魔法開発
レンダとサレンはクリファとガブリエルから離れて森林スペース内を歩いていた。
「レンダぁ。何を探してんのぉ?」
「サレンなら見当がつくはずだよ」
「えー。何かなぁ。アタシらの愛?」
「違うよ」
「即答!? もっと言い方あるくるくるくない?」
「答えは毒物だよ」
「ああ・・・」
レンダの答えにサレンはあることを察した。
「また、使うの?」
「うん。これが手っ取り早いでしょ。人を殺すなら」
「そうかぁ・・・」
「でも問題はどうやって相手に毒を盛るかだよなぁ」
「えっ。毒のあてはあるの?」
「うん。この前のオーク事件の時にまやかしの森にスイセンが咲いているのを見たんだ。この森林スペースにもあるといいんだけど」
「スイセンの毒を抽出して使うってこと?」
「そうだよ。もっと他に毒を持つ植物や動物がいないか探さなきゃな」
「へぇ。それならレンダにはぴったりかもね」
「何故だい?」
「さっきクリファ先生が言っていたの。レンダの引力は大きな範囲を捉えられないけれど、鋭いって」
「僕の引力が鋭い?」
「うん。例えば的に向かって引力を発した時に、真ん中の部分だけくり抜いて引っ張ることができる。そんな感じの引力だって」
「なるほど。局所的な引力操作か。確かに毒の抽出に使えるかもしれない。教えてくれてありがとう」
「ふふ。役に立ってよかった」
そう言って二人が歩いているとレンダは急に立ち止まり目を輝かせた。
「どうしたのレンダ?」
「ほら見て!」
レンダが指さす方を見ると、そこには開けた場所にスイセンの花が生い茂っていた。
「うわー。スイセンじゃーん。やったね!」
「うん。これで最低限は研究ができる」
レンダとサレンは開けた場所に入って行き、レンダはスイセンの花を摘み始めた。
「スイセンに含まれるリコリンという毒を引力で抽出する。十グラムで致死量と言われているからそれだけ集めて一つにまとめる」
「それで問題はどうやって相手に毒を送るかだよね」
「うん。僕は体術得意じゃないから、何か策を講じる必要がある」
「確かに、レンダがガブリエルみたいに戦っているところ想像できない」
「うん。僕も」
レンダはスイセンの採集に集中しているからか表情に力が入っている。
レンダは言う。
「僕が毒を使うと聞いて、サレンは思うところがあったかもしれないね。でも、小さい時ずっと父をどうやって殺すかを考えていたから。母や僕に暴力を振っていて、体術じゃかなわない。だから毒を盛って殺そうと思っていた。今でも自然と考えちゃうんだ。どうやって人に毒をくらわすか、どうやって人を殺すか」
サレンはぐっと気持ちをこらえるように言う。
「うん。そうだね。わかっているよ」
「今回は兵士として人を殺す」
「でもそれは戦争を止めるためでしょ」
「そうだよ。平和にするんだ。この国を」
「なら、そのためなら再び毒を使うことになっても今回は応援できるよ」
「ありがとう」
レンダのうかない表情にサレンは不安になる。
「どうしたの?」
「いや・・・僕はまた理由をつけて人を殺そうとしているんだ」
「だって、しょうがない。そうしなきゃ」
「そうだね。しょうがない。そうやって僕は父さんを」