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THE ORION  作者: 黒羽感類
Season One 学院編
33/72

マナと魔法

森林フィールドに移ったオリオン以外の四人にクリファは、早速引力操作について話を始めた。

「引力操作の基礎『四原引』については座学では習いましたね。それをまず実践してもらいます」

レンダが言う。

「確か『引っ張る』『留保』『反発』『拡張』ですよね」

「そうです。アナタ達にはマナを引っ張ってもらいます。その後、マナをその場に留める『留保』とマナを反対方向に動かす『反発』を取得してもらいます。重要なのは、どの属性を選ぶかではなく、引力の基本操作を身につけることです。闇や光属性は後から覚えても応用が利きます。今は基礎属性の火水植物で魔法の輪郭を掴んでください。先程も言いましたが、ほとんどの魔法使いは、マナを引っ張ってくることをメインに引力を使います。それはこれらの基礎魔法を使って開発したオリジナルの魔法を使用するためです」

(・・・火)

「まずは属性の授業で感覚を掴んだ植物のマナを引っ張るところから始めましょう」






「よーし! よろうぜ!」

「植物のマナは植物から発生する」

レンダはそう言って森林スペースに無数に生える木のうちの一本に両手をかざした。

すると、緑色に光る小さな球体がレンダの両手を包み込んでいく。

「うわー。すげーなレンダ!」

「う、うん。まさかこんなうまくいくとは」

クリファは言う。

「集まっているマナを視認できるということは、それだけ多くのマナを集められている証拠です」

「やるじゃん! レンダ! アタシもたくさん集めるっしょ!」

「これから四原引。その基礎を徹底的に叩き込みます。毎日、四原引の基礎練習をし、その後オリジナル魔法のプランを練ってもらいます」



        ◇◇◇



「基礎練きっちぃー」

ガブリエルが地面に寝転んでそう言った。

「ふう、私なんか手に力が入っちゃって、筋肉痛になるかも」

「でも、これを続けていたら確実に魔法を扱えるようになると実感できる」

レンダのその言葉にサレンはドキッとする。

(私だけ植物のマナ全然集まらなかったな)






雑談を始めた四人にクリファは言う。

「さて、今日の基礎練習は終わりです。オリジナル魔法の開発も並行して行っっていきます。それぞれ、魔法のプランを練り始めてください」

ガブリエル、レンダ、サレンがそれぞれ森林スペース内の森の中に入って行こうとする中、クリファはアネッテの名を呼んだ。

「アナタは居残りが必要です」

(うぐっ。やっぱり私だけ全然マナ集まってなかったもんなぁ)

「マナを集めることに苦労していますね」

「・・・はい」

「自分の中で何かひっかかっている部分はありますか?」

「・・・いえ。何も」

「そうですか。それではワンツーマンで見ますので始めてください」

アネッテは目の前に立つ木に向かって両手をかざした。

アネッテは力み両腕をブルブルと震わし、目をぎゅっと目を瞑った。

しかし、マナが手元に集まっている感覚は皆無だった。

「アネッテ・ストーリ」

そのクリファの呼びかけにアネッテは直ぐには反応できなかった。

また失敗した。後ろめたい気持ちで溢れていたからだ。

「アネッテ・ストーリ。目をあけなさい」

アネッテはようやく目をあける。

「あ、あの・・・」

「アネッテ。一つ質問よろしいですか」

「えっ!? あ、はい」

「あなたのその両手にあるマメはなんですか?」

「マメ?」

アネッテは自分の両の手のひらを見る。

そこには複数のマメがあった。

アネッテは応える。

「これは剣術の修行でできたマメです。私は父からよく剣術を習っていて、今でも毎日素振りをするのが日課なんです」

「なるほど。何故魔法使いを志しているにも関わらず、毎日剣術の鍛錬を続けているのですか?」

「そ。それは・・・」

「いえ。これは単なる興味です。叱っているのではありません」

クリファのその言葉にアネッテは考えていたことを話した。

「私、剣術を生かした魔法を使えるようになりたいんです。オリジナル魔法も剣と組み合わせたものにしようと考えています」

「そうですか。それなら、もう一つ疑問があります」

「なんでしょう」

「剣を使った魔法を使いたいのに何故、剣を持たないのです?」

「えっ!?」

「剣を握るのなら、握りながらマナを集めなければなりません。その練習はしているのですか?」

「していません。でも剣を握ってマナを集める魔法使いなどいるのですか?」

「もちろん。それに異国では杖を使って魔法を使うそうですよ。モノを通して魔法を使うのは何も珍しいことではないと思います」

「そうだったんですか」

「引力は手のひらからしか出せないわけではありません」

アネッテはこれまでの考えを覆すクリファの言葉に心の奥底からこみ上げるものがあった。

「剣を握っていいんだ」

「はい」

「先生! 私、水のマナを集めたいです!」

「基礎三属性ならすぐに集められるようになります」



       ◇◇◇



アネッテとクリファは森林スペースの川が流れている場所にやって来た。

アネッテの手には故郷から持ってきた剣が握られていた。

「先生。ここで水のマナを集めます」

「やってみなさい」

アネッテは目を瞑り、剣を構えた。

(こっちの方が集中できる)

アネッテは属性の演習でのことを思い出す。

(あの時、手を握っていた相手に引力を送っていた。それを再現すればいいだ)

剣に引力を通す。

引力が手元から剣の刃先にたどり着いたのを感じた。

(今までにない感覚。引力が身体を回っている)

アネッテは、川の水が流れる音に耳を澄ました。

水の温度や質感、マナのイメージ。

それらを解き放つ。

(水のマナ!! 来て!!)

瞬間、アネッテは身体の周りを強力な風が吹き荒れる感覚を覚えた。



クリファは言う。

「集まったわ。








     火のマナが」








その言葉にパッと目をあける。

アネッテの目には、燃え滾る炎が刃を包み込んでいる姿が写っていた。

「なんで・・・よりによって・・・」

クリファは言う。

「火のマナの方が集めやすいのならば、火のマナに特化するのもよろしいでしょう。人によって集めやすいマナはあります」

呆然とするアネッテを横目で見るクリファ。

(それを選ぶかはアナタ次第ですが)




アネッテは思い出していた。

自分の故郷である村が火の海になっている光景を。

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