだ?」

ガブリエルの質問にサレンは得意気に応える。

「ふふふ。あれはねぇ。まず、二本の草を用意するの。片方には刺激したものに絡まるようプログラムして、もう片方には刺激を受けたら急激に成長するようにプログラムしたの。で、二本の草を結ぶと二つのプログラムを持った一本の草になるの。それで草が刺激を与えられた時に成長して対象に絡みつくんだよ!! わかった? ちょっと難しかったかな?」

「へぇ~。よく考えるなぁ~」

「オリオンが罠を上手く避けてくれてよかったよ。水の壁に飛び込んだ時は冷や冷やしたぁ~」

「あれは俺も焦ったよ・・・」

「それで、ガブリエルの技は何?」

「俺の技はその名も『拳技こぶしチャレンジ』だ!!!!!」

「えっ・・・・・・だっさ!!!!!」

「だ・・・さい? センスの塊だろうがよ!!」

「いや、マジないわぁ~。アタシがつけようか?」

「いーんだよ!! これで!!」








アネッテが言う。

「ねぇ。早く学院に戻らなくちゃ! まだ襲撃を仕掛けてきた魔法使いがいるかもしれない!」

その言葉にレンダが返す。

「確かに。魔物はいつの間にかいなくなっているけれど、今の僕達にこのレベルの魔法使いを相手にしている余力はもう残っていない」

「じゃあ、行こう!!」



そう言って学院へ踏み出した五人に草影から視線を送る者がいた。

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