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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season One 学院編
40/72

反撃

痛みが弱まり、自分の足で走れるようになったガブリエルは言う。

「なあ、おい。このまま逃げるのか?」

しかし、四人からの反応はなかった。

ガブリエルは再び問いかける。

「聞いてんのかオリオン」

オリオンは静かな口調で応えた。

「そんなわけないだろ」

レンダが言う。

「ムカついた。やり返そう」

ガブリエルは察した。

先ほどの四人の沈黙は怒る心を鎮めようとしていたのだ。

冷静でなければ判断が鈍り、まともな作戦がたてられない。

「そうこなくっちゃな!!」

五人の考えが一致すると、サレンがこの場に相応しくない、サレンらしいテンションで話始めた。

「ぴぴっ!! アタシぃ閃いちゃったぁ!!」

「何? サレン」

「ふふふ。特別な作戦。みんな!! 耳貸して!!」

サレンは四人に作戦を伝えると五人は意気込んだ。

「痛い目みせてやる!!」






アルガリドが五人に追いつくのにそう時間はかからなかった。

「この俺を振り切れるわけないだろうが!!」

五人は目と鼻の先。

アネッテとガブリエルが振り返る。

「気づいたか」

アルガリドが捕まえるべく五人に手を伸ばした瞬間、ガブリエルに振り払われる。

「お前の相手は俺たちだ!!」

ガブリエルとアネッテは立ち止まり、臨戦態勢に入った。

「あん? 二人だけ? それで俺に勝てるとでも」

目の前には拳を構えるガブリエルと剣を構えるアネッテ。

その二人の背後には走り去る三人の姿。

アルガリドは直ぐに察した。

「お前ら二人だけ来たってことは、お前ら近距離型の戦闘タイプか。そんで、逃げた三人は後方支援か遠距離タイプ、それとも罠でも張ってるのか?」

「さあね。理屈はどうでもいいだろ。とりあえず殴らせろや!!」

「さっきの一発が効いたらしいな」

アルガリドはゲラゲラと笑った。

ガブリエルは先制攻撃を試みる。

ガブリエルの拳は簡単に片手で受け止められるが、二手三手と攻撃をやめない。

(止められるのは承知。俺は毎日クリファ先生と体術の特訓してんだ! 経験してきている!)

「ほらほら頑張れ。俺に届くかな」

ガブリエルの連続攻撃を受け流すアルガリドの背後から輝く刃が襲い掛かる。

「おおりゃあ!!!」

アルガリドは簡単に横に動いて避けたが刃はアルガリドを追う。

殴打と剣の連続攻撃。

それに対して、アルガリドは子どもと遊んでいる感覚で対応しているに過ぎなかった。

しかし、その余裕が燃える刃に隙を与えた。

「ここだぁ!!」

アネッテはガブリエルの拳を振り払った左腕に好機を見出した。

素早くそして力強く炎を纏った剣を振り下ろした。

燃え滾る刃はアルガリドの左腕へ。

「このまま切り落とす!!」

その時だった。

剣を振る下ろすことに集中していたアネッテの左頬にアルガリドの拳がねじ込まれたのは。

アネッテはそのまま飛んでいき、木に叩きつけられる。

「アネッテ!!」






(女の方は剣裁きが騎士のようだ。男もかなり素早い。思ったよりやるねぇ。だが、それもガキにしてはだ)

ガブリエルはアネッテを支えて起き上がらせる。

アルガリドは言う。

「俺は毎日同時に五十人の兵士を相手に鍛錬している。これぐらいじゃあ、数的優位とは言えないぜ」

アネッテはガブリエルの耳元に話しかける。

「この人に刃が通らない」

「どういうことだ」

「わからないけれど。さっき確実に左腕に刃が当たったと思ったんだけど、傷一つつけられなかった」

「体が硬いってこと?」

「ううん。硬いとは違う。何かに守られているような」

「守られている? そうなるとバリアとかか」

「そういう類のものだと思う」

「ならなんとかして剥がそう」

密談する二人にアルガリドは言う。

「作戦会議は終わったか? 今度はこっちから行くぞ!」

アルガリドは二人に殴りかかる。

ガブリエルが対応する。

「なんだ、またお前が引きつけて女が切りつけるってか。作戦はどうした!!」

背後から振り下ろされた刃に今度は堂々と手で受けるアルガリド。

(炎の剣を素手で受け止められた!?)

「もうちょい過激に遊ぼうぜ!!」

アルガリドは胸ポケットからカードを一枚取り出し言う。

「ネロセルぺス」

するとカードから水の蛇が飛び出して、アネッテの持つ剣から炎を消していった。

「そんな!!」

ショックを受けるアネッテを追い込むようにアルガリドの拳が向けられる。

それを見たガブリエルは瞬時にアネッテとアルガリドの間に入って、両手でアルガリドの拳を受け止めた。

「くっう!!」

アネッテとガブリエルは衝撃で後退したが、アネッテはショックから立ち直る。

「ごめん。ガブリエル」

「問題ない」

「少しだけ時間を貰えないかな」

「ん?」

「もっと火力を高めたいんだ。水の魔法に消されないような。そのためには集中する時間が必要なの」

「アネッテの本気か。わかった! 時間稼ぐぜ!」

「ありがとう!!」

そう言うとアネッテは茂みに入って姿を消した。

「どうした? 自信喪失したか?」

「アネッテはそんな弱いやつじゃない」

「じゃあ、しばらくはサシだな」

「本気でいく!!」






ガブリエルはアルガリドへ向かって走る。

「お前の体術じゃあ、俺には触れられないよ」

ガブリエルはアルガリドへの連続殴打を始めた。

顔面や腹部を狙いつつ、偶に足技を絡めながらの攻撃が続くが、そのどれもが颯爽と避けられてしまう。

「そんなもんかぁ!!」

「しょうがねぇ。まだ溜まってないけど」

「あん?」

ガブリエルの言葉にアルガリドは目の前の男が魔法使いだったということを思い出す。

「まさか!」

ガブリエルのこれまでで一番気迫のこもった拳がアルガリドの顔面に迫る。

「ちっ!!」

アルガリドはガブリエルの拳を左手で受ける。

当然ダメージは入らない。

だが、アルガリドは直ぐに身に迫る変化に気付いた。

受け止めたはずのガブリエルの拳がまたも自分の顔面に向かって飛んできている。

この時も未だ、ガブリエルの右手はアルガリドの左手に収まっている。

なのにも関わらず、ガブリエルが解き放った右手の拳が自分の顔面の目の前にきているのだ。

アルガリドは寸前でそのもう一つの拳を避けた。

(なんだ!?)

自分の身に起きたことを理解しようと動きが止まるアルガリド。

その隙をガブリエルは見逃さなかった。

ガブリエルはすぐさまアルガリドへと踏み出した。

ガブリエルの拳は咄嗟に反応されて避けられてしまう。

しかし、先ほど同様もう一つの拳がアルガリドの腹部に当たる。

更にすかさずガブリエルは左足で蹴りを腰にいれた。

「やっとはいった」

言葉とは裏腹にガブリエルは違和感を覚えた。

(やっぱ。バリアみたいなもん纏っているな。それにしてもどっかで触ったことある感覚だったな・・・)

じっとアルガリドを見つめるガブリエル。

そして、バリアの感覚が身近にあったものと一致する。

(そうか!! 魔力だ!! あいつは魔力を体に纏っているんだ。魔力を攻撃との間に挟むことでダメージを軽減していたんだ・・・しかし、あの魔力壁を剥がすには大きなダメージを与える必要があるな)

アルガリドは言う。

「お前の魔法じゃあ、俺にダメージは与えられない。圧倒的に火力不足だ。魔法の詳細もあと数回見れば、解明できる」

(知っているよ。でも今回はこれを引いたんだ。これで戦う)

すると、その瞬間アネッテの声が二人の耳に飛び込む。

眩しいほどに燃え滾る刃を連れて。

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