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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season One 学院編
41/72

炎VS水

ガブリエルとアルガリドから距離を取ったアネッテは剣を構えて目を瞑り火のマナに集中した。

アネッテは直ぐには集中することは出来なかった。

火事が故郷を想起させるというのもあるだろう。

初めての自分を殺そうとする強者との戦い。

強くなければ死ぬのみ。

戦地に立てばこれが当たり前なのだ。

なのであれば、早くマナを集めてガブリエルの所へ戻らねばならない。

その思考がアネッテを焦らせた。



そもそも本来であれば水のマナを集め、水の魔法使いになりたかった。

今回のように森に火が点けばその水魔法で悪魔の火を消し去る。

そんな魔法使い。そして強い人間になりたかった。

だが、唯一集められるマナは火のみ。

このまま火の魔法使いになることと戦争を止めるという目的を諦めること。

その二つを天秤にかけた。

そして、アネッテは魔法使いとして強くなって人を救うことを決断した。

(村を燃やし尽くした忌まわしき火。そう思っていた。でも火が悪いんじゃない。火を扱う側が正しい心を持っていること。それが大切なんだ!! 私は火をもって火を制す。そんな魔法使いになるんだ!!)

瞬間、アネッテの剣先に誰かが触れた気がした。

優しくそれでいて赤子のような無邪気な触り方。

同時にアネッテの心に燃え上がる闘争心が湧き出た。

アネッテは目を開いた。

刃が今まで見たことない程に炎を滾らせていた。



     ◇◇◇



「逃げずに戻って来たか」

「当たり前でしょ!!」

アネッテは剣先をアルガリドに向けた。

アルガリドはアネッテの放つ炎の火力を認めた。

(俺ももう少し楽しむか)

ガブリエルはアネッテに魔力壁について話す。

「あいつの体の周りを良く見てくれ」

アネッテは目を凝らしてアルガリドを見た。

アルガリドの体を虹色の魔力が包み込んでいるのに気付く。

「あれが!」

「うん。あれを剥がすには高い火力が必要だ」

「ねえ。思うんだけど」

「なに?」

「魔力なら魔法使わせればいいんじゃない?」

(確かに。あの一度だけ出したカードの魔法。あれが本来のアルガリドの魔法だとしたら・・・)

ガブリエルはアネッテに考えたことを伝える。

「うん! やってみようよ!」

「よし!! 行こう!!」






二人がアルガリドに攻撃を始めようとしたその時、水の槍がアネッテを襲う。

アネッテは後れを取ることはなく、炎の剣で全てを弾いた。

炎は消えることなく健全に燃え続ける。

「嬉しいねぇ。俺のために覚醒してきてくれたかぁ」

「あんたのためじゃない!!」

アネッテが剣を振りかぶる。

アルガリドは胸ポケットからカードを取り出したかと思えば、アネッテの前に水の壁が出現して、アネッテの剣は水を切るにとどまった。

アネッテと距離を置いたアルガリドにガブリエルは「逃げんなよ!!」と言って殴り掛かる。

アルガリドがそれは受け止めると再びガブリエルの拳が飛んでくる。

(また、これか)



アルガリドは謎のガブリエルの拳を避けもせず、ただ眺めた。

そして、アルガリドの顔面に直撃するが魔力壁によってダメージはない。

(こいつ。今わざと攻撃を受けたか!?)

その間もガブリエルは攻撃をやめない。

アネッテがアルガリドの背後に回り込み、剣を振りかぶる。

アルガリドはガブリエルの攻撃を全て受けながら、カードを出した。

(こいつ!! 俺の攻撃をなんとも思っていない!!)

カードから水の体をもった虎が飛び出してアネッテに襲い掛かる。

ガブリエルに振り返ったアルガリドは「お前はもういい」と言ってカードをガブリエルへ向けた。

「イグニススフェラ」

そう呪文を唱えるとカードから火の弾が放たれ、至近距離でガブリエルに直撃した。

「ああああ!!!!!」

ガブリエルはそのまま勢いよく吹っ飛ばされ、木に体を打ち付け、気を失う。

「ガブリエル!!!」



水の虎を切り裂き、アネッテはガブリエルへ駆け寄る。

アルガリドは言う。

「一人目。お前も片付けて他の三人も始末する。何やってんだろうな。あの三人」

アネッテは剣を構える。

「私がここでお前を倒す」

「じゃあ、もうちょい火力の高い水技出してやる。それで終わりだ」

アルガリドは胸ポケットからカードを一枚取り出した。

「来い!! ネロラチェルタ!!!」

カードから飛び出したのは、全長三メートルはある翼を持ったトカゲだった。

「行け!! あいつの全ての炎を消し去れ!!」

アネッテは剣を振りかぶった。

刃を包む炎はより一層燃え盛る。

「累燃火!!!!」

水のトカゲに炎の刃が切り込む。

「おおおりゃぁーー!!!!!」

水蒸気が巻き起こり、アネッテとトカゲを包み込む。

水蒸気の中で鳴り響くアネッテの声とトカゲが切られる音はやがて静かになった。






アネッテたちを包んでいて水蒸気が晴れる。

そこには剣を地面に刺して、息を荒げるアネッテが膝をついていた。

「ここまでだな。メタリオスにしてはよくやったよ」

「はあはあ。まだ終わっていない」

アルガリドはアネッテに近付いて蹴り飛ばした。

アネッテはそのままガブリエルのところまで飛ばされる。

「じゃ、これで終わりと」

そう言って、二人にトドメをさそうと近寄ったその時、アルガリドは自分の体が動かなくなっていることに気付いた。






(なんだ。なぜ体が動かない)

真下にいるアネッテがニヤッと笑ったのがわかった。

「何をした!」

「私は何もしていない」

アネッテはアルガリドの背後を指さした。

アルガリドは振り向けない。

しかし、背後に誰かが立っているのを感じた。

「誰だ! お前!!」

「これ以上二人に手を出すな。俺が相手をする」

アルガリドはその声に聞き覚えがあった。

「まさか。さっきのガキ!?」

アルガリドは驚いた。

ガブリエルとアネッテとは別行動をしていたあの三人の内の一人が自分の動きを完全に止めているという事実に。

(ありえない!! どうやって!!)

幸い動きを止めている者以外、攻撃をする者はいない。

ガブリエルは気絶し、アネッテは疲労で剣すら握れない。

やがて、体を縛っていた何かが解かれた。

すぐさまアルガリドは振り返った。

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